2026年導入:法定養育費の金額と適用|取り決めがなくても請求できる新制度

養育費の「未払い・取り決めなし」という深刻な社会問題

母子世帯の多くが貧困に直面している原因の一つに、「養育費の未払い」があります。 これまでの法律では、養育費はあくまで「夫婦間の話し合い(または裁判所の手続き)」によって金額を取り決めて初めて支払い義務が具体化するものでした。

そのため、「早く離婚したい一心で養育費の約束をせずに離婚してしまった」「話し合いがまとまらず放置してしまった」場合、後から相手に請求しても無視され、結局一銭も受け取れないというケースが社会問題となっていました。

2026年スタートの「法定養育費制度」とは?

この問題を解決するため、2026年(令和8年)に施行される改正法により、画期的な「法定養育費制度」が導入されます。

これは、離婚時に夫婦間で養育費の金額について明確な合意(取り決め)をしていなかった場合であっても、法律上自動的に、一定の金額の養育費を請求する権利が発生するという制度です。

いくら請求できるのか?(金額の目安)

法定養育費の具体的な金額については、今後「法務省令」によって全国一律の最低基準額が定められる予定です。 現状の目安としては、子どもの年齢や人数に応じた「必要最低限の生活水準(生活保護基準などを参考)」をベースに、月額1万円〜数万円程度の固定額になるのではないかと議論されています。

(※あくまで「最低限の保障」としてのセーフティネットであるため、相手が高所得者であっても、法定養育費の枠組みで自動発生するのはこの最低基準額のみです。本来の収入に応じた適正額をもらうためには、別途調停等で金額を取り決める必要があります。)

法定養育費のメリットと強力な回収手段

法定養育費制度の最大のメリットは、「面倒な調停を経ることなく、相手の財産を直ちに差し押さえることができる(先取特権)」という点にあります。

従来であれば、取り決めがない状態で相手が支払いを拒否した場合、まず家庭裁判所に「養育費請求調停」を申し立てて数ヶ月かけて金額を決定し、その決定文書(調停調書など)を持って初めて強制執行(給与や口座の差押え)を行うことができました。

しかし、法定養育費であれば、法律によって最初から債権(請求権)が存在することが確定しているため、相手が支払わない場合は、事前の調停等を飛ばして直ちに相手の給与等から強制的に回収を図る手続き(先取特権に基づく差押え)に移行しやすくなります。(※この「先取特権」の具体的な手続きについては別記事で詳しく解説します)。

「取り決め不要」というわけではない

法定養育費制度ができるからといって、「離婚時に面倒な養育費の話し合いはしなくていい」と考えるのは非常に危険です。

先述の通り、法定養育費はあくまで「最低限の金額」に過ぎません。相手の収入に基づく適正な金額(例:月額5万円や10万円)を受け取る権利があるにもかかわらず、取り決めを怠ったために月額1〜2万円の法定養育費しか差し押さえられない、という事態に陥る可能性があります。

離婚時には、必ず「裁判所が公表している養育費算定表」に基づいた適正額を算出し、公正証書(強制執行認諾文言付き)を作成しておくことが、子どもの将来を守るための大原則であることに変わりはありません。

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