共働き夫婦の離婚と住宅ローン「ペアローン」の壁
共働き世帯の増加に伴い、マイホーム購入の際に夫と妻の双方が主債務者となる「ペアローン」を利用するケースが急増しています。お互いの収入を合算することで借入額を増やせるメリットがある一方で、離婚の際には非常に複雑な法的問題を引き起こす要因となります。
ペアローンの本質は、夫が借りたローンと妻が借りたローンの二本が別々に存在し、お互いが相手のローンの「連帯保証人」になっているという点です。そのため、離婚してどちらか一方が家を出たとしても、連帯保証人としての責任は自動的には消滅しません。
夕陽ヶ丘法律事務所にも、「離婚後も元配偶者のローンの連帯保証が外れず、再婚や新たな住宅購入に支障が出ている」というご相談が後を絶ちません。こうした複雑な債務関係を根本から解決するための最も確実な手段が、「不動産売却による完全一完済清算」です。
【解決事例】ペアローン物件を売却し、完全完済・利益折半を果たしたAさんご夫妻
ここで、当事務所が実際に関与した、ペアローンを売却によって美しく清算した具体的な解決事例をご紹介します。
相談時の状況と課題
ご相談にいらしたのは、結婚5年目で離婚を決意された共働きのご夫婦(共に30代・会社員)です。 都内に購入したマンションの住宅ローンは、夫が3,000万円、妻が2,000万円のペアローン形式でした。
- 不動産の査定価格: 5,500万円
- ローンの残債合計: 4,800万円(夫2,900万円、妻1,900万円)
- 課題: 夫も妻も「どちらか一方が住み続けながら相手のローンを引き受ける(名義変更や借換え)」ことを希望したものの、単独の収入では金融機関の審査が通らず頓挫。お互いに相手の連帯保証人になっている状態を一日も早く解消したいと希望されていました。
弁護士による介入と解決へのプロセス
夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が受任後、速やかに以下のステップで法的手続と売却実務を主導しました。
- ステップ1:共有物分割に関する合意書の締結
夫婦間で「自宅を速やかに市場価格で売却し、その代金から諸経費を控除した上で、残債を全額一括返済する。売却益が発生した場合は寄与度(収入比率等ではなく協議による合意)に基づき折半する」旨の公正証書を見据えた合意書を締結しました。 - ステップ2:任意売却・一般売却のコーディネート
信頼できる提携不動産業者を選定し、オープンルーム等を実施して適正価格(5,500万円)での買い手を早期に発見しました。 - ステップ3:金融機関との抵当権解除交渉
決済日に売却代金が買い手から一括して振り込まれると同時に、夫のローン(2,900万円)と妻のローン(1,900万円)の残債全額が金融機関に自動返済されるスキームを構築。これにより、不動産に設定されていた共同抵当権および相互の連帯保証契約を完全に消滅させました。 - ステップ4:残余財産の分配
売却代金から仲介手数料や登記費用、税金を差し引いた残金(約500万円の売却益)を、夫婦間で50%ずつ(各約250万円)公平に分配し、金銭的清算を完全に完了させました。
この結果、双方が一切の残債や連帯保証リスクを引き継ぐことなく、クリーンな状態で新しい人生をスタートさせることができました。
2026年改正民法・財産分与ルールの観点から見るペアローン清算の重要性
離婚時の財産分与を巡る法制度は、2026年施行の改正民法および近年の裁判例の動向により、より合理的な解決が求められるようになっています。
財産分与請求権の除斥期間(5年)への注意
改正民法下でも、離婚時の財産分与請求権には、離婚成立の時から5年という除斥期間(時効のようなもの)が定められています。 「とりあえず離婚だけを先行させ、住宅ローンや不動産の処置は後で話し合おう」と放置していると、5年が経過した瞬間に相手に対して財産分与や売却代金の精算を法的に請求できなくなります。 ペアローンを抱えたまま離婚する場合は、必ず離婚成立時またはその前後において、不動産の処分方法を明確に書面化しておく必要があります。
アンダーローンとオーバーローンの法的評価
不動産の価値がローンの残債を上回る状態を「アンダーローン」、逆にローンの残債が不動産の価値を上回る状態を「オーバーローン」と呼びます。
- アンダーローンの場合: 今回の事例のように、売却代金でローンを完済した後に残る「売却益(プラスの財産)」は、婚姻期間中の協力度合いに応じて財産分与の対象となります。実務上は、共働きで双方が返済を分担していた場合、50%ずつの折半が最も合理的な着地点となりやすい傾向があります。
- オーバーローンの場合: 売却してもローンが残ってしまう場合はさらに厄介です。残ったマイナスの負債(アンダーローン部分)をどちらがどのように負担するのか、あるいは債務超過分の補填をどうするかについて、弁護士を交えて厳密に協議しなければなりません。
弁護士に依頼するメリット:感情的対立を防ぎ、確実な金銭清算を実現する
ペアローンの売却清算は、単なる不動産売買の契約ではありません。夫婦間の財産分与の合意、金融機関との複雑な残債一括返済の調整、そして将来の法的紛争の予防が一体となった高度な法務手続きです。
当事者同士で話し合おうとすると、「自分が多く返しすぎた」「相手のせいで家を手放すことになった」といった感情的な対立が生まれやすく、話が頓挫してしまいます。
夕陽ヶ丘法律事務所では、落ち着いた相談ブースやプライバシーに配慮した面談スペースをご用意し、依頼者様のお話を丁寧にお伺いいたします。法的な公平性と客観的なデータに基づき、相手方との交渉から不動産会社・金融機関との折衝までをワンストップで代行します。
「自分のケースではいくらの売却益が出るのか」「相手が売却に非協力的だがどうすればよいか」など、ペアローンに関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度、当事務所の法律相談をご利用ください。あなたの未来の平穏を守るため、最適な解決策をご提案いたします。
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