離婚調停や裁判を経て養育費の取り決めをしたものの、いざ支払期日になると「病気で会社を休み、無給状態だから払えない」「怪我で休職中なので傷病手当金しか入らない」と言い訳をして支払いを免れようとする元配偶者は少なくありません。
しかし、本当に相手に支払い能力がないのでしょうか。実は、会社からの給与が止まっていても、健康保険や労災保険から支給される手当金は差し押さえの対象となります。
今回は、相手が病気や怪我で休職中と主張してきた場合の傷病手当金・休業補償の差押えについて、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が実務的な法的知識と具体的な回収手順を分かりやすく解説します。
1. 傷病手当金や休業補償は差押えの対象になるのか?
結論から申し上げますと、健康保険法に基づいて支給される傷病手当金や、労働者災害補償保険法(労災保険)に基づく休業補償給付(休業補償債権)は、いずれも強制執行の対象となります。
給与でなくても債権として差し押さえ可能
強制執行の代表例として給与の差押えが挙げられますが、法律上、金銭の支払いを目的とする債権であれば、原則としてすべて差押えの対象となります。
- 健康保険の傷病手当金:被保険者が病気や怪我で仕事を休んだ際、生活保障として健康保険組合や協会けんぽから支給される給付です。これを受け取る権利(傷病手当金請求権)も立派な財産権です。
- 労災保険の休業補償給付:業務上の災害や通勤災害によって負傷し、療養のために労働することができないために賃金を受けられない場合支給されます。
したがって、「今は働いておらず給料が出ていない」という言い訳は、差し押さえを免れる理由には一切なりません。
2. 差押えを実行する際の重要な注意点と制約
傷病手当金等の差押えは非常に有効な手段ですが、強制執行を行う上では法律上のルールや実務的なハードルが存在します。
「差押禁止債権」の範囲に注意する
生活保護法に基づく保護金品や、恩給などは法律で厳格に差し押さえが禁止されています。しかし、傷病手当金や休業補償は、一般の給与債権と同様に取り扱われます。
給与や退職金、そして傷病手当金などの継続的給付債権を差し押さえる場合、原則として手取り額(または支給額)の4分の1に相当する金額までしか差し押さえることができません(ただし、養育費や婚姻費用などの扶養義務等に関する債権の場合は、2分の1まで差し押さえることが可能です)。
相手の勤務先や保険者を正確に特定する必要がある
債権差押命令を裁判所に申し立てるためには、「誰に対して(第三債務者)」請求するのかを正確に特定しなければなりません。
- 傷病手当金の場合、差押えの相手(第三債務者)は、勤務先そのものではなく、原則として「全国健康保険協会(協会けんぽ)」または各「健康保険組合」、あるいは手当金を経由して支払う事業主となります。
- どこから支給されているのかが不明な場合、過去の源泉徴収票や健康保険証の控え、あるいは弁護士会照会(23条照会)などの法的手続を用いて支給元を突き止める必要があります。
3. 2026年改正民法・関連法制を見据えた養育費回収の強化
近年、養育費の不払い問題は社会的な重大関心事となっており、法制度の整備が進められています。2026年現在、離婚に伴う財産分与の請求期間の変更(民法改正による5年への伸長など)や、国家資格・行政手続きを通じた財産開示手続の実効性向上など、「払わない側」に対して非常に厳しい環境が整いつつあります。
財産開示手続や第三者からの情報提供手続の活用
相手が自分の口座情報や勤務先、受給している手当の状況を隠し通そうとする場合、裁判所を通じて「財産開示手続」や「第三者からの情報提供手続」を利用することが可能です。
これにより、銀行口座の情報や、年金事務所・官公庁・保険者等からの情報を通じて、相手が現在どのような名目でどれだけの収入を得ているかを法的に暴くことができます。
4. 傷病手当金差押えの流れと弁護士に依頼するメリット
実際に傷病手当金や休業補償から未払い養育費を回収するためには、以下のようなステップを踏むことになります。
- 債務名義の取得:まずは公正証書(執行認諾文言付き)や、調停調書、判決などの「債務名義」が手元にあるか確認します。ない場合は、離婚調停や審判、訴訟を提起する必要があります。
- 財産調査・特定:相手が加入している健康保険組合や、勤務先の正確な名称・所在地を特定します。
- 裁判所への申立て:管轄の裁判所に対し、「債権差押命令申立書」を提出します。
- 取立て:裁判所から第三債務者(保険者等)へ差押命令が送達され、相手に支給されるはずの傷病手当金から直接、未払い分を取り立てます。
弁護士に相談・依頼する最大のメリット
病気や怪我を盾に支払いを逃れようとする相手は、書類のやり取りや裁判所からの通知に対しても不誠実な対応をとることが多く、連絡が途絶えがちです。
夕陽ヶ丘法律事務所では、プライバシーに配慮した落ち着いた相談ブースをご用意し、ご依頼者様のお話を丁寧にお伺いいたします。複雑な保険者の特定や、裁判所への強制執行の申し立て手続きを弁護士が代理人としてすべて遂行するため、相手と直接連絡を取る精神的ストレスから解放されます。
「相手が休職中だから仕方がない」と諦めてしまう前に、まずは当事務所の弁護士までお気軽にご相談ください。あなたの正当な権利を守り、確実に養育費を回収するための最適な法的戦略をご提案いたします。
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