マイホームの夢を形にするため、土地を購入し、ハウスメーカーと建築請負契約を締結して工事が始まった矢先、夫婦仲の悪化や価値観の不一致によって離婚を選択せざるを得なくなるケースがあります。
すでに完成している物件の財産分与であれば「売却して残金を分ける」あるいは「一方が住み続けて代償金を支払う」という選択肢が比較的立てやすいものの、建築途中の物件では契約上の権利義務関係が複雑に絡み合い、一筋縄ではいきません。
本記事では、建築途中の新築住宅における契約解除の問題、住宅ローンの取り扱い、既払い金の清算、そして2026年施行の改正民法を見据えた財産分与の実務について、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が詳しく解説します。
1. 建築途中の新築住宅をめぐる3つの法務課題
工事が進行している段階で離婚を迎えた場合、夫婦が直面する大きな法的課題は主に以下の3点に集約されます。
- ハウスメーカー(施工会社)との建築請負契約の解除と、高額な違約金・損害賠償リスク
- すでに自己資金やローンから支出した着工金、中間金、設計料などの「既払い金」の評価と清算
- すでに実行されてしまった(または融資が下り始めている)住宅ローンの名義と返済義務の処理
これらの問題は、法律知識がないまま当事者同士で話し合うと感情的になりやすく、ハウスメーカー側の主張に押し切られて不当な経済的負担を背負うリスクがあります。
2. ハウスメーカーとの契約解除と損害賠償(違約金)の仕組み
建築途中の住宅を手放す場合、最初のステップはハウスメーカーとの建築請負契約の解除(合意解約または解除権の行使)です。
2-1. 工事の進捗度に応じた損害賠償
民法上、注文者は仕事が完成しない間は、いつでも損害を賠償して契約を解除することができます(民法第641条)。しかし、ハウスメーカー側との間では、標準約款等において解除時期に応じた違約金や損害賠償の定めが置かれているのが一般的です。
- 着工前の場合:設計図面の作成費用や確認申請費用などの実費請求にとどまることが多いです。
- 着工後の場合:すでに行われた基礎工事の費用、発注済みの資材のキャンセル料、得られるはずだった逸失利益の一部などが損害として請求されるため、高額な違約金が発生するおそれがあります。
2-2. 違約金はどちらが負担すべきか
離婚原因がどちらにあるか(不貞行為やDVなど)に関わらず、建築請負契約の当事者が夫婦のどちら(またはペアローンによる連名)であるかによって、違約金の支払義務を負う主体が決まります。基本的には契約名義人が法的な責任を負いますが、財産分与の場面では、この解除にかかったコスト(マイナスの財産)をどのように分担するかを協議することになります。
3. 既払い金の清算と財産分与の考え方
契約解除ではなく、「このまま夫または妻の単独名義(あるいは共有名義)で建築を続行し、完成させる」という選択肢もあります。その場合の清算方法について見ていきましょう。
3-1. すでに支払った着工金・頭金の評価
土地の購入費やハウスメーカーへの着工金として、夫婦の共同貯金や婚姻中の収入からすでに支払った金額がある場合、これらは「婚姻中の協力によって築いた財産」として財産分与の対象となります。
- 工事継続の場合:建築途中の現在の資産価値(土地の価値 + 既に行われた工事の出来高に応じた価値)を算定し、夫婦の貢献度(原則として2分の1ずつ)に応じて清算します。例えば、一方が住み続ける場合は、相手方の持分相当額を代償金として支払う必要があります。
- 契約解除・更地返還の場合:解約によって返還される金員(ある場合)や、既に消滅してしまった費用差引後の残額を対象に清算を行います。
4. 住宅ローンの取り扱いと金融機関との交渉
新築住宅の建築では、土地購入時や着工時に「つなぎ融資」や「住宅ローンの分割実行」が行われているケースが多くあります。
4-1. ローンがすでに実行されている場合
家が完成していなくても、融資が実行されていれば法的には「借金(負債)」がすでに存在しています。この場合、プラスの資産(土地や建築途中の建物)とマイナスの負債(住宅ローン残高)を差し引きして、プラスが残るかマイナス(オーバーローン)になるかを計算します。
4-2. ペアローン・連帯保証のリスク
夫婦共同でローンを組んでいる場合や、一方が他方の連帯保証人になっている場合、離婚後もその責任が自動的に消えるわけではありません。ハウスメーカーとの契約解除やローンの借り換え、あるいは物件の処分にあたっては、金融機関の承諾が必要不可欠となるため、早期の専門的交渉が求められます。
5. 2026年改正民法を見据えた実務対応
離婚に伴う財産分与を検討するにあたり、2026年施行の改正民法は非常に重要な影響を与えます。
- 財産分与の除斥期間の延伸:従来の「離婚後2年」から「離婚後5年」へと請求期間が延長されたことにより、離婚時には建築途中のまま曖昧にしていたり、後から清算の漏れが発覚したりした場合でも、法的保護を受けられる期間が広がりました。
- 共同親権制度の導入との関連:未成年の子供がいる場合の住環境の確保(どちらが家に残るか)は、親権者の指定や養育費の算定とも密接に関係します。住宅の処分や継続を感情論ではなく、長期的な生活設計の観点から法的に整理することが不可欠です。
6. 建築途中の離婚トラブルを弁護士に依頼するメリット
ハウスメーカーとの交渉、金融機関とのローン調整、そして配偶者との財産分与の話し合いを同時に進めることは、精神的にも時間的にも極めて大きな負担となります。
夕陽ヶ丘法律事務所では、落ち着いた相談ブースにてプライバシーに配慮した面談を行っております。建築請負契約書のリーガルチェックから、ハウスメーカーとの違約金交渉の代理、離婚協議・調停における適正な財産分与の算出まで、トータルでサポートいたします。
「ハウスメーカーから高額な違約金を請求されている」「ローンがどうなるか不安で動けない」といったお悩みをお持ちの方は、泣き寝入りする前に、ぜひ当事務所の弁護士にご相談ください。
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