親権争いにおける「子供との同居実績」の重み
離婚を見据えて別居を決意した際、子供がいるご夫婦にとって最大の懸案事項は「別居する際、子供をどうするか」です。
日本の離婚裁判(親権争い)において、裁判所は「継続性の原則(これまで子供の面倒を主に見てきたのはどちらか、現在の生活環境をなるべく変えない方が子供にとって良い)」を非常に重く見ます。 つまり、別居時に子供を置いて家を出てしまうと、相手が子供と同居して育てるという「既成事実(実績)」が積み上がってしまい、後から親権を主張しても、ひっくり返すことは極めて困難になります。
そのため、「どうしても親権を取りたい」と考える親は、別居時に必ず子供を一緒に連れて出るのが鉄則となります。
「勝手に子供を連れて出る」のは違法か?
しかし、相手(配偶者)に何の相談もなく、ある日突然子供を連れて家を出ていく行為は、相手から見れば「大切な子供を誘拐された」のと同じです。 相手が警察に被害届を出したり、裁判所に「子の引き渡しの仮処分」を申し立てたりしてくるリスクがあります。
結論から言うと、別居時に子供を連れて出ること自体は、直ちに「未成年者略取・誘拐罪」などの犯罪になるわけではありません(夫婦ともに親権を持っているため)。 しかし、やり方を間違えると「違法な連れ去り(違法な実力行使)」とみなされ、その後の親権争いにおいて裁判官の心証を著しく悪化させ、かえって親権を失う致命的な原因になることがあります。
「違法な連れ去り」とみなされないための3つのルール
適法な(親権争いで不利にならない)別居とするためには、以下のルールを守る必要があります。
1. 自分が「主たる監護者(メインの養育者)」であること
これまで、食事の準備、お風呂、寝かしつけ、保育園の送迎、学校行事への参加など、日常的な子供の世話を「主として担ってきた側」が連れて出る場合は、生活の継続性が保たれるため、違法とみなされにくい傾向にあります。 逆に、普段は仕事ばかりで育児を相手に任せきりだった側が、親権欲しさに突然子供を連れ去る行為は、違法と判断される可能性が極めて高くなります。
2. 平穏な方法で連れ出すこと
相手が子供を抱き抱えているのを暴力で無理やり引き剥がしたり、子供が通う学校や保育園に押しかけて強引に連れ去ったりするような「実力行使」は絶対にNGです。 相手が仕事で不在の間に、平穏に引っ越し作業を済ませて子供と一緒に家を出る方法が一般的です。
3. 別居後も「面会交流」を拒絶しないこと
子供を連れて家を出た後、相手に対して「二度と子供に会わせない」「子供の居場所も教えない」といった強硬な態度をとることは、裁判所から「親として不適格(親としての寛容性がない)」と評価される大きなマイナス要因となります。 DVや虐待などの特別な事情がない限り、「別居はするが、子供には適切な頻度で会わせる(面会交流には応じる)」という態度を明確に示すことが、親権を獲得する上でも重要です。
相手から「子の引き渡し」を求められたら
あなたが子供を連れて別居した後、相手が裁判所に対して「子供を元の家に返せ」という申し立て(子の監護者の指定および子の引き渡し請求)をしてくることがあります。 この手続きは非常にスピーディーに進むため、申し立てられた場合は悠長に構えている暇はありません。即座に弁護士を立てて、「自分が子供を育てるのが正当であり、現在の生活環境が子供にとって最適である」ことを裁判官と家庭裁判所調査官に対して徹底的に主張・立証する必要があります。
置き手紙の重要性
黙って連れ去ったと思われないよう、家を出る際は必ず「夫婦関係が修復困難なため別居すること」「子供は自分が責任を持って育てること」「落ち着いたら面会交流の話し合いには応じること」を明記した置き手紙を残すのが基本テクニックです。
子供を連れての別居は、一つ間違えると「誘拐犯」扱いされ、親権を永遠に失うリスクを孕んだ非常にデリケートな行動です。家を出る日程を決める前に、必ず弁護士に状況を説明し、法的リスクのない安全な計画を立ててから実行してください。