離婚手続き・調停・裁判

離婚に伴う「自動車の名義変更(移転登録)」と陸運局での手続き

大阪弁護士会所属 弁護士 井上正人 監修

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、民法第763条(協議離婚)、第770条(裁判離婚)、第768条(財産分与)、2026年改正民法(共同親権・法定養育費)の規定および多数の離婚・親権・財産分与の実務実績に基づきわかりやすく解説しています。

Q: 離婚に伴う「自動車の名義変更(移転登録)」と陸運局での手続き
A: 離婚時に車を夫から妻(または妻から夫)へ譲る場合、速やかに陸運局で移転登録(名義変更)を行う必要があります。車検証の名義が古い所有者のまま放置されると、自動車税の納税通知書が届き続けたり、万が一の事故の際に大きなトラブルに発展したりします。夕陽ヶ丘法律事務所では、財産分与の合意形成から、ローン残債の処理、陸運局での必要書類の集め方まで総合的にサポートいたします。

離婚の話し合いにおいて、マイホームや預貯金と並んで大きな争点になりやすいのが自動車の取り扱いです。夫婦のどちらが車を所有し、どのように名義を変更するのかは、実生活に直結する重要な問題です。

特に、車検証上の名義が元配偶者のままで放置されていると、予期せぬ法的トラブルに巻き込まれるリスクがあります。本記事では、離婚に伴う自動車の名義変更(移転登録)の必要性、陸運局での具体的な手続き、そしてローン残債がある場合の解決策について、法律の専門家の視点から詳しく解説します。

離婚時の自動車名義変更を放置するリスク

離婚が成立すると、精神的にも疲弊し、役所や金融機関での手続きだけで手一杯になりがちです。しかし、車検証の名義変更(移転登録)を怠ることは、将来的に大きなリスクを生む原因となります。

自動車税の納税義務とトラブル

自動車税は、毎年4月1日時点での車検証上の「所有者」に対して課税されます。離婚によって実際に車を手放した側(あるいは使用しなくなった側)の名義のままになっていると、翌年度以降も前夫や前妻のもとに納税通知書が届き続けることになります。

口頭で「税金は乗る方が払う」と約束していても、実際に支払われなければ税務署からの督促は名義人に行われます。こうした金銭トラブルを防ぐためにも、離婚成立後は速やかに名義を変更することが不可欠です。

交通事故や違反に関する責任問題

名義変更をしない最大の法的リスクは、交通事故が発生した際の責任の所在です。運行供用者責任などの観点から、名義人が事故の損害賠償請求をされる可能性が完全にゼロとは言い切れません。また、違法駐車の放置車両とみなされた場合にも、名義人に対して連絡や処分が及ぶことになります。

陸運局で行う「移転登録」の基本知識

自動車の名義を変更する正式な手続きを移転登録と呼びます。管轄の運輸支局(いわゆる陸運局)に書類を提出し、新しい車検証の交付を受ける必要があります。

手続きを行う場所と管轄

移転登録は、新しく所有者となる人(新使用者・新所有者)の住所地を管轄する運輸支局または自動車検査登録事務所で行います。転居などを伴う場合は、管轄が変わる点に注意してください。

必要となる主な書類一覧

一般的な個人間の売買や譲渡、および離婚に伴う財産分与による移転登録では、以下の書類が必要となります。

  • 新所有者の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
  • 新所有者の実印(または署名)
  • 新使用者の住所を証明する書面(住民票など。所有者と使用者が同じ場合は印鑑証明書で兼ねることも可)
  • 旧所有者の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
  • 旧所有者の実印が押された譲渡証明書
  • 旧所有者の委任状(代理人が申請する場合や、当事者が揃わない場合)
  • 車検証(自動車検査証)(有効期限内のもの)
  • 自動車保管場所証明書(車庫証明書)(警察署で取得したもの。概ね発行後1ヶ月以内)
  • 手数料納付書・自動車税申告書など(陸運局窓口で入手可能)

離婚の話し合いがこじれている場合、旧所有者である元配偶者から「譲渡証明書」や「印鑑証明書」への協力を得ることが難しくなるケースが少なくありません。そのため、離婚協議書や調停調書を作成する段階で、自動車の名義変更に関する協力義務を明文化しておくことが実務上極めて重要です。

ローン残債がある場合の「所有権留保」の解除

自動車を購入する際、ディーラーや信販会社のオートローンを利用している場合、車検証の「所有者」欄にはローン会社やディーラー名が記載されていることがあります。これを所有権留保と呼びます。

所有権留保がついている車は、ローンの返済が完了するまで、原則として勝手に名義変更をすることができません。

ローン残債が車の価値を下回る場合(アンダーローン)

車の時価評価額が、残りのローン残高よりも高い状態をアンダーローンと言います。この場合、以下のいずれかの方法で解決を図ります。

  • 車を売却して現金化し、ローンを完納した残余財産を夫婦で分配する
  • 車を引き取る側が残りのローンを一括返済、または継続して支払う旨を合意し、ローン会社の承諾を得て名義変更を行う

ローン残債が車の価値を上回る場合(オーバーローン)

車の評価額よりもローン残債の方が多いオーバーローンの状態では、名義変更や財産分与の計算が複雑になります。車に乗り続けたい側がローンを単独で引き受けることになりますが、信販会社の審査や同意が必要となるため、勝手に名義を書き換えることはできません。

このような法的な複雑さが伴うケースでは、自己判断で動く前に、離婚問題に精通した弁護士へご相談いただくことを強くおすすめします。

財産分与における自動車の評価方法

婚姻期間中に購入した自動車は、原則として夫婦の共有財産とみなされ、財産分与の対象となります。

自動車の価値(評価額)の算定基準

自動車の価格は日々変動するため、どの時点の価値を基準にするかが問題となります。一般的には、別居時または離婚成立時の市場価格(査定価格)を基準とします。

査定を行う際は、大手買取業者による複数社の査定書を取得するか、オートガイド社が発行する「レッドブック(自動車価格月報)」などを参考に客観的な価値を算出します。

実務における財産分与の具体例

例えば、車の査定額が150万円で、ローン残債がないケースを考えてみましょう。

夫が車を取得する場合、妻に対して財産分与としてその半額にあたる75万円を支払うことで、財産の清算を行います。この際、車という現物と現金をどのように組み合わせるかは、夫婦双方の話し合いによって柔軟に決定することができます。

夕陽ヶ丘法律事務所では、落ち着いた相談ブースやプライバシーに配慮した面談スペースをご用意しております。自動車の名義変更に関する法的な疑問や、ローン会社との交渉、離婚条件全般に関するご不安がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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