属性・職業別・熟年離婚

DV加害者が「子どもを学校・保育園から連れ去る」のを防ぐ事前通告

大阪弁護士会所属 弁護士 井上正人 監修

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、民法第763条(協議離婚)、第770条(裁判離婚)、第768条(財産分与)、2026年改正民法(共同親権・法定養育費)の規定および多数の離婚・親権・財産分与の実務実績に基づきわかりやすく解説しています。

Q DV夫・妻が学校や保育園から子どもを勝手に連れ去るのを防ぐには、どのような事前通告や法的措置が必要ですか?
A 【法的判断基準と事前通告の重要性】保育園や学校からの不当な連れ去りを防ぐには、口頭での注意だけでなく、接近禁止命令や子どもの引き渡しを禁止する保護命令の活用、および園や学校に対する書面での厳格な事前通告が不可欠です。学校現場ではトラブル防止から引き渡してしまう盲点があるため、監護権を証明する書類や裁判所の手続きを踏まえた正式な書面を提出し、指定者以外への引き渡し拒否を徹底させる必要があります。
【弁護士による緊急対応と解決サポート】公的な相談窓口や弁護士会等では、緊急の保護命令申し立てから教育機関への正確な折衝・文書作成まで迅速にサポートします。万が一の連れ去りリスクを未然に防ぎ、お子様の安全と親権・監護権の確保を最優先に守るための法的措置を強力にバックアップします。

DV加害者による子どもの連れ去りリスクと教育機関の盲点

配偶者からのDV(ドメスティック・バイオレンス)やモラハラを理由に別居を決意した際、最も恐ろしいリスクの一つが「子どもの不当な連れ去り」です。加害者は、自身の支配力を維持する目的や、離婚調停・裁判で優位に立つための手段として、子どもを学校や保育園から突然連れ去るケースが後を絶ちません。

多くの方が「自分の親なのだから、学校は親権者(または監護権者)以外への引き渡しを拒否してくれるはずだ」と考えがちですが、ここに大きな盲点があります。日本の多くの保育園や学校現場では、これまでの顔見知りである父親または母親からの「今日は私が迎えに来ました」という申し出に対して、トラブルを避けるためにそのまま子どもを引き渡してしまう事例が存在します。

特に別居前や別居直後の不安定な時期においては、学校側もどちらが主たる監護者であるか判断に迷うことがあります。そのため、事前に法的根拠に基づいた厳格な通告と対策を行っておくことが、子どもの安全を確保する上で極めて重要な意味を持ちます。

保育園・学校への「事前通告」と法的実務の手順

子どもの安全を守るためには、通っている保育園、幼稚園、小学校などの教育機関に対して、文書による正式な事前通告を行う必要があります。口頭での説明だけでは、担当者の交代や申し送りミスによって連れ去りを許してしまう危険性があるためです。

書面による通告書の提出

教育機関の園長や校長、担任教諭宛てに、別居の事実や家庭内の事情(DVが存在することなど)を説明する書面を提出します。この書面には以下の事項を明確に記載します。
  • 別居が開始されたこと、または現在進行形で夫婦間に法的紛争があること
  • 相手方(DV加害者)による子どもの連れ去りリスクが存在すること
  • 面会交流や引き渡しに関する裁判所の決定、または弁護士からの受任通知の有無
  • 母親(または父親)以外の人物によるお迎え・引き渡しを原則として拒否してほしい旨の要請

引き渡し可能者の厳格な指定

通告書には、子どもを引き渡してもよい人物(同居親、祖父母など、事前に登録された緊急連絡先かつ許可された者)を写真付きなどで明確に指定します。それ以外の人物が来園または来校した場合は、直ちに警察に通報し、同時に同居親へ連絡を入れるよう強く依頼しておきます。

保護命令(接近禁止命令・電話等禁止命令)の活用

DV加害者から子どもと自分自身を強力に守る法的手手段として、配偶者暴力防止法に基づく「保護命令」の申し立てがあります。この保護命令を活用することで、学校や保育園の周辺での待ち伏せや接近そのものを法的に禁止させることができます。

「子の身近な場所」における接近禁止

裁判所から発令される保護命令の中には、被害者本人に対する接近禁止だけでなく、被害者が同居している住居や職場、その他通常所在する場所の周辺からの立ち退きや接近禁止が含まれます。

子どもが通う保育園や学校は、被害者である監護親が日常的に送迎や行事への参加で訪れる「密接に関連する場所」です。加害者がこれら教育機関に近づくこと自体が保護命令違反(刑事罰の対象)となるため、学校側に保護命令の決定書(正本または写し)を提示することで、学校側も法的根拠を持って引き渡しを拒絶しやすくなります。

2026年改正民法・関連法制を見据えた実務対応

近年の法改正議論や共同親権制度の導入が進む中でも、DVや虐待の恐れがあるケースにおいては、子どもの利益と安全確保が最優先されます。裁判所や弁護士実務においても、DV事案における連れ去り防止措置の重要性は一貫して変わっていません。相手の権利を主張する余地を与えず、迅速に裁判所手続きと教育機関への告知を連動させることが肝要です。

万が一、連れ去りが発生してしまった場合の緊急対処法

細心の注意を払っていても、不慮の事態によって子どもが学校や保育園から連れ去られてしまうケースがあります。そのような事態に直面したときは、パニックにならずに以下の手順で冷静かつ迅速に行動してください。

  • 直ちに110番通報を行う:「配偶者に子どもが連れ去られた」と伝え、緊急配備や警察官の出動を要請します。この際、DVの事実や保護命令の有無を伝えると警察も動きやすくなります。
  • 学校側から状況を詳細に聞き取る:誰が、いつ、どのような状況で子どもを連れ去ったのか(車両のナンバーや向かった方向など)を確認し、記録します。
  • 直ちに弁護士へ連絡する:人身保護請求や審判前の保全処分など、法的手続きによる子どもの早期奪還(監護者の指定および引き渡し請求)に向けた緊急対応を依頼します。

夕陽ヶ丘法律事務所が提供するサポート体制

DVや連れ去りの恐怖に怯えながら、一人で学校や保育園との交渉を行うことは精神的にも大きな負担となります。公的な相談窓口や弁護士会等では、数多くの離婚・DV事案を取り扱ってきた経験豊富な弁護士が、依頼者様の置かれた状況に寄り添い、徹底的なサポートを提供しています。

公的な相談機関や専門窓口では、落ち着いた相談ブースやプライバシーに配慮した面談スペースを完備しており、外部に情報が漏れる心配なく安心してご相談いただけます。

緊急の保護命令申し立て、学校・保育園への警告書面(事前通告書)の作成・送付、さらには別居・離婚に向けた総合的な法的戦略まで、一貫してサポートいたします。子どもの安全と平穏な日常を取り戻すために、どのような些細な不安であっても、まずは法テラスや弁護士会などの公的窓口の弁護士までご相談ください。