判例(別居期間は4年6ヶ月を超え、婚姻関係は破綻しているが、その原因は、一方的に別居し、かつ、婚姻費用を不払いにしていることにあるとして、離婚の請求を権利濫用にあたり認められないとした。)
2025/06/28 更新
このページを印刷離婚原因
(1)離婚が認められるのは、①相手方との間で離婚の合意をしたときや、裁判所が民法770条の離婚原因があると判断したときのどちらかでです。
(2)民法770条1項5合は、「婚姻関係の破綻」を離婚原因として定めています。
(3)婚姻関係の破綻に関しては、一定期間の別居の事実があれば、これが認められる傾向にあります。
(4)東京家庭裁判所代6部において令和5年1月から令和6年3月までの間に言い渡された離婚訴訟の判決について、別居期間が2年半を超えた事案で婚姻関係の破綻が認められなかったものはなかった、ともいわれます(判例タイムズ1532号246頁)。
(5)これ対して、別居中の夫婦の一方が、婚姻費用の支払いを停止して相手方を経済的に追い詰めたり、相手方の居住するマンションを売却して生活の場を奪う等の事情があれば、その一方は有責配偶者となり、同人の離婚請求は認められない(判例タイムズ1532号246頁)。
判例
事案
(1)平成18年に、XとYは結婚し、子どもが二人生まれた。
(2)平成29年、Xは、別のマンションを賃貸して別居を開始した。
(3)平成30年、Xは、Yに対し離婚調停を申し立てたが、不調となった。
(4)平成31年(令和1年)、Xは婚姻費用の支払いを停止した。その後、Xは婚姻費用を支払っていない。
(5)令和1年、Xは、Yに対し、Yら(Yと子ども)が住んでいるマンションの賃料を請求する訴訟を提起した
同判決は、令和3年に第一審判決が、令和4年に控訴審判決があり、いすれも、Xの請求は棄却された。
(6)令和1年、YはXに対し婚姻費用の支払いを求める調停を申し立てた。
令和3年、東京家裁は、Yに対し婚姻費用の支払いを命じる審判を出し、Xは即時抗告したが、高裁はこれを棄却すし、同審判が確定した。(もっとも、、Xは婚姻費用を支払っていない。)
(7)Xは、Yに対し離婚訴訟を提起した。
判例
(1)別居期間は4年6ヶ月を超えおり、婚姻関係は破綻している。
(2)しかし、その原因は、Xが一方的に別居し、かつ、婚姻費用を不払いにしていることにある。
Xは、有責配偶者(夫婦関係の破綻の主な責任がある者)にあたる。
Xの離婚の請求を権利濫用にあたり認められない、とした。
令和4年4月29日東京地裁
判例タイムズ1532号245頁