離婚に向けた別居期間中、別居親側から「現在単身赴任をしており、現地での家賃や生活費がかかっている。いわゆる二重生活の状態だから、生活費(婚姻費用)を減額してほしい」と言われるケースが後を絶ちません。
しかし、自分の意思や会社の命令とはいえ、別居して生活を分断している以上、義務者が主張する「二重生活のコスト」をすべて権利者(受け取る側)が負担させられるいわれはありません。
本記事では、単身赴任中の夫や妻から婚姻費用の減額を求められた際、法律や裁判例においてどのように判断されるのか、弁護士の視点から分かりやすく解説します。
なぜ相手は「減額」を主張するのか
別居中の夫婦の間には、資産や収入の多い方から少ない方に対して「婚姻費用」を支払う義務があります。これは、夫婦が同じ水準の生活を維持できるようにするための法的義務です。
しかし、義務者側(多くは夫)に転勤や単身赴任が発生した場合、以下のような心理や理由から減額を要求してくる傾向があります。
- 現地のアパートの家賃や光熱費、食費が自己負担となり、手元に残るお金が減ったと感じているため
- 家族全員で暮らしていた頃の生活コストの感覚が抜けず、自分の生活費が圧迫されていると主張したいため
- 「裁判所の算定表」に当てはめれば当然減額されると思い込んでいるため
しかし、これらはあくまで「義務者側の都合」であり、残された家族(子どもを養育している側)の生活費を一方的に削る正当な理由にはならないケースが大部分です。
裁判所における「単身赴任と婚姻費用」の考え方
家庭裁判所で婚姻費用を算定する際、基本的には「養育費・婚姻費用算定表」をベースに、双方の年間総収入を算出します。
1. 単身赴任手当は「収入」に含まれる
会社から支給される単身赴任手当や住宅手当、帰宅旅費等の手当は、原則として義務者の「総収入」に加算されます。赴任先で生活費がかかるからといって、手当分をあらかじめ除外して計算することはありません。
むしろ、手当が支給されている分、総収入のベースが上がれば、算定表上の婚姻費用が引き上げられる可能性すらあります。
2. 「二重生活の必要経費」は簡単に控除されない
義務者側は「二重生活による余分な出費」を婚姻費用の計算から差し引くよう主張することがありますが、裁判所はこれを簡単に認めません。
裁判所が考慮するのは、あくまで「客観的かつやむを得ない特別の事情」があるかどうかです。単なる会社の辞令による通常の転勤に伴う生活費の増加は、生活保持義務(自分と同じ程度の生活を相手にも保障する義務)の前では、優先的に考慮されるべきものではないと判断されるのが一般的です。
不当な減額要求に応じるべきではない理由
相手からの「お金がない」「生活できない」という言葉に押されて、合意書も書かずに言われるがまま婚姻費用を減額してしまうと、取り返しのつかない不利益を被ることがあります。
- 一度減額に応じると既成事実化する:後から「あのときは一時的な合意だった」と主張しても、過去の減額を覆すのは困難になります。
- 子どもの教育費や生活費が圧迫される:母親(または父親)と子どもが暮らす自宅の家賃や食費、教育費は、別居後も変わりません。義務者の都合で生活レベルを下げる必要はありません。
- 財産分与やその後の離婚条件にも悪影響を及ぼす:婚姻費用の未払い分が累積すると、将来の離婚調停や裁判での交渉力低下につながります。
2026年改正民法・最新の法実務を踏まえた留意点
婚姻費用や離婚に関する法律実務は、近年の法改正や最高裁判所の動向によって変化しています。特に2026年現在の実務においては、以下の点に注意が必要です。
法定養育費制度や財産分与の時効に関する意識
2026年施行の改正民法を見据えた離婚実務では、離婚後の生活基盤の安定がより重視されています。離婚前の婚姻費用についても、適正額を確実にもらい続けることが、その後の財産分与(請求権の期間制限:原則5年)や離婚協議を有利に進めるための布石となります。
相手が「生活が苦しい」と主張して調停を長引かせようとする場合でも、法的な妥当性に基づいた主張を組み立てることで、不当な引き延ばしを防ぐことが可能です。
相手から減額要求されたときの正しい対処法
もし相手から「単身赴任で二重生活だから生活費を減らしてほしい」と言われたら、以下の手順で冷静に対処してください。
1. 安易に口頭やメッセージで返事をしない
「検討します」「分かりました」といった曖昧な返事は、後から減額に同意したとみなされるリスクがあるため避けてください。
2. 相手の収入証明書の開示を求める
本当に生活が苦しいのかどうかを確認するため、直近の源泉徴収票や給与明細、赴任に伴う手当の支給状況がわかる資料の開示を求めましょう。口頭の主張だけで判断してはいけません。
3. 正式な算定表に基づく金額を再確認する
お互いの現在の収入(源泉徴収票ベース)を正確に当てはめた場合、算定表上でいくらになるのかを客観的に計算します。単身赴任手当が加算されているかどうかもチェックポイントです。
4. 弁護士に代理交渉を依頼する
感情的な対立が激しくなる前に、離婚・婚姻費用問題に精通した弁護士に間に入ってもらうことを強くおすすめします。
夕陽ヶ丘法律事務所では、依頼者様が落ち着いてお話しいただける面談スペースをご用意し、プライバシーに配慮した環境でご相談を承っております。相手からの理不尽な減額要求に対し、過去の判例や最新の法実務に基づいた妥当な金額を算出し、代理人として毅然と交渉いたします。
まとめ
相手が「単身赴任の二重生活」を理由に婚姻費用の減額を求めてきても、それに法的正当性があるとは限りません。会社の手当が支給されている実態や、残された家族の生活を守る義務を考慮すれば、安易な減額に応じる必要はありません。
一人で悩まず、まずは夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士までご相談ください。あなたの生活と権利をしっかりと守るための最適な道筋をご提案いたします。
⚖️ 離婚・親権・財産分与・養育費のお悩みは夕陽ヶ丘法律事務所へ
「相手と直接話したくない」「親権や養育費を有利に進めたい」「適切な財産分与を受け取りたい」とお悩みの方へ。
相手方との直接交渉・調停・裁判手続きはすべて弁護士が代理し、あなたの新しい人生の再出発を全力で守ります。
- 初回相談料: 0円(30分無料・オンライン/お電話相談OK)
- 秘密厳守の徹底: プライバシーに配慮した相談ブース/非対面相談
- 親身な伴走: 協議交渉から家庭裁判所(調停・審判・訴訟)まで一貫サポート