芸能人養成スクールの入学時諸経費と、消費者契約法9条1号
2024/09/04 更新
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芸能人養成スクールは、学則で「退学又は除名処分の際、既に納付している入学時諸費用については返還しない。」と定めていた。
適格消費者団体であるXは、同学則の効力を争って訴訟しました。
判決
控訴審(令和5年4月18日)は、7万円を超える入学時諸経費を返還しなければならない、と判断をしました。
解説:消費者契約法9条1号
(1)消費者契約法9条1号は、消費契約の解除に伴う損害賠償の予定がある場合に、そこに定められた額が「平均的な損害」の額を超える場合に、その超過部分が無効になると定めています。
(2)平均的な損害は、業界の水準ではなく、当該事業者において、契約の解除によって生じる損害の合理的な平均値です。
(3)平均的な損害は解除との間に相当因果関係が必要となります。
消費者契約法9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効等)
1項
次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
芸能人養成スクールの主張(学生の地位の対価)
(1)芸能人養成スクールは、入学時諸費用は、入学の対価(学生としての地位を取得する対価)であると主張しました。
(2)控訴審は、入学時諸費用の金額があまりにも高額であることその他を理由として、入学の対価(学生としての地位を取得する対価)であることを否定しました。
消費者契約法9条1項1号
(1)判決は(第一審も控訴審も)、芸能人養成スクールの入学時諸費用について、個別にその内容を検討したうえでは、「平均的な損害」を算定しました。
(2)第一審は、13万円を超える入学時諸経費を返還しなければならない、と判断をしました。
(3)控訴審は、7万円を超える入学時諸経費を返還しなければならない、と判断をしました。