2026年改正民法の施行と「子どもの氏」に関する基本原則
2026年に施行される改正民法によって、離婚後も父母双方が親権を持つことができる「共同親権」制度が導入されます。これに伴い、離婚に伴う家族のあり方や、子どもの養育に関する法制度には大きな変化が生じています。
一方で、親権の持ち方がどう変わろうとも、日本の現行法制度において「子どもが名乗る名字(氏)」と「戸籍」の仕組みには独自のルールが存在します。離婚によって父母が別々の戸籍や名字になったとき、子どもは自動的に親の名字へ追従するわけではありません。
この章では、共同親権制度の下における子どもの名字変更の基本的な枠組みと、法律上の考え方を紐解きます。
離婚後も原則として子どもは「元の戸籍」に残る
夫婦が離婚し、母親が婚姻前の名字(旧姓)に戻ったとします。このとき、母親が自分の戸籍(または新しい戸籍)に子どもを自動的に移動させられるわけではありません。
離婚届を提出した時点では、子どもは原則として婚姻中の夫婦が記載されていた元の戸籍(父親の戸籍など)に残ったままになります。
子どもを監護親(実際に育てている親)と同じ戸籍に入籍させたい場合、親権が「単独」であるか「共同」であるかにかかわらず、法律上の特別な手続きを踏む必要があります。
共同親権と「氏の変更」の法的な切り分け
共同親権の導入により、離婚後も子の進学、医療、居住地などの重大な事項については、原則として父母が共同で決定(協議)することとされています。
しかし、子どもの名字(氏)を変更する手続きは、民法791条の規定に基づき、家庭裁判所の許可を要する法的な手続きです。
親権が共同であっても、子どもの名字を一方の親の氏に変更するには、家庭裁判所への申し立てが必要不可欠となります。共同親権者である元配偶者の同意の有無や、話し合いのプロセスが実務上非常に重要なポイントになってきます。
家庭裁判所への「子の氏の変更許可申し立て」の手続き
子どもが父親(または母親)の名字から、もう一方の親の名字に変更するためには、住所地を管轄する家庭裁判所へ「子の氏の変更許可申し立て」を行う必要があります。
ここでは、具体的な申し立ての流れや、必要となる書類、裁判所が判断する基準について詳しく解説します。
申し立ての主体と必要書類
子の氏の変更許可の申し立てができるのは、原則として15歳未満の子の場合は親権者または監護者であり、15歳以上の本人の場合は子ども自身となります。
実務上、母親が監護親として子どもを自分の戸籍に入れたい場合、母親が申し立ての代理人(または請求者)となります。
申し立ての際には、主に以下の書類が求められます。
- 子の氏の変更許可申し立て書
- 子の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 父および母の戸籍謄本(全部事項証明書)
- その他、裁判所が必要と認める資料(事案によって異なる場合があります)
家庭裁判所における審理と判断基準
家庭裁判所は、子どもの福祉(利益)の観点から、氏を変更することの必要性や相当性を審査します。
特に共同親権の下では、名字の変更が子どもの生活や心理面に与える影響、父母間の対立状況などが総合的に考慮されます。
実務上、すでに別居期間が長く、子どもが監護親の名字で長年生活している場合や、学校生活上の不都合が客観的に認められる場合は、比較的スムーズに許可が下りる傾向にあります。
しかし、非監護親(もう一方の親)が子どもの名字変更に強く反対している場合、裁判所は双方の事情を慎重にヒアリングした上で判断を下すことになります。
共同親権における元配偶者との合意形成と注意点
共同親権が選択されているケースでは、離婚後も父母双方が子どもの養育に関与する責任と権利を有しています。そのため、子どもの名字を変更する際にも、元配偶者とのコミュニケーションが非常に重要となります。
非監護親の同意は必須か?
法律上、子の氏の変更許可申し立てを行うにあたり、必ずしも非監護親の「同意書」がなければ申し立てができないわけではありません。家庭裁判所は、非監護親の意見を聞く(照会する)ことがありますが、最終的な判断は「子の利益」を最優先に行われます。
したがって、非監護親が感情的な理由だけで反対している場合でも、客観的な必要性が認められれば裁判所が許可を出すケースは存在します。
しかし、共同親権の理念に照らし合わせれば、子どものアイデンティティや両親との関係性に深く関わる名字の変更について、事前にしっかりと話し合い、理解を得ておくことが、その後の無用なトラブルを防ぐ上で最も望ましい解決策といえます。
戸籍の移動(入籍届)までの全体的な流れ
家庭裁判所から「子の氏の変更許可審判書」が交付されただけでは、まだ戸籍の変更は完了していません。以下のステップを確実に踏む必要があります。
- 家庭裁判所へ「子の氏の変更許可申し立て」を行う
- 裁判所による審査・審判(許可)
- 裁判所から「氏の変更許可審判書謄本」を受け取る
- 市区町村役場へ「入籍届」を提出する
- 新しい戸籍に子どもが入り、名字が変更される
この一連の手続きには数週間から数ヶ月を要することもあるため、進学や転居のタイミングを考慮して計画的に進めることが大切です。
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