子どもを無断で連れ去られた場合の緊急対応
離婚に向けた話し合いの最中や別居時に、配偶者が同意なく子どもを連れ去ってしまうケースがあります。このような場合、時間が経過すればするほど、連れ去った側の「継続性の原則」(現状の生活環境を維持する方が子どもの利益にかなうという考え方)が有利に働きやすくなってしまいます。 そのため、子どもを連れ去られた場合は、一刻も早い法的手続きによる対応が求められます。
自力での連れ戻しは厳禁
注意すべき点は、連れ去られた子どもを力ずくで連れ戻すなどの「自力救済」は絶対に行ってはならないということです。かえって未成年者略取誘拐罪などの刑事罰に問われたり、今後の親権争いにおいて極めて不利な事情として評価されたりする恐れがあります。
子の引渡しを求める仮処分(保全処分)
子どもを早期に取り戻すための最も一般的な法的手続きが、家庭裁判所に対する「子の監護者の指定」および「子の引渡し」を求める審判の申し立てと、それに付随する「保全処分(仮処分)」の申し立てです。
保全処分の要件
保全処分は、通常の審判を待っていては子どもに回復困難な損害が生じる恐れがあるなど、緊急性が認められる場合にのみ発令されます。
- 現在の監護環境が子どもにとって著しく悪影響を与えている(虐待や育児放棄など)
- 主たる監護者が突然引き離され、子どもの精神的安定が強く害されている
- 連れ去り行為が違法かつ不当な態様で行われた
手続きの流れと執行
申し立てが行われると、家庭裁判所の調査官による調査や審問が迅速に行われます。裁判所が保全処分の決定を下した場合、相手方が任意に引き渡さないときは、強制執行(間接強制や直接強制)の手続きへ移行することが可能です。
人身保護請求による対応
さらに緊急性が高く、子どもの生命や身体への危険が切迫しているような極めて例外的なケースでは、地方裁判所へ「人身保護請求」を行う手段もあります。
人身保護請求のハードル
人身保護請求が認められるためには、「拘束の違法性が顕著であること」が要件となります。共同親権者である配偶者による連れ去りにおいては、通常の引渡し手続き(家庭裁判所での手続き)では目的を達することができない特段の事情が求められるため、利用できるケースは限定的です。
配偶者に子どもを無断で連れ去られた場合は、初期対応のスピードがその後の親権・監護権の行方を大きく左右します。自力で解決しようとせず、直ちに離婚・親権問題に強い弁護士へご相談ください。