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判例(共同相続人の一人が、被相続人の死亡により死亡保険金を受け取っていたが、特別受益に準じた持ち戻しを否定された事案。)

2024/03/18 更新

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判例

共同相続人の一人が、被相続人の死亡により死亡保険金を受け取っていた。

(生命保険以外の)遺産が459万円で、がん保険で2100万円の支払いを被相続人の妻が受け取った。

保険料は月額1万4000円であり、がん保険は妻の生活費を支えるためのものであることを考慮して、特別受益に準じた持ち戻しをしない、と判断された

(令和4年2月25日広島高裁決定)

参考

判例タイムズ1504号115頁

特別受益の持戻し

共同相続人の一人が生前に、贈与を受けている場合に、特別受益として持ち戻すことになります。つまり、贈与された財産の価格を相続財産に加算し、各共同相続人の相続分を確定します(一応の相続分)。

特別受益を受けた相続人は、一応の相続分から贈与額を控除して、その残額が具体的な相続分となります(民法903条1項)。

特別受益の持ち戻し

(1)例えば、被相続人の生前の財産が100万円であったとします。

 そのうち50万円を相続人の一人に贈与しました。そうすると、被相続人の死亡時の財産(つまり、相続財産)は50万円です。

 相続財産の計算上は、贈与分を相続財産に加えて、100万円が相続財産であると計算するのが公平というのが、特別受益の持ち戻しです。

(2)共同相続人の一人が、被相続人の死亡により生命保険を受け取った場合に、被相続人から相続財産の贈与を受けた場合と同じく考えるべきか、が問題となります。

共同相続人の一人が、被相続人の死亡により死亡保険金を受け取っていた場合

最判は、「共同相続人の一人が、被相続人の死亡により死亡保険金を受け取っていた場合、著しい不公平があるという特段の事情がある場合に限って、特別受益に準じて持ち戻しを行う(被相続人から相続財産の贈与を受けた場合と同じく考える)。」と判断しました(最判平成16年10月29日民集58巻7号1979頁、判タ1173号199頁)。

保険金額が遺産総額の3分の1を超える事案においては特段の事情を肯定する方向で検討すべき、という考え方もあります。

参考

判例タイムズ1504号116頁

死亡保険金の受取人が、被保険者の配偶者や、病気等により独立した生活を営むことが困難な子供である場合には、被相続人の死亡後の生活費あてることを予定されているとして、特段の事情を否定すべき、という考え方もあります。

参考

山城司「Q&A 遺産分割事件の手引き」256頁

判例タイムズ1504号115頁以下では、共同相続人の一人が、被相続人の死亡により死亡保険金を受け取っていた場合の取り扱いについて簡単に説明されています。

参考

判例タイムズ1504号115頁以下

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