個人事業主の「手取りゼロ主張」に潜む落とし穴
離婚調停や裁判の場において、配偶者が個人事業主である場合によく耳にするのが「経費を差し引いて赤字だから支払うお金はない」「節税しているから手取りはゼロだ」という主張です。
会社員であれば給与明細や源泉徴収票で一目瞭然の収入ですが、個人事業主は自分で経費を計上できるため、書類上の所得を低く見せかけることが比較的容易にできてしまいます。しかし、税金対策上の「所得」と、法律上の扶養義務や財産分与における「実際の稼ぎ(経済力)」は必ずしも一致しません。
夕陽ヶ丘法律事務所には、配偶者のこのような主張に泣き寝入り寸前まで追い込まれた方からのご相談が数多く寄せられています。結論から申し上げますと、確定申告書上の数字をそのまま鵜呑みにする必要は一切ありません。法律と証拠を正しく使えば、相手の本当の経済力を暴くことは十分に可能です。
税法上の所得と、離婚実務における「実収入」の違い
個人事業主が主張する「手取りゼロ」のからくりを紐解くためには、税法と離婚実務(家事事件)における収入のとらえ方の違いを知る必要があります。
実質的なキャッシュフローに注目する
税金を計算するための確定申告では、売上からさまざまな経費を差し引いて課税所得を圧縮します。これ自体は合法的な節税手段ですが、離婚における養育費や婚姻費用の算定、あるいは財産分与においては、「実際に手元に残っているキャッシュ(現金)」が重視されます。
- 事業主自身の生活費と混同されている経費: 自宅兼事務所の家賃、水道光熱費、自家用車の維持費、個人的な飲食代などが「事業経費」として計上されている場合、これらは本来、個人の生活費に充てられるべきお金です。
- 減価償却費のマジック: 実際の現金の支出を伴わない「減価償却費」が経費として大きく計上されている場合、帳簿上は赤字であっても、手元には十分なキャッシュが残っているケースが多々あります。
弁護士は、過去数年分の確定申告書(B表)だけでなく、総勘定元帳や試算表、さらには事業用口座の通帳コピーなどを詳細に分析し、「経費として落とされているが、実質的には個人の生活費である金額」を所得に加算(アドバック)して、本来の適正な収入を算定します。
隠された財産を見抜く!具体的な調査とアプローチ方法
相手が収入や財産を隠そうとする場合、弁護士会照会や裁判所の調査嘱託といった法的な手段を用いて、客観的な証拠を集めることが不可欠になります。
1. 事業用口座の徹底的な精査
「収入がない」と主張する相手であっても、取引先からの売上の振込先や、日常の決済用として使っている事業用口座には、確実にお金の流れが記録されています。通帳の開示を求め、どの口座からどのような引き落としがあるのかを細かく追うことで、申告所得との乖離を明らかにします。
2. 売掛金や在庫、所有車両の特定
財産分与の対象となるのは現金や預貯金だけではありません。個人事業主が保有する以下のような資産も重要な財産となります。
- 売掛金(未回収の報酬): すでに提供したサービスや納品した成果物に対して、これから支払われる予定の売上は貴重な財産です。
- 事業用資産・在庫: パソコン、機械工具、商品在庫なども評価の対象となります。
- 所有車両・不動産: 事業名義やローン完済前の車両であっても、現在の市場価値(査定額)から残債を引いた価値が財産分与の対象に含まれます。
3. 2026年改正民法を見据えた財産開示の強化
近年の法改正や実務の厳格化により、財産隠しに対するペナルティや調査権限はより強力なものになっています。相手が意図的に財産や収入を開示しない場合でも、裁判所を通じた手続きによって相手の財産状況を明るみに出す道が開かれています。当事務所では、最新の法改正トレンドを踏まえ、最も効果的な証拠収集ルートをご提案します。
「ない袖は振れない」と言われたときの強制執行と差し押さえ
話し合いの中で「払いたくてもお金がない」の一点張りで交渉に応じない場合、調停や審判、あるいは裁判で決定(あるいは和解)を得た上で、強制執行(差し押さえ)に踏み切る必要があります。
個人事業主に対する強制執行では、会社員のように給与全額を毎月差し押さえることはできませんが、以下のような強力なターゲットを狙うことができます。
- 取引先からの売掛金: 個人事業主にとって最も痛手となるのが、主要な取引先に対する「売掛金債権の差し押さえ」です。これにより、取引先を通じて直接回収を図ると同時に、相手の信用問題にもアプローチできます。
- 預貯金口座: 事前に特定した事業用または個人の銀行口座を差し押さえ、残高から強制的に回収します。
- 動産・不動産: 事務所内の高価な備品や、所有している不動産、自動車などを差し押さえることも視野に入れます。
「手取りゼロだから大丈夫だ」と高をくくっている相手であっても、法的な強制力を目の当たりにすることで、態度を軟化させ、一括払いや確実な分割払いに応じざるを得なくなるケースが数多く存在します。
一人で悩まず、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士にご相談ください
個人事業主との離婚や財産分与、養育費の取り決めは、通常のサラリーマン同士の離婚に比べて専門的な知識と緻密な証拠分析が必要です。「相手が税理士をつけていて太刀打ちできない」「節税を言い訳にされて納得がいかない」という方は、ぜひ一度、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士にご相談ください。
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