Q 履行遅滞に基づく解除、履行遅滞に基づく損害賠償請求について教えて下さい。
2025/12/14 更新
このページを印刷履行遅滞
(1)履行遅滞とは債務不履行の一種です。
(2)債務の履行期限までに債務の履行がされたかったことが必要です。
(3)債務不履行責任であるから、自然災害が原因であるときなどは、債務者の責めに帰することができない事由が存在し、(履行遅滞に基づく)債務不履行は適用されない。
履行遅滞に基づく解除の要件事実
履行遅滞に基づく解除の要件事実は、以下のとおりです。
①(債務の発生原因である)契約の成立
②(債務の)期限の到来
③履行の提供
④催告と相当期間の経過
⑤解除の意思表示
②期限の到来
(1)期限の定めのある債権の場合、その期限の最終日の翌日から遅滞となる(民法412条1項)。
(2)期限の定めのない債権の場合、履行の請求をする通知等が届いた日の翌日から遅滞となる(民法412条3項)
(3)期限の定めのない金貨資金返還請求権は、返還請求時から相当期間経過後に遅滞となる(民法591条1項)。
③履行の提供
(1)双務契約においては、同時履行の抗弁権の存在効により、履行の提供をしなければ、相手方の債務は履行期を経過しても履行遅滞とはならない。
(2)したがって、履行の提供が必要です。
(3)もっとも、相手方の履行拒絶の意思が明確な場合には、履行の提供は不要です(民法542条2項2号。
④催告と相当期間の経過
(1)履行遅滞に基づく解除をするには催告が必要です(民法541条)。
(2)相当期間を定めない催告であっても、催告後相当期間が経過すれば、解除できる(判例)。
(3)無催告解除の合意も有効であり、契約書に「無催告で解除できる。」との文言があれば、無催告で解除できる。
⑤解除の意思表示
(1)「〇〇日までに履行しなけば解除する。」旨の通知は、催告と解除の意思表示を同時に行うものであり、停止条件付解除である。
(2)したがって、同解除の意思表示をしておけば、追加の解除の意思表示の通知を別に送る必要はない。
履行遅滞に基づく損害賠償請求の要件事実
履行遅滞に基づく損害賠償請求の要件事実は、以下のとおりです。
①(債務の発生原因である)契約の成立
②(債務の)期限の到来
③履行の提供
④損害の発生と額
⑤債務不履行(履行遅滞)と損害の因果関係
| 民法412条 履行期と履行遅滞 1項 債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。 2項 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。 3項 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。 民法415条 債務不履行による損害賠償 1項 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。 2項 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。 一 債務の履行が不能であるとき。 二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。 三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。 民法541条 催告による解除 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。 民法542条 催告によらない解除 1項 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。 一 債務の全部の履行が不能であるとき。 二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。 三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。 四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。 五 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。 2項 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。 一 債務の一部の履行が不能であるとき。 二 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。 |






