離婚調停の場で、相手側の意見ばかりが尊重されているように感じたり、担当の調停委員から威圧的な態度をとられたりして、強いストレスを抱えてしまう方が少なくありません。
「このままでは自分の主張が通らないのではないか」「自分ばかりが不利に扱われている」と感じたとき、どのように対処すべきなのでしょうか。
本記事では、調停委員が不公平だと感じた場合の具体的な対処法として、書記官や裁判官への不服申し立て(上申書の提出)や、担当委員の変更手続きについて、法律実務の観点から詳しく解説します。
離婚調停における調停委員の役割と限界
調停委員は、裁判官とは異なり、あくまで当事者間の話し合いを仲介する第三者的な立場にあります。裁判官のように強制的に判決を下す権限はありませんが、双方から交互に事情を聴き、事件の解決案を提示する重要な役割を担っています。
なぜ調停委員が「偏っている」と感じるのか
調停の現場では、以下のような理由から「偏っている」と感じるケースが多く見受けられます。
- 話の腰を折られたり、頭から否定されたりするように感じる発言をされた
- 相手側の涙や感情的な訴えに同調し、こちらの論理的な主張を軽視された
- 「まあまあ、今回は譲歩してはどうですか」と、一方的な妥協を強いられた
これらは、調停委員が早期の合意成立(調停成立)を目指すあまり、硬直した見解を持ってしまっている場合に起こりやすい現象です。しかし、これが度を超えている場合や、あからさまな偏見に基づく場合は、正当な手段で是正を求める必要があります。
書記官・裁判官への不服申し立て(上申書)の実務
調停委員の不適切な言動や、客観性を欠く進行に対して不満がある場合、感情的にその場で怒りをぶつけるのは逆効果です。冷静に事実を記録し、担当書記官や裁判官にアプローチするのが正しい手順となります。
上申書(じょうしんしょ)の活用
調停委員に対する不服や、調停の進行に関する意見を申し入れるための最も一般的な書面が「上申書」です。
- 感情論を排除する:「態度が悪い」「嫌いだ」といった主観的な不満ではなく、「いつ、どのような発言があり、それがどのように調停の公正な進行を妨げているか」を客観的に記載します。
- 書記官を経由して裁判官に提出する:上申書は直接調停委員に渡すのではなく、裁判所の担当書記官に提出し、事件を担当する裁判官に読んでもらいます。
- 裁判官の指導を仰ぐ:裁判官から調停委員に対して、中立公正な進行を行うよう注意・指導が行われるケースがあります。
調停委員の交代(担当変更)の申し立ては可能か?
「どうしても同じ調停委員とは話したくない」「これ以上担当を続けられると公正な判断が期待できない」という場合、調停委員の交代を申し立てることは可能なのでしょうか。
法的性質とハードルの高さ
法律上、調停委員の選任や変更は裁判所の裁量事項とされています。そのため、以下のような事情がない限り、単に「相性が悪い」「自分の意見に反対する」という理由だけでは交代が認められにくいのが実情です。
- 調停委員が当事者に対して差別的な発言や侮辱的な言動を行った場合
- 明らかに一方の当事者と個人的な利害関係や知人関係があることが発覚した場合
- 健康上の理由などで、これ以上の公正な職務執行が困難と認められる場合
ただし、書記官や裁判官に対して適切な事実関係を伝え、これまでの調停記録や上申書の内容から「円滑かつ公正な手続の進行に支障が生じている」と判断されれば、事実上の担当替えや委員の増員といった柔軟な対応がなされるケースもあります。
調停から審判・裁判へ移行するという選択肢
調停委員の偏りがどうしても修正されず、このままでは不利益な条件で合意させられてしまうと感じる場合は、「調停の取下げ」や「不成立(審判・訴訟への移行)」を視野に入れることも重要です。
2026年現在、離婚や財産分与、親権に関する法改正(共同親権の導入や財産分与請求権の期間伸長など)が進む中、調停段階での安易な妥協は、将来的に取り返しのつかない不利益をもたらすおそれがあります。
- 調停不成立の選択:話し合いによる解決が不可能と判断された場合、調停は不成立となり、自動的に離婚裁判(訴訟)へと移行します。裁判になれば、感情を交えず、法と証拠に基づいた厳格な審理が行われます。
- 代理人弁護士の同席:弁護士が代理人として調停に同席している場合、不当な圧力や偏った進行に対して、その場で法的な観点から毅然と抗議することができます。
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