離婚に向けた話し合いや別居の気配を察知した途端、手元の現金を減らして財産分与の額を少なくしようと企む配偶者がいます。その典型的な手口の一つが、高級腕時計、高級ブランドのバッグ、ジュエリー、骨董品などへの換金・購入です。
現金であれば銀行口座の履歴から一目瞭然ですが、「形ある高価なモノ」に変えられると、あたかも個人的な趣味の品であるかのように主張され、財産分与から除外されてしまうのではないかと不安に感じる方も多いでしょう。
結論からお伝えすると、婚姻期間中に夫婦の協力によって築いた収入で購入されたものであれば、それらはすべて共有財産の範疇に含まれます。本記事では、配偶者がブランド品や高級時計を使って資産を隠そうとした際の具体的な法的対策と、実務における解決手順を詳しく解説します。
なぜ配偶者は高級品で資産を隠そうとするのか
離婚時の財産分与は、原則として「婚姻期間中に夫婦で協力して築き上げた財産」のすべてが対象となります。預貯金、不動産、株式、自動車などが代表的ですが、これらは財産分与の基準時(通常は別居時または離婚成立時)における価値で評価されます。
現金や預貯金のままで置いておくと、離婚協議や裁判の中で財産隠しが発覚した際にそのまま分与割合の対象になってしまうため、悪質な配偶者は以下のような心理と目的から高額な買い物に走ります。
- 現金の残高を減らすことで、相手に渡す財産分与の額を物理的に引き下げようとする
- 「自分の趣味の私物である」と言い張ることで、共有財産から除外させようとする
- 将来的に売却して現金化するための「隠し資産」として手元にキープしておく
しかし、日本の家事裁判の実務において、このような巧妙な隠匿工作がまかり通るわけではありません。法律と証拠を正しく使えば、隠された資産を適正に評価し直して分与を求めることができます。
隠されたブランド品・高級時計を特定・評価する3つのステップ
配偶者が購入した高額な物品を財産分与の対象として正しく主張するためには、的確なステップを踏んで証拠を集め、適正な価値を算出する必要があります。
ステップ1:購入の証拠と資金源の特定
まずは、いつ、どのような品物を、いくらの現金や預貯金で購入したのかを証明する証拠を集めることが不可欠です。
- クレジットカードの利用明細・履歴: 百貨店、高級ブランドのブティック、並行輸入店、時計専門店などの決済履歴を探します。
- 銀行口座の出入金記録: まとまった大金が引き出されている時期と、高級品を購入した時期が合致するかを確認します。
- 購入時のレシート、保証書、領収書: 自宅の書斎、クローゼット、あるいは配偶者の財布やカバンなどに残されていないか確認します(※ただし、発覚を恐れて捨てられている場合も多いため、カード明細の確保が最優先となります)。
もし配偶者が「自分の特有財産(結婚前からの貯金や相続財産)で購入した」と反論してきた場合は、その購入資金の出所(原資)を証明する責任は配偶者側にあります。婚姻後の給与所得などを原資としている限り、購入した品物も間違いなく共有財産となります。
ステップ2:現在の「時価」の算定
現金であれば額面通りの価値になりますが、高級腕時計やブランド品は「購入時の価格(定価)」ではなく、現在の「時価(客観的な市場価値)」が財産分与の評価額となります。
ここで重要になるのが、一度使用したものであっても価値が落ちにくい資産の性質です。特に一部の高級腕時計(ロレックスやオーデマピゲなど)や限定品のバッグなどは、購入時と同等、あるいはプレミアがついてそれ以上の価格で取引されているケースも珍しくありません。
- 中古市場における同等品・同程度の状態の買取相場や販売価格を調べます。
- 専門の鑑定業者による査定書を取得することが、調停や裁判において非常に強力な武器となります。
- 配偶者が現物を隠して見せない場合でも、購入時の型番やブランド名が分かっていれば、おおよその市場価値を割り出すことが可能です。
ステップ3:財産分与の清算対象への組み入れ
特定した高級品の時価相当額を、他の預貯金や不動産などの財産総額に合算します。その上で、原則として2分の1ずつの割合で清算を行います。
もし配偶者がその高級品を手元に残し続けたいと主張するのであれば、「その時価に相当する金銭(現金)」をこちら側に支払う形での代償分割を求めるのが実務的な解決策となります。
2026年改正民法と財産分与への影響
近年、離婚に関する法律や実務は大きな変化を遂げています。特に財産分与の請求権の除斥期間(時効)が「離婚から2年」から「5年」へと伸長された改正民法の施行(2026年予定を含む近年の法改正潮流)により、離婚が成立した後に隠し財産が発覚した場合でも、より余裕を持って法的請求を行えるようになりました。
離婚時点では高級時計の存在に気づけず、離婚後しばらく経ってからSNSの投稿や知人の証言、あるいは郵便物などで配偶者が隠し持っていた資産の存在を知った場合でも、5年以内であれば改めて財産分与の請求を起こすことが法律上認められやすくなっています。
だからこそ、「離婚してしまったからもう諦めるしかない」と泣き寝入りする必要はありません。不審な点があれば、時効の期間内に行動を起こすことが重要です。
弁護士に依頼するメリットと夕羽ヶ丘法律事務所のサポート
配偶者が巧妙に資産を隠している場合、当事者同士の話し合いだけで隠し資産を白日の下に晒すことは極めて困難です。「そんなものはない」「昔の貯金で買った」と嘘をつかれたり、話を逸らされたりして精神的にも大きな負担がかかります。
弁護士を代理人に立てることで、以下のような強力なアプローチが可能になります。
- 弁護士会照会や調査嘱託の活用: 金融機関やクレジットカード会社に対し、必要に応じて法的な手続きを用いて正確な取引履歴の開示を迫ることができます。
- 財産明示手続きの活用: 裁判所の手続きを通じて、相手方に保有している財産のリストを正式に提出させることができます(虚偽の申告には罰則が科されます)。
- 適正な時価評価に基づく交渉: 感情的な言い争いを避け、法的な根拠と客観的な市場価値に基づいて、冷静かつ有利に財産分与の金額を合意へと導きます。
当事務所では、プライバシーに配慮した落ち着いた相談ブースをご用意し、ご相談者様が抱える不安や疑問に丁寧に向き合っております。配偶者の不審な行動や財産隠しにお悩みの方は、一人で抱え込まずに、まずは専門知識を持つ弁護士へご相談ください。
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