経営者保証ガイドラインと、対象債権者との交渉
2024/05/30 更新
このページを印刷経営者保証ガイドライン
(1)法人を破産させた場合、今までは、経営者も一緒に破産する必要がありました。
(2)経営者保証ガイダラインを利用した活用した、経営者の債務整理の方法があります。
(3)同手続は、金融機関に対して、個人破産と同基準で任意で支払うことにより債務免除をしてもらう手続きです。
対象債権者
(1)経営者保証ガイドラインの適用があるのは、原則として、 銀行融資の個人保証、リースの個人保証のみです。
(2)例えば、①テナントの賃料の個人保証と、②個人的なキャッシングが存在したとします。
①の債権者は金融機関ではありません。また、②個人的なキャッシングも、会社の債務の保証ではなく、対象債権ではありません。
(3)ここでは、①については、対象債権者に組み込み、②については、少額であったために、今後、分割払いしていく方針で交渉していくとします。
一時停止等の要請
(1)まずは、経営者保証ガイドラインの定まった書式で、一時停止等の要請の書類を、金融機関等の対象債権者に対し送ります。
(2)今回は、①についても経営者ガイドラインの対象債権者として取り扱うために、同時に、一時停止等の要請を送ることになります。
(3)一時停止等の要請書を送ったその日を基準にして、対象債権者に対して、個人破産と同基準で任意で支払うと交渉することになります。
対象債権者との交渉
(1)「経営者保証に関するガイドライン(GL)に基づく保証債務整理(一体再生型) GL要件該当性及び弁済計画案等の御説明」等の書式と、ともに、経営者の財産や債務の資料のコピーを対象債権者に送ります。
(2)追加で、金融機関等の対象債権者から質問があるので、資料の送付と回答を繰り返します。(ある金融機関から質問が来た場合には、その質問の回答について他の金融機関等にも送って状況を共有すべきです。)
(3)交渉の途中で、①テナントの賃料の個人保証については、賃貸人との関係で、経営者ガイドラインの対象債権者と同一基準で支払うことの合意が取れました。
ここで、他の対象債権者との間で了解を取り付けたうえで、さきに、①についてその余の債務を免除してもらうことを前提に、経営者ガイドラインの対象債権者と同一基準でその額をのみ支払うことしました。
ここで、経営者ガイドラインの対象債権者と同一基準で支払うのであれば、偏頗弁済となることはありません。しかし、対象債権者との事前の同意が必要です。
(4)金融機関等の対象債権者から支払額の提案(調停案)について了承を得れば、特定調停の申立を行います。
(5)②個人的なキャッシングについては、特定調停の成立後に、全額について24ヶ月の分割払いで支払うことになりました。
なお、満額支払う支払う場合には、他の債権者に比べて優遇することになります。少なくとも、対象債権者(金融機関)にとっても、個人破産と同基準以上での金額で支払を受けれることを約束する必要があります。
経営者保証ガイドラインでは、金融機関の納得が必要です。
(1)経営者保証ガイドラインを利用するには、金融機関等の対象債権者からの質問や、同人が出す条件を満たす必要があります。
(2)仮に、金融機関等の対象債権者が債務免除をするための条件が不当な場合であっても、同ガイドラインは、金融機関等の納得により債務を免除してもらう手続であり、是正する方法はありません。この場合、経営者保証ガイドラインの手続を諦めて破産するのか、それとも、金融機関等の対象債権者が出してきた条件を飲むしかないのが実情です。
(3)金融機関等の対象債権者との交渉後、同人の了承が得られない場合、1年を経過してから破産を選択することがありえます。その場合には、本来であれば破産手続を開始できた時点から1年間、個人の努力で取得した財産も配当の対象となるリスクがあります。