共働き夫婦の離婚と「父親の親権獲得」の現実
離婚時における子どもの親権者を定める際、実務上はこれまで「母性優先の原則」や「監護の継続性」が重視される傾向にありました。そのため、「共働き家庭だから、どちらが親権を持っても同じではないか」「仕事が忙しい父親が親権を取るのは難しいのではないか」と不安を抱える父親からのご相談が後を絶ちません。
しかし、現代の共働き家庭においては、父親が積極的に育児に参加しているケースが数多く存在します。特に、日常的な保育園の送迎や食事の世話、学校行事への参加などにおいて、父親が主要な役割を果たしていた場合、その実績を正しく裁判所や調停委員会にアピールすることで、父親側が親権を獲得することは十分に可能です。
2026年施行の改正民法を見据えても、父母が共同して子を養育する視点や、離婚後も実質的な監護実績を重視する傾向は強まっています。親権争いを有利に進めるためには、感情論ではなく「過去の具体的な育児実績」を客観的な証拠をもって証明することが不可欠となります。
保育園送迎実績が親権者指定の決定打となる理由
裁判所が親権者を決定する際、最も重視する判断基準の一つが「これまでの主たる監護者(主に子どもの世話をしてきた人)は誰か」という点です。共働きであっても、どちらか一方が仕事の調整をつけて日常の育児負担を大きく担っている場合、その実績は極めて高い評価を受けます。
特に、保育園の送迎実績は、以下のような理由から強力な証拠能力を持ちます。
- 日常的な継続性: 保育園の送迎は毎日のルーティンであり、どちらが責任を持って対応していたかが明確に分かれます。
- 生活密着型の育児: 単に子どもと遊ぶだけでなく、健康状態の確認や先生との連絡など、実質的な監護能力の証明になります。
- 仕事と育児の両立実績: フルタイム勤務でありながら送迎をこなしていた事実は、離婚後の生活環境(ワークライフバランス)においても子どもを適切に監護できる能力の裏付けとなります。
母親側が「自分が主たる監護者である」と主張したとしても、実際の送迎や通院の大部分を父親が担っていた事実を客観的に示すことができれば、形勢を大きく逆転させることが可能です。
実際の解決事例:保育園の記録と日記で父親親権を獲得したケース
ここで、当事務所が実際に関与した、共働き夫婦の離婚における父親側の親権獲得事例をご紹介します。
相談時の状況
ご相談者である夫Aさんは、妻Bさんと共にフルタイムの共働きでした。長男(当時3歳)が通う保育園の送迎は、勤務時間の関係からAさんが原則として担当していました。また、夜間の寝かしつけや休日のおむつ替え、病院への連れ出しもAさんが積極的に行っていました。
しかし、夫婦関係の悪化から別居に至った際、妻Bさんが強引に長男を連れて実家へ転居し、「母親である私がずっと育ててきた。父親は仕事ばかりで育児をしていない」と主張して親権を求めて調停を申し立てたのです。
弁護士の戦略と証拠収集
Aさんは非常にショックを受け、当事務所にご相談にいらっしゃいました。私たちは、Bさんの「父親は育児をしていない」という主張を覆すため、以下の証拠を集中的に収集・整理する方針を立てました。
- 育児日記の提出: Aさんが日々の送迎時間、子どもの様子、食事内容などを詳細に記録していた手帳を提出しました。
- 保育園の連絡帳アプリの履歴: スマホアプリに残る、送迎担当者名や先生とのやり取り(Aさんが返信している履歴)をデジタルデータとして保全しました。
- ICカード(交通系・電子マネー)の利用履歴: 電車や車での送迎時に使用していたSuica等の履歴から、毎朝・毎夕保育園周辺に滞在していた客観的な時系列データを抽出しました。
- 第三者の陳述書: 保育園の送迎時によく顔を合わせていた保護者や、担任の先生からの聞き取りを想定した準備を行いました。
これらの証拠を「監護実績報告書」としてまとめ、調停委員に提出したところ、Aさんの日常的な関与の深さが鮮明に証明されました。
調停・審判の結果
調停の場において、客観的な送迎実績と育児の質が認められ、最終的に「長男の監護者としては父親であるAさんが適任であり、離婚後の親権者もAとする」という内容で調停が成立しました。別居時に子どもを連れ去られる形となりましたが、これまでの実績を諦めずに証明したことで、父親側の親権獲得に成功したのです。
父親が親権獲得を目指すために今すぐ準備すべきこと
共働き離婚において、父親が親権を勝ち取るためには、別居前、あるいは別居の初期段階からの周到な準備が必要です。以下のポイントを実践し、証拠を確保してください。
1. 日常の育児記録を細かく残す
いつ、どのような育児(送迎、食事作り、洗濯、病院受診など)を行ったのかを、カレンダーやアプリ、日記に毎日記録しましょう。日時が特定できるデジタルデータは特に証拠としての信頼性が高くなります。
2. 保育園や学校との関わりを形に残す
連絡帳の記入や行事への参加など、自分が主体的に動いたことが分かる記録を保存してください。写真や動画に日付を入れて残すことも有効です。
3. 別居時の子どもの連れ去りに注意する
相手が一方的に子どもを連れて別居した場合、そのまま「現状維持の原則」が適用され、母親側に有利な状況が作られてしまうおそれがあります。子どもの引き渡しや監護者指定の保全処分など、法的な対抗措置を講じる必要があるため、速やかに弁護士へご相談ください。
父親の親権獲得は「証拠の質と量」で決まります
「仕事が忙しい父親には親権は無理だ」という固定観念は、現代の法律実務においては通用しません。実際に子どもの世話を誰がどのように行ってきたかという「真実の監護実績」こそが、裁判所を動かす最大の鍵となります。
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所では、数多くの父親の離婚・親権問題における解決実績を有しています。落ち着いた相談ブースにて、お客様のこれまでの育児実績を丁寧にヒアリングし、裁判所に響く立証戦略をご提案いたします。共働きでの親権問題にお悩みの父親の方は、一人で悩まずに、ぜひ当事務所へご相談ください。
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