Q 詐害行為取消権について教えて下さい。
2025/12/21 更新
このページを印刷詐害行為取消権
(1)債権者は、自分の債権を保全するために、債務者が債権者を害する行為をしたときに、その行為を取り消すことができます(民法424条1項)。これが詐害行為取消権です。
(2)詐害行為取消権は訴える(訴訟手続をする)必要があります(民法424条1項)。
(3)詐害行為取消権の被告は、受験者(又は)転得者であり、債務者ではない(民法424条の7第1項)
詐害行為取消権訴訟
(1)民法上、詐害行為取消権訴訟を提起するには、以下の要件を満たすことが必要です。(民法423条)。
①被保全債権の存在
②①の債権の発生後、詐害行為となる法律行為がされたこと
③②の行為により債権者が害されること
④債務者が③について悪意であること
⑤不動産について所有権等の登記もしくは、動産の引き渡し
(2)過大な代物弁済は、過大な部分のみが詐害行為となります(民法424条の4)。
(4)詐害行為取消権は、詐害行為を知った時から2年、詐害行為から10年以内にこうしなければならない(民法426条)。
| 民法424条 詐害行為取消請求 1項 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。 2項 前項の規定は、財産権を目的としない行為については、適用しない。 3項 債権者は、その債権が第一項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、同項の規定による請求(以下「詐害行為取消請求」という。)をすることができる。 4項 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、詐害行為取消請求をすることができない。 民法424条の4 過大な代物弁済等の特則 債務者がした債務の消滅に関する行為であって、受益者の受けた給付の価額がその行為によって消滅した債務の額より過大であるものについて、第424条に規定する要件に該当するときは、債権者は、前条第一項の規定にかかわらず、その消滅した債務の額に相当する部分以外の部分については、詐害行為取消請求をすることができる。 民法425条の5 転得者に対する詐害行為取消請求 債権者は、受益者に対して詐害行為取消請求をすることができる場合において、受益者に移転した財産を転得した者があるときは、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める場合に限り、その転得者に対しても、詐害行為取消請求をすることができる。 一 その転得者が受益者から転得した者である場合 その転得者が、転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき。 二 その転得者が他の転得者から転得した者である場合 その転得者及びその前に転得した全ての転得者が、それぞれの転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき。 民法426条 詐害行為取消権の期間の制限 詐害行為取消請求に係る訴えは、債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知った時から二年を経過したときは、提起することができない。行為の時から十年を経過したときも、同様とする |
相当価格の処分行為と詐害行為取消権(民法424条の2)
①被保全債権の存在
②①の債権の発生後、詐害行為となる法律行為がされたこと
③債務者が換金した現金を隠匿等の処分をするおそれが現にあること
④債務者が③の意思を有すること
⑤受益者も④債権者が③の意思を有することを知っていたこと
⑥不動産について所有権等の登記もしくは、動産の引き渡し
| 民法424条の2 相当の対価を得てした財産の処分行為の特則 債務者が、その有する財産を処分する行為をした場合において、受益者から相当の対価を取得しているときは、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。 一 その行為が、不動産の金銭への換価その他の当該処分による財産の種類の変更により、債務者において隠匿、無償の供与その他の債権者を害することとなる処分(以下この条において「隠匿等の処分」という。)をするおそれを現に生じさせるものであること。 二 債務者が、その行為の当時、対価として取得した金銭その他の財産について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと。 三 受益者が、その行為の当時、債務者が隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと。 |
偏波行為と詐害行為取消権(民法424条の3)
①被保全債権の存在
②①の債権の発生後、弁済または、担保の提供をしたこと
③②の時点で、債務者が支払不能であったこと
④債務者と受益者に通謀して、他の債権者を害する意図があること
| 民法424条の3 特定の債権者に対する担保の供与等の特則 1項 債務者がした既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為について、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、詐害行為取消請求をすることができる。 一 その行為が、債務者が支払不能(債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう。次項第一号において同じ。)の時に行われたものであること。 二 その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。 2項 前項に規定する行為が、債務者の義務に属せず、又はその時期が債務者の義務に属しないものである場合において、次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、債権者は、同項の規定にかかわらず、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。 一 その行為が、債務者が支払不能になる前三十日以内に行われたものであること。 二 その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。 |
詐害行為取消訴訟の効果
1 登記請求権
(1)債権者は第三債務者に対し、債務者名義への所有権移転登記手続を求めることが出来ます。
(2)債権者は、自己名義(債権者名義)とする登記を求めることはできません。
2 物の引き渡し
(1)債権者は三債務者に対し、自己(債権者)への引き渡しを求めることができます(民法424条の9)。
3 金銭請求
(1)債権者は三債務者に対し、自己(債権者)に支払えと請求できます(民法424条の9)。
(2)債権者は、債務者に対し同額について返還請求権を負うが、被保全債権と相殺して事実上優先弁済を受けることができます。
参考
岡口基一「要件事実マニュアル(第7版)第1巻 民法1」597頁以下






