セックスレスを理由とした離婚と慰謝料請求の可否

セックスレスは法的な離婚理由になるか?

日本では夫婦の半数以上がセックスレス状態にあるとも言われており、非常にデリケートかつ深刻な離婚の動機となっています。 相手が離婚に合意すればもちろん問題ありませんが、相手が離婚を拒否して裁判になった場合、果たして「セックスレス」を理由に裁判所は離婚を認めてくれるのでしょうか?

結論から言うと、「正当な理由のない、長期にわたるセックスレス」は、民法上の法定離婚事由である『その他婚姻を継続し難い重大な事由』に該当し、離婚が認められる可能性が高いです。

夫婦間の性交渉は、婚姻関係を構成する重要な要素の一つとされており、それを一方的に拒否し続けることは夫婦関係を破綻させる重大な要因とみなされるためです。

離婚が認められる条件

セックスレスで裁判離婚が認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。

1. 「長期」にわたっていること

法律上明確な期間の定めはありませんが、過去の判例から見ると、「概ね1年以上」継続していることが一つの目安となります。数ヶ月程度であれば「一時的なもの」と判断され、離婚事由としては認められにくい傾向にあります。

2. 「正当な理由」がないこと

性交渉がないことについて、正当な理由がある場合は離婚事由として認められません。 【正当な理由とみなされるケース】

  • 病気や怪我、高齢による体力的な衰え
  • 妊娠中、または出産直後
  • 重度の仕事の疲労やストレス
  • 相手からのDVやモラハラがあり、心理的に拒絶している場合

健康であるにもかかわらず、単に「気分が乗らない」「面倒くさい」「愛情が冷めた」といった理由で長期間拒否し続けている場合は、正当な理由がない(悪意の遺棄または重大な事由)と判断されやすくなります。

3. 関係修復のための努力をしていないこと

話し合いを求めても無視される、専門のカウンセリングを拒否されるなど、セックスレスを解消するための努力を相手が一方的に放棄している事実は、婚姻関係の破綻を裏付ける強い要素となります。

セックスレスで慰謝料は請求できるか?

セックスレスが原因で離婚に至った場合、性交渉を不当に拒否し続けた配偶者に対して、慰謝料を請求することは可能であり、実際に裁判で認められるケースも少なくありません。

ただし、不貞行為(不倫)やDVに比べると、セックスレス単独での慰謝料相場は低くなる傾向があり、数十万円〜100万円程度にとどまることが多いのが実情です。 もしセックスレスの裏に「実は不倫をしていて、配偶者への興味を失っていた」という事実が発覚した場合は、セックスレスではなく「不倫(不貞行為)」を主原因として、高額な慰謝料(150万〜300万円程度)を請求していくことになります。

セックスレスを証明する難しさ

セックスレスの離婚裁判において最大の壁となるのが「証拠の確保」です。 寝室での極めてプライベートな出来事であるため、不倫のラブホテルの写真のような客観的な証拠を提示することは困難です。 相手が裁判で「いや、月1回は応じていた」「そっちが誘ってこなかっただけだ」と嘘をついて争ってきた場合、水掛け論になってしまいます。

そのため、セックスレスを理由に離婚や慰謝料請求を見据える場合は、日頃から以下の証拠を残しておくことが極めて重要です。

  • LINEやメールのやり取り: 「いつも理由をつけて断られる」「どうして応じてくれないの?」といった、拒否されている状況が分かる会話履歴。
  • 日記・メモ: いつ誘って、どのような言葉で断られたか、相手の態度はどうだったかを具体的に記録した継続的な日記。
  • 心療内科のカルテ: セックスレスの悩みによってうつ病などを発症し、通院している場合の診断書やカルテ。

セックスレスは誰かに相談しづらく、一人で抱え込んで精神的に追い詰められてしまう方が多い問題です。法的な解決の糸口は必ずありますので、まずは秘密厳守の弁護士にご相談ください。

こちらの記事も読まれています