相手が財産を隠しているかもしれない?
離婚の話し合いにおいて、「相手の収入から考えて、もっと貯金があるはずだ」「自分に内緒で作った口座があるのではないか」と疑念を抱くケースは少なくありません。
日本の裁判実務において、財産分与は「申告された財産(証拠がある財産)のみを分ける」のが原則です。裁判所が自ら積極的に財産を探し出してくれるわけではないため、財産を請求する側が、相手の隠し財産の存在を立証(証拠提出)しなければなりません。
同居中にできる「自力での財産調査」
別居してしまうと、家の中にある資料を確認することが極めて困難になります。そのため、同居中・離婚を切り出す前の初期段階での証拠収集が何よりも重要です。
1. メインバンクの取引履歴をチェックする
給与が振り込まれるメイン口座や、生活費が引き落とされる口座の通帳記帳・Web明細を可能な限り過去に遡って確認します。
- 他行へのまとまった資金移動がないか(「〇〇銀行へ振込」「振替」などの記載)
- 証券会社や保険会社への引き落としがないか(株や投資信託、積立型生命保険の存在を示唆)
2. 自宅に届く郵便物を確認する
銀行、証券会社、保険会社からのハガキや封書(特に年に数回届く運用報告書や残高証明書)は、口座の存在を証明する決定的な証拠となります。勝手に開封すると信書開封罪となる恐れがあるため、宛名と差出人がわかるようにスマートフォンのカメラで封筒の外観を撮影しておきましょう。
3. スマートフォンやパソコンの履歴(※注意が必要)
インターネットバンキングのアプリや、証券会社のアプリがインストールされていないか確認します。ただし、無断でパスワードを解除してログインする行為は、不正アクセス禁止法等の違法行為に該当するリスクがあるため、ホーム画面のアイコン確認程度に留めるなど慎重な対応が求められます。
4. 確定申告書・源泉徴収票
相手が自営業者や高所得者の場合、確定申告書の控えを確認することで、配当所得や不動産所得など、別の収入源(=裏付けとなる資産)を把握できることがあります。
開示に応じない場合の「法的な調査手続き」
自力での調査に限界があり、相手が「これ以上口座はない」とシラを切る場合、弁護士を介入させて法的な開示手続きを利用します。
23条照会(弁護士会照会)
弁護士が、所属する弁護士会を通じて金融機関等に情報の開示を求める制度です。「〇〇銀行の〇〇支店に口座があるはずだ」というある程度の当たり(支店名の特定)がついている場合、その口座の残高や取引履歴を開示させることができます。(※全店照会が可能な金融機関も一部存在します)
裁判所の「調査嘱託」
離婚調停や訴訟に移行した場合、裁判所を通じて金融機関に情報開示を求める手続きです。23条照会では開示を拒否する金融機関であっても、裁判所からの調査嘱託であれば回答に応じるのが通常です。
隠し財産が見つかった場合のペナルティはある?
「財産を隠していたのだから、分与割合を半分ではなく私に多くしてほしい(7対3など)」と主張したくなるかもしれません。 しかし、実務上は、隠し財産が見つかったとしても、それを財産分与の対象に含めて(全体を合算して)原則通り「1/2ずつ」に分ける処理にとどまり、隠していたこと自体に対する懲罰的な割合変更は認められにくいのが現実です。
だからこそ、「隠され損」にならないよう、事前の徹底した調査と証拠保全が不可欠となります。