2026年改正民法・共同親権

共同親権になると「子どもの教育・進路(学校選び)」はどう決める?

大阪弁護士会所属 弁護士 井上正人 監修

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、民法第763条(協議離婚)、第770条(裁判離婚)、第768条(財産分与)、2026年改正民法(共同親権・法定養育費)の規定および多数の離婚・親権・財産分与の実務実績に基づきわかりやすく解説しています。

Q: 共同親権になると「子どもの教育・進路(学校選び)」はどう決める?
A: 共同親権のもとでは、子どもの進学、転校、重要な習い事といった「子の利益に大きく影響する事項」は、原則として父母双方が協議して決定する必要があります。もし意見が対立して話し合いがつかない場合は、家庭裁判所に申し立てを行い、裁判所の判断を仰ぐことになります。ただし、日常の医療や学校の日常的な指導などは単独で行えるため、具体的な判断基準を理解しておくことが重要です。

2026年に施行される改正民法により、離婚後も父母双方が親権を持つ「共同親権」制度が選択できるようになります。これにより、子どもの養育に関する重大な決定をどのように下すのか、多くのご家庭からご相談が寄せられています。

特に大きな関心を集めているのが、子どもの「教育・進路(学校選び)」に関する問題です。私立学校への受験、公立か私立かの選択、進路変更、さらには転校や留学などは、子どもの将来を左右する重大な決断です。

本記事では、共同親権導入後における教育・進路の決定ルールや、意見が割れてしまった場合の法的解決手段について、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が詳しく解説します。

2026年改正民法における「共同親権」と教育の基本ルール

これまでの単独親権制度では、離婚した後は親権を持つ一方の親が単独で子どもの教育方針を決めることができました。しかし、2026年の改正民法では、離婚後も共同親権が選択された場合、子どもの監護および教育に関する事項について、基本的な考え方が大きく変化します。

改正民法では、親権は原則として父母の共同で行うこととされています。そのため、子どもの生活に大きな影響を及ぼす事項については、父母双方が話し合って合意形成を図る義務が生じます。

学校選びや進路は「協議事項」に該当する

子どもの進学先(小学校、中学校、高校、大学などの学校選び)や、大きな進路変更、転校などは、子どもの人格形成や将来のキャリアに直接関わる重大な決定です。これらは法律上、日常の行為とは区別され、原則として父母双方が合意して決めるべき事項に位置づけられています。

したがって、一方の親が勝手に転校の手続きを進めたり、相手の同意を得ずに私立学校への受験を強行したりすることは、法的なトラブルに発展するリスクがあります。

「日常の行為」と「重大な決定」の違い

共同親権のもとでは、すべての事項に双方の合意が必要なわけではありません。実務上は以下のように区別されます。

  • 日常の行為(単独で決定可能):日常的な学習指導への対応、学校の宿題のサポート、日常の健康管理や突発的な通院、一般的な習い事の送迎など。これらは別居親または同居親のどちらか一方が単独で行うことができます。
  • 重大な決定(双方の合意が必要):転居を伴う転校、私立・公立の選択を含む進学先の決定、留学、重大な医療行為、宗教の選択など。これらは原則として父母の話し合いが必要です。

意見が対立したときはどうする?家庭裁判所の関与

父母の間で子どもの学校選びや進路について意見が対立し、どうしても話し合いがまとまらない場合、どのように解決すればよいのでしょうか。

離婚前後の協議において、教育方針の不一致は非常に深刻な対立点になりやすい問題です。

家庭裁判所への「子の監護に関する処分」の申し立て

父母の協議が調わないときは、家庭裁判所に対して「子の監護に関する処分」などの審判や調停を申し立てることができます。

家庭裁判所は、どちらの親の主張が正しいかという観点ではなく、あくまで「子どもの利益(福祉)」を最優先にして判断を下します。

  • 子どものこれまでの学習環境や友人関係の継続性
  • 子ども自身の意向(年齢や判断能力に応じて考慮されます)
  • 父母それぞれの経済力や教育環境のサポート体制
  • 通学の利便性や心身の健康への影響

裁判所はこれらの要素を総合的に考慮し、どちらの進路選択が子どもの健やかな成長に適しているかを判断します。

緊急時の例外規定(急迫の事情)

例えば、災害やいじめ、心身の重大な危機などにより、直ちに転校や進路変更を行わなければ子どもの利益が損なわれるような「急迫の事情」がある場合には、一方の親が単独で決定・実行することが認められる場合があります。

ただし、これはあくまで例外的な措置であり、後から正当性が厳しく問われる可能性があるため、慎重な判断が求められます。

離婚協議書や親権者決定時の注意点と事前の備え

共同親権を選択する場合、あるいは離婚時に親権や監護権、教育方針について取り決める際には、将来の紛争を予防するための事前対策が極めて重要です。

協議書への具体的な教育条項の明記

離婚時に公正証書などの書面を作成する際、教育費の分担だけでなく、進路決定に関するルールをあらかじめ取り決めておくことが有効です。

  • 進学先(受験の有無や私立・公立の選択)についての事前の協議義務
  • 高校や大学進学にかかる学費の分担割合や支払い方法
  • 意見対立時の話し合いの手順(まずは弁護士を交えた協議や調停を利用することの合意など)

こうした取り決めを明確にしておくことで、子どもが成長した際の大切な節目で無用な対立を避けることができます。

弁護士への早期相談のメリット

共同親権制度の導入に伴い、実務運用や裁判所の判断基準も徐々に蓄積されていきますが、個別の家庭における事情は千差万別です。

「相手が子どもの転校に反対している」「私立学校の学費負担で揉めている」「子どもの希望する進路について意見が一致しない」といったお悩みをお持ちの場合は、ご自身だけで判断せず、離婚や親権問題に精通した弁護士にご相談ください。

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