結婚前に交わす夫婦財産契約(プリナップ)|契約書の書き方と将来の紛争予防

夫婦財産契約(プリナップ)とは

「夫婦財産契約」とは、結婚をする前に、夫婦間の財産の取り扱いや生活費の分担、万が一離婚することになった際の財産分与のルールなどについてあらかじめ定めておく契約のことです。海外では「プリナップ(Prenuptial Agreement)」と呼ばれ広く普及していますが、日本でも近年、将来のトラブルを未然に防ぐ目的で関心が高まっています。

日本の民法では、夫婦の財産関係について「法定財産制」が定められており、結婚生活で協力して築いた財産は共有財産と推定されます。夫婦財産契約は、この法定財産制とは異なる独自のルールを夫婦間で合意により設定する法的な仕組みです。

夫婦財産契約で取り決められる主な内容

夫婦財産契約では、公序良俗(社会の一般的な秩序や道徳)に反しない範囲で自由に内容を取り決めることができます。具体的には以下のような内容が挙げられます。

1. 婚姻前の特有財産の明確化

結婚する前から各自が所有していた預貯金、不動産、株式などの財産(特有財産)を明確にし、これらが婚姻後も各自の固有の財産であることを確認します。これにより、将来離婚する際に「どちらの財産か」で揉めるリスクを減らすことができます。

2. 婚姻中の生活費(婚姻費用)の分担方法

家賃、食費、光熱費、子どもの教育費など、結婚生活を送る上で必要な費用(婚姻費用)を、どちらがどの割合で負担するかを定めます。生活費の分担割合や共通口座の運用ルールなどを明確にしておくことで、金銭的な価値観の違いによる衝突を防ぐ効果があります。

3. 離婚時の財産分与のルール

万が一離婚することになった場合、婚姻中に築いた共有財産をどのような割合や方法で分割するかをあらかじめ定めておきます。「原則として各自の財産は各自のものとする」「特定の財産は分与の対象外とする」といった取り決めが可能です。

契約を有効にするための要件と手続き

夫婦財産契約を法的に有効なものとするためには、厳格な要件を満たす必要があります。

婚姻届の提出前に締結すること

民法の規定により、夫婦財産契約は必ず「婚姻届を提出する前(結婚前)」に締結しなければなりません。結婚後に財産関係の契約を結ぶことも可能ですが、結婚後の契約は夫婦のどちらからでも一方的に取り消すことができる(夫婦間契約取消権)という法的な脆弱性があります。

夫婦財産契約の登記の重要性

作成した夫婦財産契約の効力を第三者(債権者など)にも主張するためには、法務局で「夫婦財産契約の登記」を行う必要があります。登記をしない場合、契約自体は夫婦間では有効ですが、第三者には対抗できません。

夫婦財産契約を結ぶ際の注意点

夫婦財産契約は、一度結婚が成立すると、原則として契約内容を変更することができません。そのため、将来のライフスタイルの変化(出産、転職、病気など)を見据えて、慎重に内容を検討する必要があります。 また、「一方的に不利な条件で財産分与を放棄させる」「離婚そのものを禁止する」といった法律や公序良俗に反する内容は無効と判断される可能性があります。

法的に不備のない確実な夫婦財産契約を作成し、将来の紛争を効果的に予防するためには、契約書の文案作成や登記手続きについて、事前に弁護士などの専門家に相談して進めることが不可欠です。

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