近年、ネットを通じて手軽に始められる資産運用として、ソーシャルレンディングや不動産クラウドファンディングなどのフィンテック投資が普及しています。しかし、いざ離婚の話し合いとなった際、こうした比較的新しい金融商品は、株式や預貯金とは異なる複雑な性質を持つため、どのように財産分与の対象として評価すべきか迷われる方が少なくありません。
特に、運用期間の途中で現金化できない案件や、貸し倒れのリスクを抱えているファンドの場合、夫婦間での評価額の算出を巡って激しい対立が生じることがあります。夕陽ヶ丘法律事務所には、こうした現代的な資産の財産分与に関するご相談が数多く寄せられています。
本記事では、ソーシャルレンディングやクラウドファンディングの投資資金が離婚時にどのように評価され、分与対象としてどのように扱われるのか、法律実務の観点から詳しく解説します。
財産分与における基本原則と評価時点
夫婦の一方が婚姻期間中に築いた財産は、名義を問わず「共有財産」とみなされ、離婚時の財産分与の対象となります。これはソーシャルレンディングやクラウドファンディングなどの投資資金であっても例外ではありません。
評価の基準時は原則として「別居時」
日本の離婚実務において、財産分与の対象範囲と評価額を決める基準時は、原則として夫婦が別居した時点となります。 したがって、別居後に価格が変動したとしても、基本的には別居時点における投資元本の残高や運用価値を基準に分与額を算定します。ただし、別居から離婚までの間に配偶者が無断で解約し、出資金を引き出してしまったような場合には、その引き出された現金を別居時の財産とみなして清算の対象に含めることがあります。
投資資金の具体的な評価方法と注意点
ソーシャルレンディングやクラウドファンディングは、一般的な上場株式のように市場価格(気配値)がリアルタイムで存在しないため、その評価額の算定には特有の難しさがあります。
1. 投資元本額の評価
基本的には、別居時においてファンドに貸し付けられている、あるいは出資されている元本の額面が基準となります。ただし、事業者の経営悪化やファンドの運用トラブルにより、すでに元本の全額または一部が回収不能(貸倒れ)となっているケースも存在します。 このような場合、単に「帳簿上の数値」を鵜呑みにするのではなく、事業者が公表している運用レポートやデフォルトの有無を確認し、客観的な価値を評価する必要があります。
2. 未償還分配金相当額の扱い
運用期間中に発生している未受領の分配金(利息や配当に相当する利益)も、別居時までに発生している分については財産分与の対象に含まれます。 まだ口座に振り込まれておらず、ファンド内でプールされている状態であっても、別居日までに得られるべき権利が確定している収益については、財産目録に計上して清算対象とするのが実務上の取扱いです。
3. 流動性リスクと途中解約の不可避性
多くのクラウドファンディングは、原則として運用期間中の途中解約が認められていません。そのため、「今すぐ売却して現金化し、半分に分ける」という対応が物理的に不可能なケースが大半を占めます。 この場合、実務的な解決策としては以下の方法が検討されます。
- 満期を迎えて現金化されるまで財産分与の精算を待つ(合意書や公正証書を作成する)
- 別居時の評価額を算出した上で、他の預貯金などの現生資産で代償金を調整する
- 投資名義人が保有し続ける代わりに、将来回収できた段階で一定割合を相手方に支払う旨の取り決めをする
2026年改正民法と財産分与における留意点
近年の法改正議論や2026年施行を見据えた民法実務において、離婚に伴う財産分与のルールには重要な変化が生じています。特に、離婚請求の除斥期間や財産隠しに対するペナルティの強化が進められており、適正な財産開示の重要性が増しています。
財産分与請求権の期間制限への配慮
民法上、離婚に伴う財産分与を請求できる期間は、離婚が成立した時から2年間と定められています。 ソーシャルレンディング等の複雑な投資商品は、運用期間が数年に及ぶものもあり、満期を迎える前に2年の時効が迫ってしまうリスクがあります。もし満期待ちの案件がある場合は、時効完成前に必ず合意書を取り交わすか、家庭裁判所に対して財産分与の調停・審判を申し立てて法的権利を保全しておく必要があります。
財産隠し・情報不開示への対抗手段
一方が「どのファンドにいくら投資しているか」を意図的に隠そうとするケースも散見されます。しかし、インターネットバンキングの履歴、証券口座の年間取引報告書、確定申告書(暗号資産や雑所得の申告状況)などを丹念に追うことで、投資実態を明らかにすることは可能です。 任意の開示に応じない場合は、弁護士会照会や裁判所を通じた文書送付嘱託などの法的手続きを活用して、正確な資産状況を割り出していきます。
適正な解決に向けた弁護士へのご相談
ソーシャルレンディングやクラウドファンディングの財産分与は、専門的な金融知識と正確な法律実務の双方が求められる複雑なテーマです。
「相手が投資の存在を教えてくれない」 「元本割れリスクがあるファンドをどう評価すべきか分からない」 「満期前の投資金をどのように分ければ公平なのか」
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