離婚調停・裁判・公正証書

離婚後の「旧姓に戻す(復氏)」か「婚姻時の名字を使い続ける(婚氏続称)」か

大阪弁護士会所属 弁護士 井上正人 監修

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、民法第763条(協議離婚)、第770条(裁判離婚)、第768条(財産分与)、2026年改正民法(共同親権・法定養育費)の規定および多数の離婚・親権・財産分与の実務実績に基づきわかりやすく解説しています。

Q 離婚後も結婚時の名字を使い続ける「婚氏続称」の手続き方法や期限は?子どもの名字への影響や仕事へのメリットも知りたい
A 【法的判断基準と手続きの仕組み】離婚後の名字は原則として旧姓に戻る「復氏(民法第767条第1項)」となりますが、離婚の日から3ヶ月以内であれば「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出することで婚姻時の名字を使い続ける「婚氏続称」が可能です。この3ヶ月の期限を過ぎると、やむを得ない事由がある場合に限り家庭裁判所の許可が必要となり、手続きのハードルが高くなります。なお、親権をどちらが持つかに関わらず、父母の離婚だけでは子どもの名字は自動的には変わりません。子どもを旧姓や親権者の名字に変更したい場合は、子の氏の変更許可申立てを家庭裁判所に行う必要があります。
【弁護士によるアドバイスと法的サポート】婚氏続称は仕事上のキャリア維持や社会的信用、プライバシーの保護において大きなメリットがある一方、元配偶者との関係性や将来の再婚時の戸籍上の整理など、考慮すべき法的側面も存在します。公的な相談窓口や弁護士会等では、離婚に伴う財産分与や慰謝料請求、親権の協議とあわせ、お客様のライフプランに最適な名字の選択や必要となる戸籍手続きを総合的にサポートいたします。複雑な離婚条件の交渉も含めて、ぜひご相談ください。

離婚という大きな人生の転機において、名字をどうするかという問題は、日常生活やキャリアに直結する非常に重要なテーマです。原則として離婚をすれば旧姓に戻りますが、法的な手続きを行うことで婚姻時の名字を名乗り続けることも可能です。

本記事では、離婚後の名字に関する二つの選択肢である「復氏(旧姓に戻す)」「婚氏続称(婚姻時の名字を使い続ける)」について、それぞれの法的仕組み、メリット・デメリット、手続きの方法や期限について詳しく解説します。


離婚後の名字の原則と二つの選択肢

日本の民法上、夫婦は婚姻によって同じ名字(氏)を称することとされています(民法第750条)。そして離婚をする場合、原則として婚姻前の名字(旧姓)に戻る仕組みになっています(民法第767条第1項)。これを法律用語で「復氏(ふくし)」と呼びます。

しかし、社会生活上の不都合やキャリアへの影響、子どもの名字との兼ね合いなどから、「名字を変えたくない」と考える方も少なくありません。そのため、民法第767条第2項では、離婚の日から3ヶ月以内であれば、特別な理由を問わず婚姻中の名字をそのまま名乗り続けることができる仕組みを定めています。これを「婚氏続称(こんしぞくしょう)」と呼びます。


旧姓に戻す「復氏」のメリット・デメリット

まずは、原則通りに旧姓に戻る「復氏」を選択した場合のメリットとデメリットを見ていきましょう。

復氏のメリット

  • 新しい人生のスタートとして、精神的な区切りやリフレッシュ感が得られる
  • 実家の家族や親族との結びつきを再確認しやすく、周囲に離婚したことが自然に伝わる
  • 元配偶者の戸籍や親族との心理的なつながりを完全に断ち切ることができる

復氏のデメリット

  • 仕事上の名刺やメールアドレス、各種資格証明書の名字変更手続きに多大な手間がかかる
  • 銀行口座、クレジットカード、パスポート、不動産登記などの名義変更をすべて自分で行う必要がある
  • 子どもを引き取る場合、子どもの名字は自動的には旧姓に戻らないため、子どもと親で名字が異なる事態が生じる

婚姻時の名字を続ける「婚氏続称」のメリット・デメリット

次に、婚姻時の名字を使い続ける「婚氏続称」を選択した場合のメリットとデメリットを整理します。

婚氏続称のメリット

  • ビジネスシーンにおいて、これまでの実績やキャリア、築き上げてきた人脈をそのまま維持できる
  • 銀行口座やクレジットカードなどの名義変更を行う必要がなく、生活への影響を最小限に抑えられる
  • 子どもと同じ名字を維持できるため、学校や幼稚園での手続きや周囲の目を気にする必要が減る
  • 離婚したことを必要以上に周囲に知られずに生活できるプライバシー上の利点がある

婚氏続称のデメリット

  • 元配偶者やその親族と同じ名字を名乗り続けることに心理的な抵抗を感じる場合がある
  • 戸籍上は元配偶者の戸籍から抜け、自分を筆頭者とした新しい戸籍が作られますが、名字の文字自体はそのまま残るため、複雑な感情を抱くこともある
  • 将来的に再婚する際の手続きがやや複雑になる場合がある

子どもの名字への影響と手続きの注意点

離婚に際して最も多くの親御さんが悩まれるのが、「子どもたちの名字をどうするか」という問題です。

法律上、夫婦が離婚しても、子どもの戸籍と名字は自動的には変わりません。妻が旧姓に戻った場合であっても、子どもは原則として元配偶者の戸籍に残り、婚姻時の名字を名乗り続けます。

もし、旧姓に戻った親と子どもの名字を同じにしたい(または子どもを自分の新しい戸籍に入れたい)場合は、以下の二段階の手続きが必要となります。

  1. 子の氏の変更許可申立て: 子どもの住所地を管轄する家庭裁判所に対し、「子の氏の変更許可」の審判を申し立てます。子どもが15歳未満の場合は、親権者である親が代理して申し立てます。
  2. 入籍届の提出: 家庭裁判所から許可審判書謄本を交付してもらった後、市区町村役場に対して「入籍届」を提出することで、親の新しい戸籍に子どもを移動させることができます。

この手続きを行わない限り、親が旧姓に戻り、子どもが婚姻時の名字のままという状態(別姓状態)が継続することになります。


手続きの方法と絶対的な期限

婚氏続称を選択する場合、最も重要なポイントは「期限の厳守」です。

手続きの期限

婚氏続称を行うための「離婚の際に称していた氏を称する届」は、離婚成立の日(協議離婚の場合は役所に届出が受理された日、裁判離婚の場合は調停成立日や判決確定日)から3ヶ月以内に提出しなければなりません。

この3ヶ月の期限を一日でも過ぎてしまうと、原則として市区町村役場での簡単な届出では婚氏続称ができなくなってしまいます。

期限を過ぎてしまった場合の救済措置

万が一、3ヶ月の期限を過ぎてしまった場合でも、直ちに名字の変更が不可能になるわけではありません。この場合は、家庭裁判所に対して「氏の変更許可申立て」を行う必要があります。

ただし、この申し立てが認められるためには、「やむを得ない正当な事由」が客観的に認められなければなりません。「うっかり忘れていた」という理由だけでは許可されないケースもあるため、離婚後速やかに手続きを行うことが強く推奨されます。


離婚時の諸問題とあわせた総合的なご相談は夕陽ヶ丘法律事務所へ

離婚後の名字の選択は、単なる事務的な手続きにとどまらず、その後の生活基盤や子どものメンタルケア、キャリア形成にまで深く関わる重大な決断です。

特に2026年現在の法実務においては、共同親権制度の導入議論や法定養育費、財産分与(請求期間の原則5年化など)の法改正を踏まえ、離婚条件全体を総合的に設計することが不可欠となっています。

弁護士法人公的な相談窓口や弁護士会等では、落ち着いた相談ブースやプライバシーに配慮した面談スペースを完備し、依頼者様一人ひとりのライフプランに寄り添った法的アドバイスを提供しております。離婚に伴う名字の選択や財産分与、親権問題でお悩みの方は、ぜひ当事務所の弁護士までお気軽にご相談ください。