離婚に向けた別居や協議を始めた途端、配偶者が突然「会社の業績悪化」を理由に役員報酬を引き下げるケースがあります。相手が自社経営者や取締役である場合、自身で給与額をある程度コントロールできるため、支払うべき婚姻費用(生活費)を意図的に抑え込もうとする悪質な工作です。
このような不当な減額に対して泣き寝入りしてしまうと、本来受け取れるはずの生活費が大幅に減少し、その後の離婚条件や財産分与の交渉においても不利な立場に追い込まれてしまいます。本記事では、会社役員である配偶者による不自然な報酬減額の実態と、それを法的に阻止して正当な婚姻費用を確保するための具体的な対策を弁護士が詳しく解説します。
なぜ配偶者は役員報酬を意図的に減額するのか
離婚や別居に際して支払う義務が生じる婚姻費用は、原則として「義務者と権利者の双方の現在の収入(直近の源泉徴収票や確定申告書の所得)」をベースに、裁判所の算定表を用いて算出されます。
配偶者が会社員や公務員であれば、給与を恣意的に操作することは極めて困難です。しかし、相手が同族会社の経営者や取締役、あるいは大株主である場合、次のような手段を用いて意図的に見かけ上の所得を減らすことが物理的に可能です。
- 株主総会の決議や取締役会の決定により、自身の役員報酬を一方的に引き下げる
- 自社への経営指導料やコンサルタント料などの名目を変更・休止する
- 意図的に会社の経費を増やし、会社の利益や自身の役員への配分を圧縮する
これらは一見すると「会社の業績悪化に伴う合法的な経営判断」に見えるため、一般の方が個人の交渉だけで不当性を見破り、反論することは非常に困難です。
「不自然な減額」を法的に見破るためのアプローチ
夕陽ヶ丘法律事務所には、経営者や個人事業主の離婚案件における資産隠しや意図的な所得操作を見破ってきた豊富な実績があります。裁判所や相手方に対して、見かけ上の低収入を鵜呑みにさせず、本来の収入を認定させるためには、客観的な証拠を集めた多角的なアプローチが必要です。
過去の所得推移との比較・分析
最も強力な証拠となるのは、離婚や別居を切り出す直前までの所得実績です。別居のタイミングと同時、あるいはその直前に急激に役員報酬が下がっている場合、その因果関係に強い疑いが生じます。
過去3年〜5年分の確定申告書、決算書、源泉徴収票を取り寄せ、不自然なタイミングでのみ報酬が下がっている事実を時系列で整理し、客観的な不当性を浮き彫りにします。
法人の経営実態と資金繰りの確認
「会社の業績悪化」が減額の理由として主張される場合、本当に会社全体の業績が悪化しているのか、あるいは役員である配偶者の報酬だけが都合よく引き下げられているのかを精査します。
同族会社の場合、経営者自身の判断で利益を内部留保に回したり、意図的に売上を次年度に繰り延べたりすることが可能です。法人の決算書における売上高、営業利益、内部留保、役員貸付金や借入金の動きを弁護士の調査権や裁判所の手続きを通じて検証し、会社に十分な支払い能力があることを証明します。
潜在的稼働能力(潜在的収入)に基づく請求
裁判実務において、自らの意思やコントロールによって収入を減少させた場合、その減少分は「正当な理由による減収」とは認められません。
最高裁判所の判例や審判実務でも、自発的に高収入の職を辞した場合や、意図的に稼働能力を低下させた場合には、本来得られるはずの「潜在的な収入(稼働能力)」を基準にして婚姻費用を算定すべきであるという判断が広く採用されています。
役員報酬の意図的な減額についても同様の法理が適用されます。配偶者が自らの都合で報酬を下げたとしても、これまでの実績や会社の規模、保有するスキルに照らし合わせれば「本来得られるはずの適正な報酬額」が存在します。私たちは、この潜在的収入をベースにした婚姻費用の支払いを強く主張します。
2026年改正民法とこれからの離婚実務への影響
2026年に施行される改正民法(共同親権の導入や法定養育費の整備など)の議論が進む中、離婚前後の子の養育環境や経済的基盤の安定化に対する社会的・法的要請はますます高まっています。
婚姻費用や養育費は、子どもを監護する親と子が人間らしい生活を維持するために不可欠な権利です。義務者が自らの保身や財産隠しのために収入を操作する行為は、法秩序の観点からも厳しく制限されるべきものであり、近年の裁判実務でもペナルティを含めた厳格な判断が下される傾向にあります。法改正の潮流を的確に捉え、最新の裁判例に裏打ちされた主張を展開することが不可欠です。
不当な減額に対抗するための具体的なステップ
配偶者の不審な減額工作に対抗し、適正な婚姻費用を確実に受け取るためには、以下のステップを踏んで冷静かつ迅速に行動することが重要です。
- 早めに収入資料を確保する:別居前や交渉初期の段階で、相手の源泉徴収票、確定申告書、給与明細、会社の決算書などのコピーを手元に残しておく。
- 感情的なやり取りを避ける:SNSやメッセージアプリ等で「給料を下げただろう」と感情的に追及すると、相手に警戒され証拠を隠滅される恐れがある。
- 弁護士による財産調査・証拠保全を活用する:必要に応じて弁護士会照会や裁判所の手続きを利用し、法人の財務状況や正確な所得データを強制的に開示させる。
- 調停・審判の手続きを申し立てる:話し合いでの解決が不可能な場合は、速やかに家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立て、裁判所を通じて適正額を認定してもらう。
夕陽ヶ丘法律事務所では、落ち着いた相談ブースやプライバシーに配慮した面談スペースをご用意し、ご相談者様が安心して本音を話せる環境を整えています。複雑な企業の財務データや税務の知識が絡む事案であっても、専門的な知見を持つ弁護士が強力にサポートいたします。
まとめ
相手が会社の役員報酬を意図的に減額して婚姻費用を免れようとする行為は、決して許されるものではありません。見かけ上の数字に惑わされず、過去の所得実績や法人の経営実態を緻密に分析することで、本来の適正な生活費を取り戻すことは十分に可能です。
「会社の売上が下がったから払えない」と言われてお悩みの方、あるいは相手の収入に不自然な点を感じている方は、一人で悩むことなく、ぜひ当事務所の弁護士にご相談ください。あなたの正当な権利と平穏な未来を守るため、私たちが全力で法的サポートを提供いたします。
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