親権・監護権・面会交流

母親が「精神疾患(うつ病・適応障害)」を抱えている場合の親権の行方

大阪弁護士会所属 弁護士 井上正人 監修

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、民法第763条(協議離婚)、第770条(裁判離婚)、第768条(財産分与)、2026年改正民法(共同親権・法定養育費)の規定および多数の離婚・親権・財産分与の実務実績に基づきわかりやすく解説しています。

Q: 母親が「精神疾患(うつ病・適応障害)」を抱えている場合の親権の行方
A: 精神疾患があるという事実だけで親権が自動的に否定されることはありません。裁判所が最優先するのは「現在の監護実績」と「将来の養育環境(サポート体制)」です。医師の診断書や通院・服薬による症状コントロール、実家等の協力体制を客観的に立証できれば、母親側が親権を獲得することは十分に可能です。お一人で悩まず、実績ある弁護士にご相談ください。

離婚を考えたとき、母親側にとって最も大きな不安要素の一つが「自分に精神疾患(うつ病や適応障害など)があることで、子どもを手元に置けなくなるのではないか」という恐れです。

夫側から「病気の母親に育児は無理だ」「親権を渡せ」と強く主張され、精神的に追い詰められてしまう方も少なくありません。

しかし、法的判断において、病気という事実そのものが親権者の不適格性を意味するわけではありません。

弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所の代表弁護士 井上正人及其び所属弁護士が、精神疾患を抱える母親の親権問題について、法的な実務基準と具体的な対処法を解説します。

裁判所が親権判断で最も重視する「子の利益」とは

離婚時および離婚後の親権者を定めるにあたり、裁判所や家庭裁判所調査官が厳格に審査する基準は、法的に「子の利益(福祉)」と呼ばれる概念です。

父親であれ母親であれ、どちらが親権を持つことが子どもの健やかな成長にとって最も望ましいかという観点で総合的に判断されます。

病名や診断書の有無だけで決まるものではない

「うつ病」「適応障害」「パニック障害」といった診断名がついていること自体を理由に、裁判所が母親としての適性を否定することはありません。

現代社会においては、多くの人が様々な程度の精神的な不調や疾患を経験しながら、適切な治療や服薬を続けつつ社会生活や育児を営んでいます。

法律上問われるのは、その病名そのものではなく、「その疾患が具体的な子育てにどのような支障を及ぼしているか、あるいは及ぼしていないか」という実態面です。

これまでの「主たる監護者(プライマリ・ケアテイカー)」の原則

日本の家事裁判実務では、これまでの子育てにおいて、どちらの親が主に食事の用意、衣類の世話、寝かしつけ、保育園・学校の送迎などの日常的なケアを担ってきたかを極めて重視します。

これを「主たる監護者の原則」と呼びます。

離婚協議や調停に至るまで、たとえ母親が通院中であっても、実質的にすべての育児を母親が一手に引き受けてきたのであれば、その監護実績は非常に強力な法的優位性となります。

精神疾患がある母親が親権を争う際の重要な3つの評価ポイント

家庭裁判所の調査官は、家庭訪問や面接調査を通じて、母親の心身の状態と養育環境を多角的に調査します。

以下の3点が、親権判断における核心的なポイントとなります。

  • 症状のコントロールと治療への取り組み姿勢:医師の指示通りに通院し、服薬やカウンセリングを受けながら、自らの心身の波を自覚して適切に対処できているか。
  • 日常生活における育児の遂行能力:食事の提供、衛生的な住環境の維持、子どもの心身のケアが日常的に行えているか。
  • 周囲のサポート体制(セーフティネット)の有無:母親一人で抱え込むのではなく、実家の両親やきょうだい、公的な福祉サービスなどの協力を得られる環境があるか。

「完璧な育児」よりも「柔軟な助けを借りる力」

精神疾患を抱えていると、「自分が完璧に育児をこなさなければならない」とプレッシャーを感じてしまいがちです。

しかし、裁判所が評価するのは「一切の不調がない状態」ではなく、「不調が生じた際に、子どもを危険にさらさず、速やかに周囲のサポートを導入して安全な環境を維持できる危機管理能力」です。

実家の母親(子どもの祖母)が近くに住んでいて日常的にサポートに入ってくれる体制や、民間のサポートサービスを上手に活用している事実こそが、かえって堅実で子ども思いの親であるという評価につながります。

夫側から「精神疾患」を理由に攻撃された場合の法的防衛策

別居時や調停の席において、夫側が妻の通院歴や過去のメンタル不調のカルテ、メモなどを持ち出し、「母親は精神的に異常だから子どもを近づけてはならない」と攻撃してくるケースが後を絶ちません。

このような理不尽な攻撃に対しては、冷静かつ論理的な法的反論が必要です。

1. 医療記録の客観的な整理と診断書の活用

夫側の主観的な「病気だから育児ができない」という主張に対し、主治医の意見書や診断書を活用します。

「現在の病状は安定しており、適切な治療のもとで日常の育児に支障はない旨」を医師に記載してもらい、裁判所に提出することで、夫側の誇張された主張を法的に封じ込めることができます。

2. 違法な証拠収集への警戒と対応

妻の承諾なしに医療カルテやプライベートな日記を持ち出す行為や、発作時の一瞬をスマートフォンで隠し撮りして「育児放棄(ネグレクト)」であるかのように見せかける行為は、プライバシー権の侵害やモラハラに該当する可能性があります。

当事務所では、こうした夫側の不当な証拠に対して適切に法的異議を申し立て、真の養育環境に基づいた公平な判断を促します。

2026年改正民法を踏まえた今後の親権・監護のあり方

2026年に施行される改正民法では、離婚後の「共同親権」の選択肢が導入されるなど、家族法制に大きな変革がもたらされています。

しかし、共同親権が導入されたからといって、DVやモラハラ、あるいは一方的な親権の奪い合いが許容されるわけではありません。

むしろ、事案によっては協議が調わない場合に家庭裁判所が単独親権を定めるケースや、共同親権であっても実際の監護者(監護権者)をどちらにするかが極めて重要な実務的争点となります。

精神疾患がある母親にとって、改正民法下でも「子どもと実際に暮らして日々の養育を担う監護権」を確実に確保することは、生活の安定を守る上で不可欠です。

母親が安心して子どもと暮らすために弁護士にできること

精神疾患を抱えながら離婚や親権の争いに直面している方は、心身ともに大きなプレッシャーを感じていらっしゃることでしょう。

「本当に子どもを手元に残せるのだろうか」という不安を抱えたまま、夫側と直接交渉することは、病状の悪化を招くリスクすらあります。

弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所では、ご相談者様のプライバシーに最大限配慮した落ち着いた相談ブースをご用意し、丁寧にお話を伺います。

夫側との交渉の窓口をすべて弁護士が引き受けることで、ご相談者様は日々の療養と育児に専念できる環境を取り戻すことができます。

精神疾患を理由に大切な我が子を手放してしまう前に、まずは一度、離婚・親権問題に精通した当事務所の弁護士へご相談ください。

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