離婚コラム

不貞行為(不倫)の慰謝料相場と増減要因|どのような事情があれば増額されるか

大阪弁護士会所属 弁護士 井上正人 監修

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、民法第763条(協議離婚)、第770条(裁判離婚)、第768条(財産分与)、2026年改正民法(共同親権・法定養育費)の規定および多数の離婚・親権・財産分与の実務実績に基づきわかりやすく解説しています。

Q 配偶者の不倫(不貞行為)の慰謝料相場はいくらですか?金額が上がったり下がったりする具体的な条件も知りたいです。
A 【法的判断基準と相場】不貞行為の慰謝料相場は、夫婦関係の破綻状況により異なります。近年の裁判実務研究(『判例タイムズ』調査等)において、離婚しない場合は50万〜100万円程度、別居に至った場合は100万〜150万円程度、離婚に至った場合は100万〜150万円程度(実務平均100万〜120万円前後)が中央値・最頻値となっています。婚姻期間が20年を超える、不倫相手の妊娠・出産などの重大事由が重なった場合の現実的上限として150万〜200万円前後になることはありますが、通常の事案で200万円を超える判決が出ることは極めて稀です。
【弁護士による交渉・解決メリット】適正な慰謝料を確実に獲得するためには、感情的な請求ではなく、裁判例に照らした正確な増額事由の立証が不可欠です。弁護士に依頼することで、不貞相手や配偶者との交渉を代理で行い、財産分与や離婚条件全体を含めた総合的かつ有利な合意形成(示談書・公正証書の作成)をスムーズに進めることができます。

不貞行為による慰謝料の基本的な相場

配偶者が不貞行為(不倫)をした場合、精神的苦痛に対する損害賠償として慰謝料を請求することができます。慰謝料の金額には法律で定められた明確な基準はありませんが、過去の裁判例などから形成された一般的な「相場」が存在します。

慰謝料の金額は、不貞行為の結果として夫婦関係がどうなったかによって大きく異なります。

  • 離婚も別居もしない場合: 概ね 50万円 ~ 100万円 程度

  • 不貞行為が原因で別居に至った場合: 概ね 100万円 ~ 150万円 程度

  • 不貞行為が原因で離婚に至った場合: 概ね 100万円 ~ 150万円 程度(実務平均100〜120万円前後、悪質事由が重なった場合の現実的上限150〜200万円前後)

離婚に至った場合は、平穏な家庭を破壊されたことに対する精神的苦痛が大きいとみなされるため、婚姻継続の場合に比べて慰謝料の金額は高くなる傾向にあります。

慰謝料が増額される主な要因

上記の相場をベースに、具体的な事情(事情の悪質性や被害の大きさ)を考慮して金額が調整されます。以下のような事情がある場合、慰謝料が増額される要因となります。

不貞行為の期間が長い・回数が多い

不倫関係にあった期間が数年に及ぶ場合や、肉体関係の回数や頻度が多い場合は、悪質性が高いと判断され、慰謝料が増額されやすくなります。

婚姻期間が長い

婚姻期間が長い(例えば10年以上など)夫婦ほど、不貞行為によって信頼関係が破壊されたことの精神的苦痛が大きいと評価され、増額事由となります。反対に、婚姻期間が数ヶ月や1年程度と短い場合は低く算定されがちです。

不貞相手の妊娠・出産

不貞相手が配偶者の子どもを妊娠・出産した場合は、夫婦関係の修復が著しく困難になる決定的な事情であり、精神的ダメージも極めて甚大であると認められるため、大幅な増額要因となります。

精神的疾患の発症

不貞行為を知ったショックにより、うつ病などの精神疾患を発症し、心療内科や精神科に通院する事態になった場合、その被害の深刻さが考慮され慰謝料に反映されることがあります(医師の診断書等が必要です)。

慰謝料が減額される、または請求が難しくなる要因

一方で、以下のような事情がある場合は、慰謝料が減額されたり、そもそも請求が認められなかったりする可能性があります。

  • 不倫前から夫婦関係が破綻していた: 不貞行為が始まる前から長期間別居しているなど、既に婚姻関係が客観的に破綻していたと判断される場合、法律上保護すべき利益がないとして慰謝料請求が認められない可能性が高くなります。

  • 不貞相手が既婚者であると知らなかった: 不貞相手が配偶者から「独身である」と騙されており、そのことを過失なく信じていた場合、相手方に対する慰謝料請求は困難です。

  • 交際期間や回数が極めて少ない: 一時的な気の迷いで1〜2回だけ関係を持ったようなケースでは、金額が低く抑えられる傾向にあります。

適切な慰謝料を獲得するために

慰謝料の金額は、個別の事情が複雑に絡み合って算定されます。相手方が事実を認めない場合や、提示された金額が不当に低い場合は、客観的な証拠に基づく冷静な交渉が必要です。適切な慰謝料を獲得するためには、早い段階で法律の専門家である弁護士に相談し、見通しや交渉の方針についてアドバイスを受けることが重要です。

公刊判例実務データ

【裁判実務のデータ】実際の判例における慰謝料認容額の実態

インターネット上では「離婚なら300万円」「相場は200万円以上」といった過大な数字が並ぶこともありますが、近年の裁判実務研究(『判例タイムズ』公刊裁判例分析等)において、不倫相手に対する実際の慰謝料認容額は100万〜150万円(離婚に至った事案でも100万〜120万円前後)が中央値・最頻値となっています。

  • 東京地方裁判所平成28年9月15日判決 婚姻期間14年、不倫期間約1年で最終的に離婚に至った事案。不倫相手に対する慰謝料認容額は120万円と判断されました。
  • 東京地方裁判所平成18年7月26日判決 婚姻期間6年、不倫期間約8ヶ月で離婚に至った事案。裁判所の認容額は100万円にとどまっています。
  • 東京地方裁判所平成28年8月10日判決 婚姻期間11年、相手の「妻とは冷え切っている」という言葉を信じて交際(婚姻継続)。裁判所の認容額は150万円でした。

※婚姻期間が20年以上、不貞期間が10年以上に及ぶなど、極めて重大・悪質な特殊事情がない限り、不倫相手単体に対して200万円を超える判決が出ることは実務上稀です。