養育費の取り決めがないまま離婚するリスクの解消へ
これまでの日本の離婚実務において、大きな社会問題となっていたのが「養育費の未払い・取り決めなし」の問題です。実に多くの夫婦が、早く別れたいという一心から、養育費の金額や支払い方法について明確な合意(公正証書や調停調書など)を交わさないまま離婚届を提出していました。
取り決めがない場合、後から養育費を請求しようとしても、相手が交渉に応じなければ家庭裁判所に調停を申し立てて長期間争う必要があり、その間の生活費(子どもの養育費)が確保できないという深刻な事態に直面していました。
このような問題を解決し、子どもの最低限の生活を保障するために、2026年(令和8年)施行の改正民法で導入されるのが「法定養育費制度」です。
法定養育費制度とは?
法定養育費制度とは、「離婚時に父母間で養育費の取り決めをしていなかった場合でも、法律の規定によって自動的に一定額の養育費請求権が発生する」という画期的な制度です。
これにより、相手が「合意していないから払わない」と言い逃れすることができなくなり、取り決めがなくても直ちに請求や法的手続きに進むことができるようになります。
法定養育費は「いくら」もらえるのか?
法定養育費として請求できる金額は、個別の事情(年収や子どもの人数)を細かく計算して決めるものではなく、子どもの最低限度の生活を維持するために必要な標準的な定額(政令で定められる額)となる見込みです。
具体的には、生活保護基準などを参考に算出され、子ども1人あたり月額1万円〜数万円程度の「最低限の生活保障額」に設定される方向で議論が進められています(具体的な金額は施行に向けて確定されます)。
法定養育費の注意点:必ずしも「適正額」ではない
この制度は画期的ですが、注意すべき極めて重要なポイントがあります。それは、「法定養育費=本来もらえるはずの適正な養育費ではない」ということです。
家庭裁判所が用いる「養育費算定表」に基づけば、相手(支払う側)の年収が高ければ高いほど、月額5万円、10万円と高い養育費が認められます。 しかし、法定養育費はあくまで「取り決めをしなかった場合のセーフティネット(最低保障額)」に過ぎません。相手が高収入であったとしても、法定養育費のルールだけを適用すれば、最低限の定額しか請求できなくなってしまいます。
損をしないための正しい進め方
- まずは協議や調停で適正額を取り決める 法定養育費に甘んじることなく、必ず相手の収入に応じた適正な養育費(算定表基準)を取り決めるよう交渉することが第一優先です。
- 合意できなくても、とりあえず法定養育費を確保しながら調停を続ける 改正法の最大のメリットはここにあります。適正額で合意できずに調停が長引いている期間であっても、法定養育費のルールを使って「最低限の生活費(法定養育費)」は先行して確保しつつ、並行して「本来の適正額」を裁判所で争うという戦術が可能になります。
まとめ
法定養育費制度の導入により、「離婚を急ぐあまり、養育費ゼロで妥協してしまう」という最悪の事態は防げるようになります。 しかし、お子様の豊かな将来のためには、相手の収入に見合った正当な養育費をしっかりと獲得することが不可欠です。
適正な養育費の計算方法や、相手の収入証明の取得方法などにご不安がある場合は、取り返しがつかなくなる前に、ぜひ当事務所の無料相談をご活用ください。