親や先祖から受け継ぐ財産には、預貯金や不動産といった一般的な遺産だけでなく、お墓や仏壇、位牌などの「祭祀財産(さいしざいさん)」も含まれます。
祭祀財産は通常の遺産相続とは異なる特別なルールで扱われており、相続税の非課税枠や承継者の決定方法について正しく理解しておくことが重要です。
- 🔴 通常の遺産分割の対象外で、特定の「祭祀承継者」が単独で受け継ぐ
- 🔴 原則として相続税の対象にならない(非課税)
- 🔴 承継者は被相続人の指定、慣習、家庭裁判所の調停・審判の順で決まる
祭祀財産(さいしざいさん)とは?
祭祀財産とは、祖先を祀る(まつる)ために使用される財産のことです。民法では以下の3つが「祭祀に関する権利(祭祀財産)」として定められています。
1 系譜(けいふ)
家系図、過去帳、先祖の記録など、血縁関係や家の歴史を示すもの。
2 祭具(さいぐ)
仏壇、位牌、神棚、十字架、仏像など、礼拝や祭祀に直接使用される道具類。
3 墳墓(ふんぼ)
お墓、墓石、墓地(墓地を使用する権利=永代使用権など)の総称。
通常の遺産との違い(相続における扱い)
祭祀財産は、原則として通常の遺産(預貯金や不動産など)の分割対象にはなりません。
日本の法律(民法第897条)では、祖先を祀るという目的や感情的な結びつきを重んじ、祭祀財産を分割せず特定の「祭祀承継者(さいししょうけいしゃ)」が単独で引き継ぐことになっています。
遺産分割協議の対象外
「長男がお墓を、次男が仏壇を」といった分け方ではなく、原則として1人がすべてを引き継ぎます。
相続放棄をしても引き継げる
借金が多いため「相続放棄」をした人であっても、祭祀承継者としてお墓や仏壇を引き継ぐことは可能です。
相続税が「非課税」
日常礼拝をしているお墓や仏壇には相続税がかかりません。これを活用した生前の節税対策もあります。
祭祀承継者はどう決めるの?
「長男が継ぐべき」という古いイメージがあるかもしれませんが、法律上は長男である必要はありません。配偶者や次男、長女、あるいは血縁関係のない友人・知人が承継者になることも可能です。
民法では、以下の順位で祭祀承継者を決めることになっています。
生前に遺言書などで「お墓は長男に任せる」と指定されていた場合、それに従います。口頭での指定でも有効ですが、言った言わないのトラブルを防ぐため遺言や書面に残すのが確実です。
被相続人の指定がない場合は、その地域の慣習や、古くからその家で守ってきたしきたりに従って決定します。
指定もなく、慣習も明らかでない場合や、誰が承継するかで親族間でもめごとになった場合は、家庭裁判所に申し立てを行い、調停または審判で決定してもらいます。裁判所は、故人との関係性や生活状況、管理能力などを総合的に考慮して誰がふさわしいかを判断します。
祭祀承継者の負担と注意点
祭祀承継者になると権利を得ると同時に、お墓の管理や法要の実施といった役割を担うことになります。
近年は「墓守の負担」や「管理費の支払いが辛い」といった問題から、祭祀承継者を誰がやるかでトラブルになるケースも増えています。
- 管理費の負担:霊園などの年間管理費を誰が払うか。原則として承継者が負担することになりますが、遺産分割の中で「管理費に充てるため、多めに遺産を配分する」といった取り決めをすることも可能です。
- 継承を拒否できるか?:被相続人に指定されたり、慣習で決まったりした場合、原則として辞退や放棄はできないとされています。(ただし義務感を持って祀るかどうかは当人の心次第とされ、法的に強制されるものではありません)
- 墓じまい:管理が難しい場合は「墓じまい」や「永代供養」への切り替えを行うことも承継者の権限で可能です。
生前におけるお墓・仏壇購入による「相続税対策」
祭祀財産は相続税が非課税になるため、「生きているうちにお墓や仏壇を購入しておくこと」が有効な相続税対策となります。
例えば、現金で300万円の墓石を買った場合、その300万円は課税対象の遺産から減り、購入した墓石には相続税がかからないため、結果として相続税を抑えることができます。
【注意】
ローンで生前にお墓を購入した場合、ローン残債は「相続財産から控除(債務控除)できない」というルールがあります。節税対策でお墓を買うなら、一括購入か完済しておく必要があります。
また、投資目的などで純金製の仏像を購入しても、日常的な礼拝用と認められなければ課税対象となる可能性があります。