著作権侵害と損害の算定(著作権法114条)
2025/03/03 更新
このページを印刷著作権侵害侵害
(1)著作権侵害を理由とする損害賠償請求権は、民法709条を根拠条文とします。
(2)著作権侵害を理由とする損害賠償請求権には、特許権の侵害、侵害者の故意過失、損害、因果関係が必要になります。
著作権侵害侵害と損害の算定(著作権法114条)
(1)著作権法114条は、損害額の立証を容易にするための規定です。したがって、著作権法114条の規定を超える損害を別に立証できた場合にはその額の賠償請求が可能です。
(2)もっとも、損害の賠償請求には相当因果関係の立証も必要であるから、多くの事例には、著作権法114条の定めにしたがって、請求するのが事案が多いです。
著作権法114条1項
(1)著作権法114条1項は、販売数減少による逸失利益の賠償額の算定方法について定めます。
(2)同法同項は、「侵害者の譲渡数量」×「侵害行為がなければ特許権者等が販売することができた物の単位数当たりの利益」(ただし、著作権者の販売等の能力に応じた額を超えない限度とする。)と定めています。
著作権法114条2項
(1)著作権法114条2項は、侵害者の利益の額を損害額と推認します。
(2)同法同項は、「侵害者の譲渡数量」×「単位あたりの侵害品の利益」で損害額を推認します。
(3)侵害者が、侵害者が得た利益と、特許権者が被った損害との間に相当因果関係がないことを立証した場合には、著作権法114条2項の適用はありません。
例えば、著作権者が、自身の著作物の利用を第三者に許諾して、第三者からその許諾料(ロイヤリティ)を得ているにとどまる場合、第三者が著作物を侵害した商品を製造又は販売したとしても、当該商品の売上の減少という不利益を受けるわけではない。したがって、著作権者が、第三者に著作物の利用を許諾し、その許諾料(ロイヤリティ)を得ているにとどまる場合、著作権法114条2項の適用はない。この場合には、著作権法114条3項に基づいて損害額が算定されるべきである。
著作権法114条3項
(1)著作権法114条3項は、著作権の行使について受け取るべき金額額を損害額とします。
(2)同法同項は、「侵害者の譲渡数量」×「単位あたりの作権の行使について受け取るべき金額額」を損害額とします。
著作権法114条(損害の額の推定等) 1項 著作権者等が故意又は過失により自己の著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(以下この項において「侵害者」という。)に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、侵害者がその侵害の行為によつて作成された物(第一号において「侵害作成物」という。)を譲渡し、又はその侵害の行為を組成する公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。同号において「侵害組成公衆送信」という。)を行つたときは、次の各号に掲げる額の合計額を、著作権者等が受けた損害の額とすることができる。 一 譲渡等数量(侵害者が譲渡した侵害作成物及び侵害者が行つた侵害組成公衆送信を公衆が受信して作成した著作物又は実演等の複製物(以下この号において「侵害受信複製物」という。)の数量をいう。次号において同じ。)のうち販売等相応数量(当該著作権者等が当該侵害作成物又は当該侵害受信複製物を販売するとした場合にその販売のために必要な行為を行う能力に応じた数量をいう。同号において同じ。)を超えない部分(その全部又は一部に相当する数量を当該著作権者等が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量(同号において「特定数量」という。)を控除した数量)に、著作権者等がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額 二 譲渡等数量のうち販売等相応数量を超える数量又は特定数量がある場合(著作権者等が、その著作権、出版権又は著作隣接権の行使をし得たと認められない場合を除く。)におけるこれらの数量に応じた当該著作権、出版権又は著作隣接権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額 2項 著作権者、出版権者又は著作隣接権者が故意又は過失によりその著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、当該著作権者、出版権者又は著作隣接権者が受けた損害の額と推定する。 3項 著作権者、出版権者又は著作隣接権者は、故意又は過失によりその著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者に対し、その著作権、出版権又は著作隣接権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を自己が受けた損害の額として、その賠償を請求することができる。 4項 著作権者又は著作隣接権者は、前項の規定によりその著作権又は著作隣接権を侵害した者に対し損害の賠償を請求する場合において、その著作権又は著作隣接権が著作権等管理事業法第二条第一項に規定する管理委託契約に基づき著作権等管理事業者が管理するものであるときは、当該著作権等管理事業者が定める同法第13条第1項に規定する使用料規程のうちその侵害の行為に係る著作物等の利用の態様について適用されるべき規定により算出したその著作権又は著作隣接権に係る著作物等の使用料の額(当該額の算出方法が複数あるときは、当該複数の算出方法によりそれぞれ算出した額のうち最も高い額)をもつて、前項に規定する金銭の額とすることができる。 5項 裁判所は、第1項第1号及び第3項に規定する著作権、出版権又は著作隣接権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を認定するに当たつては、著作権者等が、自己の著作権、出版権又は著作隣接権の侵害があつたことを前提として当該著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者との間でこれらの権利の行使の対価について合意をするとしたならば、当該著作権者等が得ることとなるその対価を考慮することができる。 6項 第3項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者に故意又は重大な過失がなかつたときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる |