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2025/12/29 更新

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保証債務履行請求権

 保証債務履行請求権の訴訟物は、元本、利息、遅延損害金分の請求を含むときも、訴訟物は一つです(民法447条1項)。

保証債務履行請求権の要件事実

(1)保証債務履行請求権の要件事実は以下のとおりです。

(2)保証契約は、書面等にしなけれは成立しません(民法446条2項、3項)。

①主債務の存在
②①の履行を保証する旨の保証契約
③②を、書面または電磁記録によってしたこと

判例

 主債務の発生原因たる契約が解除されても、保証はその既払代金の返還債務にも及ぶ。

民法446条 保証人の責任等
1項 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
2項 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
3項 保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

民法447条 保証債務の範囲
1項 保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。
2項 保証人は、その保証債務についてのみ、違約金又は損害賠償の額を約定することができる。

付従性

(1)保証人は、主たる債務者(例えば、お金を借りた本人)の代わりに支払い義務を負うものです。

(2)したがって、主たる債務者(例えば、お金を借りた本人)が支払を拒否する理由がある場合には、保証人も支払い義務を負いません。

(3)例えば、主たる債務者が同時履行の抗弁権を有していれば、これを行使できる(民法457条2項)。

(4)保証人は主たる債務者の消滅時効を援用できる。

(5)保証人は主たる債務者が反対債権を持っている場合に、その反対債権を理由にその分の履行を拒むことができる(民法457条)。

(6)保証人は主たる債務者が取消権、解除権を持っている場合に、これを理由にその分の履行を拒むことができる(民法457条)。

民法457条 主たる債務者について生じた事由の効力
1項 主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、保証人に対しても、その効力を生ずる。
2項 保証人は、主たる債務者が主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができる。
3項 主たる債務者が債権者に対して相殺権、取消権又は解除権を有するときは、これらの権利の行使によって主たる債務者がその債務を免れるべき限度において、保証人は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

保証債務の消滅時効

 保証人は、主たる債務の消滅時効とは別に、保証債務そのものの時効も主張できる。

参考
 岡口基一「要件事実マニュアル(第7版)第1巻 民法1」628頁以下

「催告の抗弁、検索の抗弁、分割の利益」と連帯保証

1 連帯保証

(1)連帯保証をすると、「催告の抗弁、検索の抗弁、分割の利益」が主張できません

(2)したがって、連帯保証とは、これらを行使しない保証と理解してもよいでしょう。


2 催告の抗弁

(1)保証(単純保証)の場合、債権者が保証人に保証債務の履行を請求してきたときに、「まずは、主たる債務者(例えば、お金を借りた本人)に催告をしてほしい。催告をしていないのであれば、保証人(私)に請求できない。」という権利があります。

本来的には、主たる債務者(例えば、お金を借りた本人)が返済するのが原則だからです。

(2)しかし、連帯保証の場合には、このようなことをいう権利はありません。

(3)なお、催告の抗弁については、債権者は主たる債務者(例えば、お金を借りた本人)に「お金を返せ。」と請求した事実があれば足り、主たる債務者(例えば、お金を借りた本人)に対する訴訟を提起しなければならないわけではないので、実効性のあるものではありません。

3 搜索の抗弁

(1)保証(単純保証)の場合、債権者が保証人の財産に強制執行をしてきたときに、「主たる債務者(例えば、お金を借りた本人)に催告をしてほしい。催告をしていないのであれば、保証人(私)に請求できない。」という権利があります。本来的には、主たる債務者(例えば、お金を借りた本人)が返済するのが原則だからです。

(2)しかし、連帯保証の場合には、このようなことをいう権利はありません。

(3)なお、搜索の抗弁についても、主たる債務者(例えば、お金を借りた本人)に十分なお金があることは少なく、実効性のあるものではありません。

4 分割の利益

(1)複数の保証人がいる場合を共同保証といいます。

 例えば、「100万円の借金が未払いであるとして、保証人が2人いる。」とします。保証(単純保証)の場合、「各保証人が全額を弁済する」旨の特約(保証連帯(民法465条1項))がない限り、保証債務の支払額は保証人の人数で割ることになります(単純保証では50万円しか負担する義務はありません。)。

(2)しかし、連帯保証の場合には、このようなことをいう権利はありません。

 例えば、「100万円の借金が未払いであるとして、保証人(単純保証人)と、連帯保証人の二人の保証人がいるとします。

 債権者は、保証人(単純保証人)に対しては、「各保証人が全額を弁済する」旨の特約(保証連帯)がない限り、(人数割りした)50万円しか請求できません。これに対して、債権者は、連帯保証人に対しては、100万円をそのまま請求できます。

(3)保証(単純保証)の場合、「各保証人が全額を弁済する」旨の特約(保証連帯(民法465条1項))がない限り、負担額を超えて弁済したしたときには、保証人(単純保証人)は、主たる債権者(お金を貸した人)に「不当利得としてその額を返せ。」と請求できます。

民法452条 催告の抗弁
 債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。

民法453条 検索の抗弁
 債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。

民法454条 連帯保証の場合の特則
 保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利を有しない。


民法456条 数人の保証人がある場合
 数人の保証人がある場合には、それらの保証人が各別の行為により債務を負担したときであっても、第427条の規定を適用する。

民法427条 分割債権及び分割債務
 数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。
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