怒りに任せた行動が引き起こす深刻な法的リスク
配偶者の不倫が発覚した際、不倫相手に対して激しい怒りや憎悪を抱くのは無理のないことです。「相手を社会的に抹殺してやりたい」「同じだけの苦しみを与えたい」という感情に駆られる方も多いでしょう。
しかし、その怒りに任せて不倫相手に嫌がらせや報復行為を行ってしまうと、あなた自身が犯罪者として処罰されたり、逆に不倫相手から損害賠償(慰謝料)を請求されたりする深刻なリスクが生じます。法的な正当性を持っていたはずの被害者が、一転して加害者となってしまう事態は絶対に避けなければなりません。
絶対にやってはいけないNG行動とその罪
不倫相手に対する報復として行われがちですが、法的に極めて危険な「NG行動」には以下のようなものがあります。
1. SNSやインターネット掲示板での暴露(名誉毀損罪・侮辱罪)
不倫相手の実名、顔写真、勤務先、不倫の事実などをSNS(XやInstagramなど)や匿名掲示板に書き込む行為は、名誉毀損罪(刑法230条)に問われる可能性が高いです。仮に不倫が事実であったとしても、公然と他人の社会的評価を低下させる事実を摘示すれば名誉毀損が成立します。また、具体的な事実を示さずに「泥棒猫」「最低な人間」などと罵倒した場合は侮辱罪(刑法231条)に該当します。
2. 職場への電話や訪問による暴露(名誉毀損罪・業務妨害罪)
不倫相手の会社に電話をかけたり、直接押しかけたりして「お宅の社員が不倫をしている」と触れ回る行為も、名誉毀損罪に該当します。さらに、その行為によって会社の業務がストップしたり、対応を余儀なくされたりした場合、威力業務妨害罪(刑法234条)や偽計業務妨害罪(刑法233条)として刑事告訴される恐れもあります。
3. 直接の脅迫や執拗な連絡(脅迫罪・強要罪・ストーカー規制法違反)
相手に直接連絡を取り、「殺す」「会社をクビにしてやる」と脅す行為は脅迫罪(刑法222条)です。また、「退職届を書け」「土下座しろ」などと義務のないことを強要した場合は強要罪(刑法223条)となります。さらに、無言電話を繰り返したり、待ち伏せをしたりする行為はストーカー規制法違反となる可能性もあります。
逆に慰謝料を請求される「不法行為」の危険性
上記のような行為は刑事罰の対象となるだけでなく、民法上の「不法行為(民法709条)」にも該当します。
本来、あなたは不倫の被害者として慰謝料を受け取る権利があります。しかし、あなたが嫌がらせ行為に及んだ場合、不倫相手は「名誉を傷つけられた」「精神的苦痛を受けた」として、あなたに対して損害賠償(慰謝料)を請求する権利を持ちます。
その結果、あなたが受け取るはずの不倫慰謝料と、相手が請求する名誉毀損等の慰謝料とが「相殺(そうさい)」され、手元にほとんどお金が残らなくなってしまう、あるいは逆にあなたが支払い義務を負うという最悪のケースも想定されます。
不倫相手への制裁は「合法的な慰謝料請求」で行うべき
不倫相手に対して法的に認められている制裁手段は、あくまで「金銭的な賠償(慰謝料請求)」のみです。社会的な制裁や個人的な報復は法律では許されていません。
本当に相手に反省を促し、関係を確実に断ち切らせるためには、感情的な行動をぐっと堪え、粛々と法的手段に基づく慰謝料請求を進めることが最も効果的です。
冷静な対応と弁護士への相談が最善の解決策
怒りをコントロールするのは容易ではありませんが、嫌がらせ行為は何の根本的な解決にもならず、あなた自身の首を絞める結果になります。どうしても感情的になってしまう場合は、早い段階で弁護士に代理交渉を依頼してください。弁護士が法的な窓口となることで、相手に直接接触することなく、プレッシャーを与えながら正当な慰謝料を獲得することが可能になります。