婚姻費用(こんいんひよう)とは?
夫婦には、お互いの生活レベルが同等になるように助け合う義務(生活保持義務)があります。 そのため、離婚に向けた話し合い中や、すでに別居している状態であっても、離婚が正式に成立するまでの間は、収入が多い側(多くは夫)から少ない側(多くは妻)に対して生活費を支払う義務があります。これを法律用語で「婚姻費用」と呼びます。
「勝手に家を出て行ったのだから生活費は払わない」という主張は、原則として法的には通用しません。(※ただし、不倫をして家を出て行った側からの請求など、例外的に認められないケースもあります)
婚姻費用の相場と「算定表」の見方
婚姻費用が毎月いくらもらえるのか(いくら払うべきか)は、家庭裁判所が公表している「婚姻費用算定表」という基準表を用いて計算するのが実務上のスタンダードです。
算定に必要な3つの要素
算定表を使うためには、以下の3つの情報が必要です。
- 子どもの人数と年齢(0歳〜14歳、15歳以上で表が分かれます)
- 権利者(生活費をもらう側)の年収
- 義務者(生活費を払う側)の年収
※年収は、手取りではなく「税引き前の総支給額(源泉徴収票の支払金額)」を用います。自営業者の場合は確定申告書の「課税される所得金額」を基準にします。
これらを算定表の縦軸と横軸に当てはめ、交差するマスの金額(例:月額8万円〜10万円など)が、法的に妥当な婚姻費用の相場となります。
相手が婚姻費用を払ってくれない場合の対処法
話し合いで相手が婚姻費用の支払いに応じてくれれば問題ありませんが、「離婚する相手に払う金はない」と拒否されたり、支払いをストップされたりするトラブルは頻発します。 その場合は、泣き寝入りせずに直ちに法的な手続きをとる必要があります。
1. 婚姻費用分担請求調停の申立て
相手が払わない場合、家庭裁判所に「婚姻費用分担請求調停」を申し立てます。調停委員を交えて、算定表をベースに適正な支払額を話し合います。
【重要:調停は「別居した日」ではなく「申し立てた月」から請求可能】 婚姻費用は、「請求の意思を明確にした時(実務上は調停を申し立てた月)」に遡って支払いが認められるのが原則です。 つまり、別居後しばらく経ってから調停を起こしても、過去の未払い分は請求できない可能性が高いのです。相手が払わないと思ったら、1日も早く調停を申し立てることが鉄則です。
2. 調停不成立の場合は「審判」で裁判官が強制決定
調停での話し合いでも相手が頑なに支払いを拒否した場合、手続きは自動的に「審判」へと移行します。 審判では、裁判官が双方の収入資料に基づき、「毎月〇万円を支払え」という法的拘束力のある命令(審判)を下します。
3. 強制執行(給与の差押え)
審判や調停で決まったにもかかわらず相手が支払いを怠った場合、裁判所の決定書(債務名義)を用いて、相手の給料や銀行口座を強制的に差し押さえることができます。 特に給与の差押えは、会社に知られるプレッシャーになるため、非常に強力な手段です。
別居後の生活不安は弁護士に相談を
「別居したいけれどお金がなくて踏み出せない」「相手が生活費を振り込んでくれない」とお悩みの方は、お早めに夕陽ヶ丘法律事務所へご相談ください。 弁護士が代理人として相手に強く支払いを求め、必要であれば速やかに調停を申し立てることで、あなたの当面の生活基盤を確保するサポートを行います。