親権・監護権・面会交流

子どもが「親権者以外の親と暮らしたい」と言い出した場合の15歳以上の審理

大阪弁護士会所属 弁護士 井上正人 監修

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、民法第763条(協議離婚)、第770条(裁判離婚)、第768条(財産分与)、2026年改正民法(共同親権・法定養育費)の規定および多数の離婚・親権・財産分与の実務実績に基づきわかりやすく解説しています。

Q: 子どもが「親権者以外の親と暮らしたい」と言い出した場合の15歳以上の審理
A: 15歳以上の子どもが親権者以外の親と暮らしたいと希望した場合、家事事件手続法により家庭裁判所は必ず子どもの陳述を聴取しなければなりません。この年齢の子どもの意向は事実上の判断材料を超えて非常に強い法的な拘束力を持ちます。ただし、子どもの自立心や一時的な感情に流されていないか、これまでの監護状況や今後の養育環境を総合的に考慮して判断されるため、法的な裏付けと戦略的な手続きが必要です。

離婚や別居を経てしばらく時間が経った後、子どもが成長するにつれて「現在の親権者ではなく、別居している親と一緒に暮らしたい」と言い出すケースは少なくありません。特に中学・高校生といった多感な時期において、子どもの意思は非常に重い意味を持ちます。

15歳以上の子どもがこのような意向を示した場合、家庭裁判所での審理や手続きはどのように進められるのでしょうか。法的なルールや実務上のポイントについて、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が詳しく解説します。

15歳以上の子どもの意思が持つ法的な重要性

離婚時に決めた親権者や監護者を変更したい場合、当事者間の話し合いで合意に至らなければ、家庭裁判所に親権者変更調停審判を申し立てる必要があります。

この裁判所の手続きにおいて、子どもが何歳であるかは判断を大きく左右する分水嶺となります。

家事事件手続法における15歳以上の陳述聴取の義務

日本の法律(家事事件手続法第169条など)では、親権者の変更や子の監護に関する処分などの審判事件において、満15歳以上の子どもについては、家庭裁判所は審判をする前に、必ずその子どもの意見を聞かなければならないと定めています。

  • 15歳未満の子どもの場合:家庭裁判所調査官などが発達段階に応じて意見を聴取し、あくまで「参考資料」の一つとして扱われます。
  • 15歳以上の子どもの場合:法律上の必須の手続きとして、裁判所が直接本人から意見(陳述)を聴取することが義務付けられています。

15歳という年齢は、法律上も自らの意思決定能力が十分に備わっているとみなされる一つの大きな基準点です。そのため、裁判所は本人の意向を極めて重視して審理を進めることになります。

家庭裁判所における具体的な審理プロセス

実際に子どもが「親権者を変えてほしい」「もう一方の親と暮らしたい」と申し出た場合、家庭裁判所では以下のようなプロセスで審理が行われます。

家庭裁判所調査官による調査

裁判官が直接判断を下す前に、多くの場合、家庭裁判所の専門職員である家庭裁判所調査官が関与します。

  • 子どもとの面談:子どもがどのような理由で別居親と暮らしたいと考えているのか、プレッシャーや大人の誘導がない純粋な意思であるかを確認します。
  • 双方の親との面談:現在の生活環境や、変更を希望する親の受け入れ態勢、経済力、住環境などを詳細に調査します。
  • 生活環境の確認:必要に応じて学校への聞き取りや家庭訪問が行われることもあります。

調査官は客観的な立場から「子どもの最善の利益」の観点に基づき、調査報告書を作成して裁判所に提出します。この調査報告書の内容は、裁判官の最終判断に決定的な影響を与えます。

審判における子どもの意思の重み

15歳以上の子どもが明確に「親権者変更を希望する」と述べた場合、裁判所はその意思を尊重する傾向にあります。

ただし、「子どもの言うことなら何でも無条件に通る」というわけではありません。以下のような点が慎重に吟味されます。

  • 一時的な感情や反抗期によるものではないか(現在の親権者のしつけに反発しているだけ等)
  • 別居親の側に十分な監護能力や経済力、養育環境が整っているか
  • 兄弟姉妹がいる場合、分離して暮らすことによる心理的影響がないか

これらの要素を総合的に検討した上で、子どもの意向が子どもの健全な育成にとって真にプラスになると認められる場合に限り、親権者の変更が認められます。

2026年改正民法を踏まえた今後の展望と注意点

家族法を取り巻く法制度は時代とともに変化しています。2026年に施行される改正民法(共同親権制度の導入など)を見据えた実務においても、子どもの意向の尊重という基本姿勢は変わりません。

むしろ、共同親権が選択肢に入ることで、離婚後であっても両親が関与する形が多様化します。そうした中で子どもが「どちらの親と主として生活するか(監護者指定・変更)」を決める場面では、これまで以上に本人の意思決定能力が尊重される傾向が強まっています。

一方で、以下のような点には十分な注意が必要です。

親による「子の奪い合い」や「意図的な誘導」への厳しい視線

子どもが「別の親と暮らしたい」と言い出したとき、背景に一方の親による心理的な誘導(洗脳や過度な吹き込み)がないかが厳しくチェックされます。

もし、同居している親を悪者に仕立て上げるような働きかけが別居親側からなされていたと判明した場合、たとえ子ども自身が「あっちに行きたい」と口走ったとしても、裁判所はその意向の信用性を低く見積もることになります。子どもの意思は、あくまで自然な環境の中で育まれた自発的なものである必要があります。

子どもが言い出したときに親が取るべき適切な対応

もしご自身の子どもから「今の生活を変えて、もう一方の親と暮らしたい」と打ち明けられたとき、親としては動揺してしまうかもしれません。しかし、感情的に否定したり問い詰めたりすることは逆効果です。

  • まずは子どもの話を遮らずに最後まで聞き、なぜそう感じているのかの理由を受け止める。
  • 子どもを大人の紛争の道具やプレッシャーに巻き込まないよう配慮する。
  • 直ちに無理な同居の変更や引き渡しを強行せず、法的な手続きや専門家への相談を検討する。

子どもの気持ちの変化や生活環境の調整は、一筋縄ではいかない複雑な問題です。特に15歳以上という多感で重要な時期だからこそ、子どもの心身の負担を最小限に抑えつつ、法的に正当な手続きを踏むことが求められます。

夕陽ヶ丘法律事務所では、離婚に伴う親権・監護権の問題や、その後の生活環境の変化に関するご相談を多数承っております。プライバシーに配慮した落ち着いた相談ブースをご用意しておりますので、子どもとどのように向き合うべきか、今後の法的手続きをどう進めるべきかでお悩みの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

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