判例(相続放棄をすべき相続人にあたるか見解が分かれる場合にも、相続放棄の申述ができる。)
2025/06/28 更新
このページを印刷相続放棄
被相続人(例えば、父が亡くなったとしたら、その父)に借金等がある場合には、プラスの財産もマイナスの財産も相続したくないとして、届け出る手続が相続放棄の手続きです。
相続放棄の期限
相続放棄の手続きができるのは、被相続人(例えば、父が亡くなったとしたら、その父)が亡くなったことを知った時から3か月以内が原則です。この期間を熟慮期間といいます。
相続放棄の申述
(1)相続放棄は、家庭裁判所に書類を出すことによって行います。
(2)家庭裁判所は、形式的な不備がないかをチェックして、不備がなければ、相続放棄を受理したとの通知書を出します。これが、「相続放棄申述受理通知書」です。
(3)相続放棄の申述は、これが受理されたとしても、相続放棄の実体法上の効力があるわけではありません。これを争う者は訴訟で争うことが可能です。
(4)逆に、相続放棄が却下されると、民法938条の要件を欠くこともあり、相続放棄を主張できなくなります。
(5)したがって、相続放棄の申述は、これを却下すべきことが明白でない限り、受理される。
東京高決令和6年7月18日
(1)審判にて、相続人にあたらないとして、相続放棄の申述が却下された。
(2)東京高裁は、申述人が相続人にあたらうかどうかは見解が分かるところであるから、却下すべきことが明白ではないとして、相続放棄の申述を受理した。
(3)原審判の判断であれば、相続人ではない、ということになる。高裁では、相続人が誰かを確定させずに、相続放棄の申述が却下すべきであることが明白ではない、という理由で、相続放棄の申述を受理すべきと判断しました。
東京高決令和6年7月18日
判例タイムズ1532号75頁