財産分与・住宅ローン・預金

離婚時に「ペット(犬・猫等)」はどちらの所有になるか?購入費・飼育費

大阪弁護士会所属 弁護士 井上正人 監修

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、民法第763条(協議離婚)、第770条(裁判離婚)、第768条(財産分与)、2026年改正民法(共同親権・法定養育費)の規定および多数の離婚・親権・財産分与の実務実績に基づきわかりやすく解説しています。

Q 離婚する際、ペット(犬や猫)の所有権は法律上どう決まりますか?購入費や今後の飼育費も請求できますか?
A 【法的判断基準】法律上、ペットは「物(動産)」として扱われ財産分与の対象となります。所有権は、婚姻前からの飼育(特有財産)か、購入時の資金負担、および日頃の主たる世話(監護実績)を総合して決定されます。購入費や今後の飼育費については、財産分与の清算や離婚条件の話し合いの中で取り決めることになります。
【弁護士による解決】感情的になりやすいペットの引き取り問題では、単なる物の分配を超えた柔軟な協議が求められます。弁護士などの専門家が代理人として交渉することで、客観的な証拠に基づく納得のいく解決や、面会交流的な取り決めの合意を円滑にサポートします。

離婚におけるペットの法律上の位置づけ

家族の一員として大切に育ててきたペットですが、日本の法律上、犬や猫などの愛玩動物は「物(動産)」として扱われます。そのため、離婚に際しては夫婦の共有財産の一つとして、どちらが引き取る(所有権を持つ)かを決める必要があります。

人間の子供のように「親権」や「面会交流」の概念がそのまま適用されるわけではありませんが、近年の家事調停や裁判の実務においては、ペットが持つ特別な存在価値を考慮し、単なる家具や家電の分配とは異なる柔軟な話し合いが模索される傾向にあります。

夕陽ヶ丘法律事務所には、ペットの引き取りを巡るトラブルで多くのご相談が寄せられています。感情的な対立になりやすい問題だからこそ、法的な整理と冷静な協議が不可欠です。

ペットの所有権はどのように決まるのか

離婚時にどちらがペットを引き取るか(所有権を確定するか)については、主に以下の判断基準が用いられます。

  • 婚姻前からの飼育か、婚姻中の取得か:婚姻前に一方が購入し連れてきたペットであれば、原則としてその人の「特有財産」となり、離婚後もそのまま引き取る権利があります。婚姻中に購入した場合は、原則として「共有財産」となります。
  • 購入時の資金負担:どちらの口座からペットの購入費や生体代が支払われたかも重要な要素となります。
  • 日頃の主たる世話(監護実績):散歩、通院、エサやり、しつけなど、日常的にどちらが中心となってペットの世話をしていたかが重視されます。ペットの福祉(幸福な生活環境)の観点からも、実際の世話を担ってきた側に引き渡すことが合意されやすくなります。

血統書の名義やマイクロチップ登録の効力

ペットの購入時における契約書、血統書の名義、あるいは自治体等へのマイクロチップ登録情報は、所有権を証明するための強力な手がかりとなります。

ただし、これらは絶対的なものではありません。たとえば「名義は夫だが、毎日の散歩や通院、医療費の支払いは一貫して妻が行っていた」というような場合、実質的な飼育者としての実績が優先され、妻側の所有権が認められるケースも少なくありません。

購入費・飼育費の清算と財産分与

ペットを「物」として財産分与の対象にする場合、経済的な価値の精算も問題になります。

  • 購入費用の評価:ペットは時間の経過とともに価値が変動するため、高額な血統書付きの犬や猫であっても、離婚時点での経済的価値(時価)を算出することは困難なケースが多いです。そのため、購入時の代金を基準にするか、あるいは金銭的価値の清算よりも「ペットの引き渡し」を優先して話し合うことが一般的です。
  • 将来の飼育費の請求:子供の養育費のように、法律上ペットに対する「養育費」の支払義務が明確に定められているわけではありません。しかし、夫婦間の離婚協議において、一方の経済的負担を軽減するために「毎月一定額を飼育費として分担する」という合意を公正証書などの形で残すことは実務上可能です。

話し合いがまとまらない場合の解決方法

ペットの引き取りを巡り、夫婦双方が「絶対に手放したくない」と主張して協議が平行線をたどるケースは少なくありません。

家庭裁判所の調停や審判においても、ペットの所有権に関する争いは持ち込まれますが、裁判所がペットの「面会交流」や「監護者指定」の審判を直接下すことは法的に困難なのが現状です。そのため、弁護士を代理人として立て、以下のような実務的な落としどころを探るのが効果的です。

  • 一方がペットの所有権と引き取りを完全に取得する代わりに、他の財産分与(預貯金や自宅の持分など)の分配割合で調整を行う。
  • 離婚後も一定期間ごとにペットを互いに預かる「共同飼育」の合意は、破綻リスクが高いため推奨されませんが、柔軟な面会のルールを私的合意として書面に残すことは検討に値します。

ペットとの平穏な新生活を守るために

離婚は人間関係の大きな転換点ですが、言葉を話せないペットにとっても生活環境が激変する大きなストレスとなります。どちらが引き取るべきか、購入費やこれからの飼育費をどう分担するかは、感情論を排して法的な根拠と証拠を整理しながら進めることが成功の鍵となります。

公的な相談窓口や弁護士会等では、依頼者様の気持ちに寄り添いながら、ペットの幸せと適正な財産分与の両立に向けた具体的なサポートを行っております。ペットの将来についてお悩みの方は、ぜひ法テラスや弁護士会などの公的窓口の相談ブースまでお気軽にご相談ください。