離婚協議を進める中で、最も激しい争点の一つとなるのが「養育費」です。
別居や離婚を切り出した際によく耳にするのが、「自分も生活が苦しい」「手取りが低いから月1万円しか払えない」という相手からの拒絶や減額要求です。
しかし、感情のままに相手の提示額を呑んでしまったり、「払えないと言われたから仕方ない」と諦めてしまったりすると、その後の長い子育て期間において経済的な不利益を被るのはあなたとお子様です。
本記事では、相手が低収入を理由に養育費の大幅な減額を主張してきた際、法律的にどのように反論し、適正な額を獲得すべきかについて、弁護士の実務視点から詳しく解説します。
1. 相手の「月1万円」という主張の落とし穴
相手が「手取りが低い」と主張する場合、その背景にはいくつかの心理や都合が隠されています。まずは相手の主張を冷静に分析し、何が問題であるかを見極めることが重要です。
- 自分の生活を優先させたい心理: 離婚によって自分の生活費が圧迫されることを恐れ、養育費を最小限に抑えようとしているケースが多く見られます。
- 義務感の欠如: 子どもの親としての扶養義務(生活保持義務)の重みを軽視している状態です。
- 実際の収入を正確に開示していない: 額面や手取りをごまかしていたり、意図的に労働時間を減らして収入を低く見せかけている可能性もあります。
法律上、親が子どもに対して負う「生活保持義務」は、自分自身の生活と同程度の生活を子どもにも保障しなければならないという非常に重い義務です。たとえ相手の手取りが少ない場合であっても、自分だけが贅沢をしたり、不当に労働をセーブしたりして養育費の支払いを免れることは許されません。
2. 裁判所の「養育費算定表」を用いた適正額の算出
適正な養育費を導き出すための最も確実な基準が、裁判所の「養育費算定表」です。
算定表は、義務者(支払う側)の年収と権利者(受け取る側)の年収を交差させて、標準的な養育費の額を算出する仕組みになっています。
- 給与所得者の場合: 源泉徴収票や給与明細に記載されている「総支給額(額面)」をベースに計算します。「手取り額」ではない点に注意が必要です。
- 自営業者の場合: 確定申告書の「課税所得金額」をベースにしつつ、必要経費として計上されているものの実際には事業経費とは言えないもの(減価償却費など)を加算して実収入を再計算します。
相手が「手取りが低い」と主張していても、それは税金や保険料が引かれた後の手取り額を意図的に低く言っているだけの場合や、額面自体が正しくない場合があります。まずは正確な収入証明書の開示を求めることが先決です。
3. 「働く意思があっても稼げない」は通用するのか?(潜在的稼働能力の問題)
相手が「非正規雇用でシフトに入れてもらえない」「体調が優れずフルタイムで働けない」などを理由に低収入を主張する場合、法律では「潜在的稼働能力」という概念が検討されます。
裁判所は、心身に重度な障害があるなどの正当な理由がない限り、健康な成人であれば「その年齢や学歴、地域の実情に応じた平均的な収入を得る能力がある」とみなすことがあります。
- わざと仕事を辞めた・減らしたケース: 離婚後に養育費の支払額を減らす目的で、意図的に退職したり、高収入の仕事を辞めてアルバイトに変えたりした場合は、元の収入を基準(あるいは地域の平均賃金を基準)に養育費が算定される可能性が極めて高いです。
- 正当な理由がない低収入: 「働く気力がない」「今の仕事が好きだから給料が安くてもよい」という主観的な理由は、子どもの養育費を優先すべき場面では通用しません。
夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が介入した案件でも、「手取り10万円しかない」と主張していた相手に対し、過去の職歴や資格、保有スキルから潜在的稼働能力を立証し、裁判所の調停・審判において適正な額(月額6万円台)での合意・決定を勝ち取った実績が多数あります。
4. 証拠集めと弁護士を通じた収入開示の手続き
相手が源泉徴収票や給与明細を出さない、あるいは「会社に内緒だから見せない」と拒絶する場合、個人間で交渉を続けても拉致が開きません。
そのような場合は、法的な手続を利用して相手の収入を強制的に明らかにさせます。
- 弁護士会照会(23条照会)の活用: 弁護士が職権により、相手の勤務先や金融機関等に対して必要な情報の開示を求めることができます。
- 裁判所を通じた文書送達・調査嘱託: 離婚調停や審判の申し立てを行えば、裁判所を通じて相手の正確な収入状況(源泉徴収票や確定申告書など)の提出を厳しく命じることができます。
また、2026年現在、改正民法の施行や法改正の議論が進む中で、養育費の確実な確保に向けた社会的な機運は一層高まっています。離婚時の財産分与や公正証書の作成、さらには将来の不払いリスクを見据えた法的手当て(先取特権や強制執行を見据えた合意など)を総合的に行うことが重要です。
5. 相手が頑なに拒絶し続ける場合の最終手段
どんなに説得しても、相手が「月1万円以上は絶対に払わない」「払うくらいなら裁判でも何でもしろ」と不誠実な態度を崩さない場合、協議離婚の継続は困難です。
その場合のステップは以下の通りです。
- 離婚調停の申し立て: 家庭裁判所において、調停委員という第三者を交えて客観的な算定表に基づいた話し合いを行います。調停委員から相手に対して「その金額では法律上認められない」と説得してもらうことが大きな効果を持ちます。
- 審判への移行: 調停がまとまらない場合は審判手続きに移行し、裁判所が一切の事情を考慮して適正な養育費の金額を強制的に定めます(審判)。
- 強制執行(差押え)の準備: 離婚協議書や調停調書、審判書などを「強制執行認諾文言付き公正証書」や債務名義として残しておくことで、万が一相手が支払いを滞らせた際、給与や預貯金を直ちに差し押さえることが可能になります。
まとめ:泣き寝入りせず、夕陽ヶ丘法律事務所にご相談ください
「手取りが低いから月1万円しか払えない」という相手の言葉は、法的根拠のない自分勝手な言い分であることがほとんどです。
相手の言葉を鵜呑みにして低額な養育費で合意してしまうと、後から「やっぱり足りないので増額してほしい」と変更を求めることは容易ではありません。
夕陽ヶ丘法律事務所では、ご相談者様とお子様の未来を守るため、相手の収入の徹底的な調査、算定表に基づく適正額の算出、そして調停や裁判における法的な主張立証を全面的にサポートいたします。
プライバシーに配慮した落ち着いた相談ブースをご用意しておりますので、一人で悩まずに、まずは当事務所の弁護士までお気軽にご相談ください。
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