生前贈与と相続税
(特別受益との違い)

KNOWLEDGE - REAL ESTATE TAX

「自分は親から何も貰っていないのに、兄は家を建てる時に1000万円援助してもらっていた。遺産分割で同じ額をもらうのは納得がいかない。」
このような「生前贈与」にまつわる不公平感は、相続トラブル(争族)の典型的な火種です。

さらに厄介なのが、「税金計算(相続税)」における生前贈与の扱いと、「遺産分割(民法・法務)」における生前贈与の扱いは、ルールが全く違うということです。ここではよくある勘違いを整理し、特別受益や遺留分トラブルへの対処法を解説します。

1. 「税務上の贈与加算」と「法務上の特別受益」の違い

多くの人が「生前贈与は3年前(法改正で7年前)までしか相続財産に足し戻されない」と誤解しています。
これは半分正解で、半分間違いです。「税金の計算」と「遺産分割での取り分計算」を分けて考える必要があります。

① 相続税の計算(税務)
生前贈与加算
② 遺産分割の計算(法務)
特別受益の持ち戻し
目的 国が「相続税逃れ」を防ぐため 相続人同士の「不公平」をなくすため
足し戻す【期間】 死亡前 3年(改正後は最大7年)以内の贈与のみ 原則「無期限」(昔の贈与もすべて対象)
※遺留分請求の場合は原則10年
対象となる【内容】 相続人に渡した全ての現金・財産(暦年贈与含む) 婚姻・養子縁組・独立のための「高額な援助」など限定的

つまり、「20年前に兄が親から貰った1000万円は、相続税の計算には含まれないが、遺産分割で兄弟間の取り分を計算する際には『特別受益』として足し戻して計算すべきである」というのが正解です。

2. 遺産分割における「特別受益」とは

特定の相続人が、被相続人(亡くなった方)から住宅購入資金、開業資金、あるいは高額な仕送りなど、あらかじめ「遺産の前渡し」とも言えるような経済的利益を受けていた場合、これを特別受益と呼びます。

遺産分割協議では、不公平を是正するために、この特別受益を一度「亡くなった時の財産」に足し戻し(これを「持ち戻し」と言います)、そこから各相続人の取り分を再計算します。

特別受益になるもの・ならないものの例

✅ 特別受益になり得るもの
  • マイホーム建設時の数百万円~数千万円の頭金援助
  • 一人だけしてもらった医大・音大への高額な学費
  • 開業資金や借金の肩代わり
❌ 特別受益になりにくいもの(扶養の範囲内)
  • お年玉、入学祝い、生活費の仕送り、結婚式のご祝儀(少額なもの)

3. 「持ち戻し免除の意思表示」という罠

被相続人が生前に「この1000万円は長男への援助だから、相続の時にわざわざ計算に入れなくていいよ」という意思表示をしていた場合(遺言書に書かれている等)、これを「持ち戻し免除の意思表示」と呼びます。

この場合、長男がもらった1000万円は特別受益として計算されません。しかし、これによって他の兄弟の取り分が「本来もらえる最低限の割合(遺留分)」まで侵害されてしまった場合は、長男に対して「遺留分侵害額請求」を行うことができます。(※2019年の法改正により、遺留分計算の対象となる生前贈与は原則として相続開始前10年間に限定されました。)

4. 弁護士による通帳調査と法的交渉

生前贈与の問題は、「兄は絶対たくさん現金をもらっていたはずだ」「いや、これは親戚への冠婚葬祭費だ」というように、言った言わないの水掛け論に陥りがちです。当事者同士で話し合っても感情がぶつかり合うだけで一向に解決しません。

弁護士にご依頼いただければ、以下の対応で状況を打破します。

  • 過去数年〜数十年にわたる銀行口座の取引履歴の法的照会(職権取得)による証拠集め
  • 過去の判例データと照らし合わせ、「その出金が裁判所で特別受益と認められるか」の現実的な判断
  • 生前贈与加算や名義預金など、税務署から指摘されるリスクも踏まえた上での、相手方が納得しやすい着地点(分割案)の提示と交渉

「他の相続人が財産を隠している気がする」「不公平な生前贈与に納得がいかない」という方は、ぜひ一度夕陽ヶ丘法律事務所にご相談ください。

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