離婚原因・基本ルール

配偶者が「刑事事件を起こして逮捕・服役」した場合の離婚請求

大阪弁護士会所属 弁護士 井上正人 監修

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、民法第763条(協議離婚)、第770条(裁判離婚)、第768条(財産分与)、2026年改正民法(共同親権・法定養育費)の規定および多数の離婚・親権・財産分与の実務実績に基づきわかりやすく解説しています。

Q: 配偶者が「刑事事件を起こして逮捕・服役」した場合の離婚請求
A: 配偶者が刑事事件を起こして逮捕・服役した場合、民法上の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し得ます。相手が服役中で話し合いが困難であっても、離婚調停や裁判を通じて離婚請求が可能です。夕陽ヶ丘法律事務所では、面会や書面による交渉、さらには2026年改正民法に基づく財産分与(請求期間が5年に延長)や共同親権を見据えた法的手続きを強力にサポートいたします。

配偶者の逮捕・服役と「法定離婚原因」の関係

結婚生活を送る中で、配偶者が犯罪行為に手を染め、逮捕されたり実刑判決を受けて服役したりするという事態は、残された家族にとって計り知れない衝撃と実害をもたらします。経済的な困窮だけでなく、社会的な信用失墜や精神的な苦痛により、夫婦関係の修復が不可能になるケースは少なくありません。

日本の民法では、夫婦間で離婚の合意がない場合、法律上の法定離婚原因(民法770条1項)がなければ裁判で離婚することができません。配偶者の逮捕や服役は、このうち「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(同項5号)に該当するかどうかが法律上の大きな論点となります。

犯罪行為がすべて離婚原因になるわけではない

配偶者が逮捕されたという事実だけで、自動的にすべての裁判で離婚が認められるわけではありません。裁判所は、以下のようなさまざまな事情を総合的に考慮して判断します。

  • 犯した犯罪の性質、悪質性、社会への影響(殺人、強盗、詐欺、性犯罪などの重大犯罪か、偶発的な軽微な犯罪か)
  • 懲役刑の実刑判決が下され、どの程度の期間の服役が見込まれるか
  • 犯罪によって夫婦間の信頼関係がどの程度完全に破壊されたか
  • 家族(配偶者や子ども)が被った社会的信用や経済的・精神的打撃の大きさ
  • これまでの婚姻期間や、夫婦間のこれまでの関係性

例えば、短期間の執行猶予付き判決で済むような比較的軽微な事件であれば、直ちに「婚姻を継続し難い重大な事由」とは認められないこともあります。しかし、長期の懲役刑となり、家庭を放置する結果となった場合や、家族に危害が及ぶような悪質な事件である場合は、離婚請求が認められる可能性が極めて高くなります。

服役中の配偶者と離婚を進める具体的な手順

配偶者が警察署の留置施設や拘置所、あるいは刑務所に収容されている場合、通常の離婚協議とは異なる手順と配慮が必要になります。当事者間で冷静な話し合いを行うことが物理的・精神的に困難なケースが多いため、段階的な法的手続きを踏むことが重要です。

1. 協議離婚(話し合い)の試み

相手が服役中であっても、手紙(信書)のやり取りや、刑事施設での面会を通じて離婚の合意に向けた話し合いを行うことは法律上可能です。相手が自身の過ちを認め、離婚条件に素直に応じる場合は、離婚協議書を作成し、離婚届を役所に提出することで協議離婚が成立します。

ただし、受刑者との連絡や書面でのやり取りは検閲の対象となることもあり、意思疎通がスムーズにいかない、あるいは相手が離婚を一方的に拒絶して話し合いにならないというケースが多々あります。

2. 離婚調停(家庭裁判所での話し合い)

協議による解決が難しい場合、家庭裁判所に対して離婚調停を申し立てることになります。調停では、裁判所の調停委員が間に入り、双方の主張を調整します。

相手が服役中である場合、調停期日に直接出頭することは物理的に困難です。そのため、家庭裁判所によっては、受刑している刑事施設の職員の協力を得て電話会議システムを利用したり、書面によるやり取りを中心とした特別な配慮のもとで調停手続きが進められます。それでもなお相手が出頭しない、または調停での合意が見込めない場合は、不調(不成立)となり裁判へと移行します。

3. 離婚裁判(訴訟)の提起

調停が不成立に終わった場合、管轄の地方裁判所に離婚訴訟を提起します。裁判において、原告(離婚を求める側)は、配偶者の犯罪行為や服役によって「婚姻を継続し難い重大な事由」が生じていることを客観的な証拠(起訴状、判決文、報道資料、精神科の診断書など)をもって立証します。

相手が刑務所に服役中であっても、訴状や期日の呼出状は適式に刑事施設に送達されます。相手が裁判に出頭せず、答弁書も提出しない場合、原告側の主張がそのまま認められ、早期に勝訴判決を得られるケースもあります。

離婚時に解決すべき重要なお金と子どもの問題

配偶者の逮捕・服役を理由に離婚を進める際には、離婚そのものだけでなく、将来の生活基盤や子どもの権利を守るための諸条件を適切に取り決める必要があります。

財産分与と2026年改正民法の影響

婚姻期間中に築いた財産を分ける財産分与は、離婚成立の日から5年間請求することができます(2026年改正民法により、従来の2年から5年へと期間が延長されました)。

配偶者が逮捕・服役した場合、相手名義の財産状況や隠し資産を把握することが難しくなる傾向があります。また、弁護士費用や損害賠償金の支払いのために夫婦共有財産が勝手に処分されるリスクもあるため、夕陽ヶ丘法律事務所では、財産保全の法的手続きを含めた迅速な調査と請求を行っています。

慰謝料の請求

配偶者が不貞行為(不倫)や暴力(DV)、あるいは重大な犯罪行為によって家庭を崩壊させた場合、精神的苦痛に対する慰謝料請求が認められる可能性があります。

ただし、実務上注意しなければならないのは、配偶者が長期間服役している場合、出所後に十分な収入や資産が期待できないケースが多いという点です。どれほど高額な慰謝料が裁判で認められても、相手に支払い能力(資力)がなければ、実際にお金回収することが困難になる「絵に描いた餅」になりかねません。そのため、離婚時の財産分与とのバランスや、将来の回収可能性を見据えた現実的な戦略が不可欠です。

親権と2026年新法(共同親権・法定養育費)への対応

子どもがいる場合、離婚後の親権をどちらが持つのかは極めて重要な問題です。配偶者が服役中である場合、日常的な監護教育が物理的に不可能であるため、原則として健全な環境にある配偶者(通常は同居親)が単独親権者、あるいは監護者として指定されることになります。

また、2026年施行の改正民法では、離婚後も父母の双方角が親権を持つ「共同親権」の選択肢が導入されていますが、長期の服役や家庭内暴力、育児放棄(ネグレクト)などの事情がある場合は、子どもの利益を最優先に考慮し、単独親権が適切である旨を法的に主張・立証します。

さらに、改正民法で整備された法定養育費(一定の基準に基づく適正な養育費の確保)についても、相手が服役中である現在と、将来出所して就労する見込みの両方を視野に入れた取り決めや強制執行の準備が重要となります。

夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が提供するサポート

配偶者の逮捕・服役という突然のトラブルに直面したとき、精神的なショックや世間体への不安から、一人で悩みを抱え込んでしまう方が少なくありません。しかし、放置していると、相手の家族からの不当な要求や、共有財産の散逸、さらには連絡が取れなくなるという二次的なリスクが拡大するおそれがあります。

夕陽ヶ丘法律事務所では、プライバシーに配慮した落ち着いた相談ブースをご用意し、依頼者様が安心して胸の内を話せる環境を整えています。刑事事件の背景事情や家族法の専門知識を持つ弁護士が、相手方との交渉、調停・裁判手続き、さらには財産分与や親権の確保まで、トータルで法的なサポートを提供いたします。

配偶者の逮捕や服役でお悩みの方は、ぜひ一度、夕陽ヶ丘法律事務所の専門相談をご利用ください。あなたの新しい人生の第一歩を、私たちが力強く支えます。

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