「とりあえず距離を置くための別居」が危険な理由

冷却期間としての「とりあえず別居」はアリか?

夫婦喧嘩が絶えず、「一緒にいると息が詰まるから、お互い頭を冷やすためにとりあえず別居しよう(距離を置こう)」と考える方は少なくありません。

結論から言うと、「本当に離婚したいのか、それとも修復したいのか」自分自身の意思が明確に定まっていない状態での「お試し別居」は、法的に非常に危険な行為であり、お勧めできません。

「ちょっと実家に帰ってリフレッシュする」程度の数日の外泊なら問題ありませんが、アパートを借りたり、住民票を移したりするような本格的な別居に安易に踏み切ると、後から取り返しのつかない事態に陥るリスクがあります。

「お試し別居」に潜む3つの罠(リスク)

1. 婚姻関係の破綻(法定離婚事由)を作ってしまう

日本の離婚裁判において、「別居」は婚姻関係が破綻していることを証明する最強の証拠として扱われます。 あなたは「冷却期間を置いて、いずれは修復するつもり」で家を出たとしても、別居が長期間(一般的に3年以上)続けば、裁判所は「この夫婦はもうやり直せない」と判断します。

もし別居中に相手の気持ちが完全に離れ、「やっぱり離婚したい」と裁判を起こされた場合、「私は離婚するつもりで別居したわけじゃない!」と主張しても、長期間の別居という既成事実によって強制的に離婚を認められてしまう危険性が非常に高いのです。

2. 「悪意の遺棄」と非難されるリスク

相手の合意を得ずに「もう顔も見たくない」と勝手に家を出てしまうと、民法上の同居義務・協力義務に違反したとして「悪意の遺棄」を主張されるリスクがあります。 もし悪意の遺棄(有責配偶者)と認定されてしまうと、後になって自分が本当に離婚したくなった時に、裁判所から「自分から家を飛び出した悪い側の人間からの離婚請求は認めない」と却下されてしまい、身動きが取れなくなります。

3. 生活費(婚姻費用)の二重生活による経済的破綻

別居するということは、一つの家計を二つに分ける(家賃や光熱費が2倍かかる)ということです。 あなたが相手より収入が多い場合、自分が借りたアパートの家賃を払いながら、元の家に残った配偶者に対しても「婚姻費用(生活費)」を毎月支払い続けなければなりません。 この二重生活の経済的負担は想像以上に重く、「頭を冷やすつもりが、お金の心配で精神的に追い詰められ、結局不利な条件で慌てて離婚に応じざるを得なくなった」というケースが後を絶ちません。

修復したいなら「同居」したまま話し合うのが鉄則

もしあなたに「できれば離婚を回避して修復したい」という気持ちが1ミリでも残っているのなら、どんなに苦しくても家を出てはいけません。 一つ屋根の下にいれば、挨拶を交わしたり、一緒に食事をとったりと、関係を修復するきっかけを作ることができます。しかし別居してしまえば、連絡をとるハードルが格段に上がり、相手の心は急速に離れていき、修復の可能性はほぼゼロに等しくなります。

別居に踏み切るべき「唯一のタイミング」とは

別居というカードを切るべきなのは、「自分の中で100%、何があっても絶対に離婚する」と決意が固まった時だけです。 離婚に向けた証拠集めや財産の把握がすべて完了し、「あとは婚姻関係の破綻という実績を作るだけだ」という最終段階に入ってから、満を持して別居を実行するのが、最も賢くリスクのない進め方です。

(※ただし、配偶者からDV(身体的暴力)や深刻なモラハラを受けており、自分や子供の心身に危険が及んでいる場合は例外です。離婚の意思や準備に関わらず、一刻も早く避難(別居)してください。)

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