共働き夫婦の離婚における財産分与の特殊性
離婚時の財産分与は、婚姻期間中に夫婦が協力して築き上げた財産を原則として2分の1の割合で分ける制度です。かつては「夫が働き、妻が専業主婦」という世帯構造を前提とした協議が多く見られましたが、近年では共働き世帯が多数派を占めています。
共働き夫婦の離婚では、双方に独自の収入があり、それぞれが個別の名義で預貯金や株式、確定拠出年金などを保有しているケースが一般的です。この場合、一方が他方に対して一方的に請求を行うのではなく、お互いの資産を正確に把握し、全体として公平なバランスが保たれているかを確認することが解決の近道となります。
夕陽ヶ丘法律事務所には、「お互いに自立しており、相手の財産を奪うつもりはないが、後々トラブルにならないようきれいに清算したい」というご相談が多く寄せられます。2026年施行の改正民法を見据えても、財産分与の請求権には原則として5年の期間制限(※状況により起算点に注意が必要)が設けられているため、曖昧なまま放置せず、書面できちんと合意を交わしておくことが重要です。
事案の概要:双方同等資産による「金銭授受なし」の模索
ここでは、当事務所が実際にサポートを担当した、共働き夫婦による円満和解の事例をモデルとして解説します。
夫(Aさん・40代・会社員)と妻(Bさん・40代・公務員)は、婚姻期間が約15年で、子どもはいませんでした。双方が正社員として働き、生活費は一定の割合で折半しつつ、個別の余剰資金はそれぞれの名義で管理していました。
離婚の話が持ち上がった際、AさんとBさんの間には以下のような財産が存在していました。
- 夫名義の預貯金:約600万円
- 夫名義の持ち株(上場株式):評価額約400万円
- 妻名義の預貯金:約500万円
- 妻名義の持ち株・投資信託:評価額約500万円
夫婦の総資産額を合計すると、夫側が1,000万円、妻側が1,000万円となり、結果として夫婦双方が保有する共有財産の総額が完全に一致している状態でした。
当事者間での話し合いの難しさと専門家介入の必要性
大まかな総額が同じであっても、株式は価格変動リスクがあり、預貯金とは性質が異なります。そのため、当事者同士の話し合いでは「株の下落リスクを考慮すべきだ」「退職金の評価はどうするのか」といった細かな点で意見が食い違い、感情的な対立に発展しそうになっていました。
そこで、双方が弁護士を代理人に立てるのではなく、夫婦の一方が当事務所に相談に訪れたことを機に、正確な財産査定と法的拘束力のある合意書の作成に向けた手続きがスタートしました。
精密査定のステップ:預金と株式の公平な評価
財産分与において最もトラブルになりやすいのが、財産の「評価基準時」と「隠し財産の有無」です。共働き夫婦の和解を成功させるためには、客観的なデータに基づく精密な査定が欠かせません。
1. 評価基準時の明確化
裁判例上、財産分与の基準時は原則として「別居時」または「口頭弁論終結時(実質的な合意時)」とされています。本事例では、生活が完全に分離した別居時点における残高証明書および証券会社の残高報告書を双方で開示し、基準日の資産価値を固定しました。
2. 流動資産とリスク資産の調整
預貯金は額面通りの価値を持ちますが、株式や投資信託は日々の株価変動によって評価額が変動します。 弁護士が間に入り、別居時の終値ベースでの評価額を算出したうえで、「今後発生する株価の変動リスクはそれぞれの所有者が引き受ける」という条件を明文化しました。これにより、将来的な価格変動をめぐる不毛な言い争いを完全に防ぐことができました。
3. 隠し財産・負債のクリアランス
お互いに相手の収入や預金残高を大まかにしか把握していなかったため、通帳のコピーやネットバンクの画面、証券口座の年間取引報告書などを相互に開示する「財産開示の手続き」を自主的に行いました。その結果、借金やローンなどのマイナス財産がないことも確認され、クリアな状態で清算計算を行うことができました。
「金銭清算なし」で合意に至った法的メカニズム
最終的な財産分与の計算式は以下の通りとなりました。
- 夫の保有資産総額:1,000万円
- 妻の保有資産総額:1,000万円
- 夫婦共有財産の総額:2,000万円
- 一人当たりの正当な取得分(2分の1):1,000万円
お互いの持ち分が正確に1,000万円ずつであったため、「夫は自分の名義の預金・株式(計1,000万円)をそのまま保持し、妻も自分の名義の預金・株式(計1,000万円)をそのまま保持する。よって、双方間における追加の金銭の授受(支払い)は一切行わない」という清算方法が導き出されました。
金銭授受なしのメリット
- 一方が他方に対して多額の現金を支払う必要がないため、資金準備の負担がない
- 銀行振込の手数料や、不動産売却に伴う諸費用・税金が発生しない
- 「お金のやり取り」が生まれないため、相手に対する不満や執着が残りにくい
- 短期間で協議がまとまり、精神的・時間的ストレスが最小限に抑えられる
円満和解を法的に担保する離婚協議書の作成
「お金のやり取りがないから、口約束や簡単なメモでも良いのではないか」と考えてしまう方もいらっしゃいますが、それは非常に危険です。
たとえ金銭の授受が発生しない場合であっても、将来的な紛争を完全に防止するためには、法的効力の高い離婚協議書(できれば公正証書)を作成することが不可欠です。
当事務所が作成をサポートした合意書には、以下の条項を精密に盛り込みました。
- 本合意書に記載された財産以外に、相互に隠し財産や未清算の債権債務が存在しないことの確認(清算条項)
- 互いの保有する預貯金および株式等の所有権がそれぞれの単独帰属であることを確認し、将来にわたって一切の財産分与を請求しない旨の合意
- 万が一、未発見の財産が判明した場合の処理方法
このように、弁護士が法的な抜け漏れのない文面を作成・チェックすることで、離婚後に「やっぱり納得いかないからお金を請求したい」と言った蒸し返しを防ぎ、安心して新しい人生のスタートを切ることが可能となります。
共働き夫婦の離婚をスムーズに進めるための弁護士のアドバイス
共働きでそれぞれが資産を有しているケースは、一見すると話し合いが簡単そうに思えますが、以下のような落とし穴が潜んでいます。
- どちらか一方が相手の資産を過小評価していると疑い、不信感が生まれる
- 財産分与の対象となる時期の認識がズレており、計算が合わなくなる
- 退職金見込額や将来の年金分割についての取り決めが漏れてしまう
夕陽ヶ丘法律事務所では、依頼者様が置かれた状況を丁寧ヒアリングし、感情的な対立を煽ることなく、客観的な数字と法律の基準に基づいた冷静な解決をサポートいたします。相談ブースはプライバシーに配慮した落ち着いた環境を整えておりますので、周囲の目を気にせず安心してご相談いただけます。
共働きで財産の分け方にお悩みの方、お互いの資産をきれいに整理して円満に離婚したいとお考えの方は、ぜひ一度、当事務所の弁護士までご相談ください。
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