相手が勝手に「離婚届」を出すリスク
離婚の話し合いがこじれている最中、あるいは相手が不倫相手と再婚するために焦っているような場合、最も警戒しなければならないのが「相手があなたの署名を偽造し、勝手に離婚届を役所に提出してしまう」という事態です。
日本の役所(市区町村の窓口)は、提出された離婚届の署名や印鑑が本人のものかどうか、筆跡鑑定などの厳密な審査(実質的審査)を行う権限を持っていません。 書類の形式さえ整っていれば、たとえ勝手に書かれた偽造の離婚届であっても、あっさりと受理され、戸籍上は「離婚成立」として処理されてしまうのです。
勝手に出された離婚届を取り消すのは超ハードモード
もし勝手に出されて離婚が成立してしまった場合、役所の窓口で「これは偽造だ!取り消してくれ!」と叫んでも、後から簡単に取り消すことはできません。 戸籍の記載を元に戻すためには、家庭裁判所に「協議離婚無効確認調停」や「訴訟」を起こし、「自分は署名していないし、離婚の意思もなかった」ということを法的に証明するという、膨大な手間と時間と費用がかかる地獄のような手続きを強いられます。
最強の防衛策「離婚届不受理申出」とは?
このような理不尽なトラブルを未然に、かつ完全に防ぐための制度が『離婚届不受理申出(りこんとどけ ふじゅり もうしで)』です。
これは、あらかじめ役所の窓口に対して「私(申出人)が自ら窓口に来て本人確認されない限り、誰が私の離婚届を持ってきても絶対に受理しないでください」とブロックをかけておく手続きです。
この申出を出しておけば、たとえ相手が精巧に偽造した離婚届を持っていっても、役所の窓口で弾かれ、離婚が成立することはありません。相手がどんなに強硬な手段に出てこようとも、あなたの戸籍と権利を鉄壁の防御で守ることができます。
不受理申出の手続き方法(超簡単・無料)
不受理申出の手続きは驚くほど簡単で、費用も一切かかりません。離婚トラブルの気配を感じたら、「とりあえず今日、役所に出しておく」ことを強くお勧めします。
1. どこに提出するか?
原則として、あなたの「本籍地」または「住民票のある住所地」の市区町村役場(戸籍担当窓口)に提出します。
2. 必要な持ち物
- 離婚届不受理申出書(役所の窓口でもらうか、ホームページからダウンロードできます)
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなどの顔写真付きの身分証明書)
- 印鑑(認印でOKですが、念のため持参しましょう)
3. 注意点
- 本人が直接窓口に行く必要があります。郵送や代理人(弁護士を除く)による提出は原則として認められていません。
- 休日の時間外窓口(夜間受付など)でも提出可能ですが、処理が翌営業日になるため、急ぐ場合は平日の開庁時間に行きましょう。
不受理申出の有効期間と解除方法
有効期間は「無期限(一生)」
昔は有効期間が6ヶ月間と決まっていましたが、法改正により、現在では一度提出すれば「あなたが自分で取り下げる(解除する)まで、無期限で一生有効」となっています。 「とりあえず出したけれど、結局関係が修復した(あるいは忘れていた)」という場合でも、一生ブロックされたままになります。
いざ本当に離婚することになったら?(解除方法)
話し合いがまとまり、双方が納得して本当に離婚届を提出することになった場合は、以下のいずれかの方法をとります。
- 取下書を提出する: あなた本人が役所に行き、「不受理申出の取下書」を提出してブロックを解除してから、離婚届を出します。
- あなた本人が窓口に離婚届を持っていく: 不受理申出をしていても、「申出人本人」が窓口に離婚届を持参し、本人確認を受けた場合は、その離婚届は有効として受理されます。(相手に提出を任せることはできません)。
まとめ
離婚の話し合いが少しでもこじれそうだと感じたら、あるいは「財産分与や親権の条件が決まる前に、相手が強引に離婚を成立させようとしている」と察知したら、相手に何も言わずに、今すぐ役所へ行って「不受理申出」を行ってください。 たった紙一枚の簡単な手続きが、あなたを後戻りできない最悪のトラブルから救う命綱となります。