離婚に際して直面する大きな財産的課題の一つが、夫婦の共有財産であるマイホームの取扱いです。住宅ローンが残っている自宅について、不動産の査定価格が住宅ローンの残高を上回る状態をアンダーローンと呼びます。
このアンダーローン状態にあるマイホームは、売却することで現金化し、きれいな形で財産分与を行うことが可能です。本記事では、夕陽ヶ丘法律事務所の専任法律ライターが、アンダーローンの家を売却して現金で折半(1/2)清算するための具体的なステップ、法的な留意点、そして2026年現在の法改正を踏まえた実務知識を詳しく解説します。
アンダーローンとは?基本構造と離婚時のメリット
不動産の売却価額が、その不動産にかかっている住宅ローンの残高を上回っている状態をアンダーローンと呼びます。これに対し、ローン残高の方が家自体の価値よりも高い状態をオーバーローンと呼びます。
オーバーローンの場合は「残ったマイナスの借金をどう分けるか」「どちらが住み続けるか」という深刻なトラブルになりがちですが、アンダーローンであれば、売却によってプラスの財産(売却益)を生み出すことができます。
財産分与における基本原則「2分の1ルール」
日本の民法およびこれまでの裁判実務において、婚姻期間中に築いた夫婦の共有財産は、特段の事情がない限り、離婚時にそれぞれ2分の1(50%)ずつ分与するのが原則です。
アンダーローンの家を売却して得られた現金も例外ではなく、夫婦双方が協力して購入・維持してきた財産とみなされるため、諸経費を控除した純利益を「2分の1ずつ折半する」のが最も公平で、後々のトラブルを防ぎやすい解決策となります。
家を売却して現金折半する具体的な5つのステップ
アンダーローンの家を売却し、売却代金を現金で折半するためには、計画的かつ正確な手順を踏む必要があります。以下に実務上の具体的なステップを解説します。
- ステップ1:不動産の複数社査定とローン残高の確定 まずは不動産会社数社に査定を依頼し、現在の市場価値(売却予想価格)を把握します。同時に、金融機関から「住宅ローン残高証明書」を取り寄せ、正確な残債額を確定させます。売却予想価格からローン残高を差し引き、プラス(アンダーローン)になっていることを確認します。
- ステップ2:夫婦間での売却方針の合意と書面化 「いつまでに、いくら以上で売りに出すか」「売却にかかる諸経費の負担割合」などを夫婦間で合意します。口約束ではなく、離婚協議書(公正証書)や合意書として書面に残しておくことが、後の心変わりを防ぐために極めて重要です。
- ステップ3:不動産の売却活動と買主との売買契約 不動産会社に媒介を依頼し、一般市場で売却活動を行います。買主が見つかったら売買契約を締結し、手付金を受領します。この手付金の扱いや保管場所についても夫婦間で明確にしておく必要があります。
- ステップ4:決済・引き渡しと住宅ローンの完済 売却代金の決済日に、買主からの代金で住宅ローンを一括返済し、抵当権を抹消します。同時に、仲介手数料、司法書士費用、測量費などの諸経費を売却代金から精算します。
- ステップ5:残余財産(純利益)の現金折半 住宅ローンと売却諸経費をすべて清算した手元に残る現金(売却益・ネットプロシーダー)を確定させます。この純利益を、原則として2分の1ずつ夫婦それぞれの口座に振り込み、清算を完了させます。
売却して折半する際に注意すべき法務・税務のポイント
アンダーローンの売却・現金折半は比較的スムーズに進みやすい一方で、法律や税金の専門知識を欠くと、予想外の出費やトラブルが発生することがあります。以下のポイントに十分注意してください。
頭金の出捐(しゅつえん)割合の調整問題
婚姻期間中に購入した自宅であっても、一方が「結婚前の貯金(特有財産)」や「親からの生前贈与・相続財産」を多額の頭金として出していた場合、単なる一律の「2分の1折半」が不公平だとして争いになることがあります。
裁判実務では、頭金を拠出した側の寄与度を考慮して財産分与割合を修正することがあります。もし頭金の額に大きな差がある場合は、完全な1/2折半とするのか、あるいは頭金分を差し引いた残余を折半するのかについて、弁護士を交えて事前に協議・合意しておくことが賢明です。
売却益に対する譲渡所得税の課税
不動産を売却して利益(譲渡益)が出た場合、その利益に対して譲渡所得税および住民税が課税される可能性があります。
マイホームを売却した場合には、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例が利用できるケースが多く、要件を満たせば課税を大きく軽減、あるいはゼロにすることができます。この税金の申告と負担割合についても、売却代金折半の前に考慮しておく必要があります。
離婚手続きと財産分与の時効(2026年最新動向)
民法上、離婚に伴う財産分与の請求権には、離婚が成立した日から5年の除斥期間(時効)が定められています。
2026年現在の法実務においても、離婚時に財産分与の取り決めを曖昧にしたまま放置し、5年が経過してしまうと法的に請求できなくなるリスクがあります。「家はいずれ売ろう」と口頭で約束したまま離婚届を出すのではなく、必ず離婚前または離婚時に、財産分与に関する合意書を法的に有効な形で作成することが不可欠です。
話し合いがまとまらない場合の法的手続
夫婦間の話し合いや不動産の評価を巡って意見が対立し、自力での売却・折半が困難な場合は、法的手段に移行することになります。
- 離婚調停(家庭裁判所)の活用 当事者間の交渉が決裂した場合は、家庭裁判所に夫婦関係調整調停(離婚調停)を申し立て、調停委員を介して財産分与や不動産売却についての合意を目指します。
- 審判および財産分与請求訴訟 調停でも合意に至らない場合、事件は審判に移行するか、別途財産分与請求訴訟を提起することになります。裁判所は客観的な不動産鑑定評価などに基づき、公平な財産分与の割合や方法(競売あるいは競売回避のための任意売却命令など)を判断します。
裁判手続きを有利に進め、早期に現金での解決を図るためには、不動産鑑定や財産評価に強い弁護士のサポートが極めて有効です。
まとめ:アンダーローンの不動産売却は専門的サポートで円満かつ有利に
アンダーローンの自宅を売却して現金で折半(1/2)清算する方法は、離婚後の生活資金を確保し、不動産という形のない共有リスクをきれいに解消するための非常に合理的な選択肢です。
しかし、「正確な市場査定」「諸経費や税金の計算」「頭金の寄与度の調整」「離婚協議書の作成」など、クリアすべき実務的ハードルは少なくありません。
夕陽ヶ丘法律事務所では、落ち着いた相談ブースやプライバシーに配慮した面談スペースをご用意し、離婚にまつわる複雑な財産分与や不動産売却の問題について、依頼者様の利益を最優先に考えたきめ細やかな法的サポートを提供しております。アンダーローンの家をめぐる財産分与でお悩みの方は、ぜひ当事務所の弁護士までご相談ください。
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