2026年の改正民法施行により、離婚後における「共同親権」の選択が可能となりました。これにより、離婚後も父母が協力して子どもの養育に責任を持つ形が整えられた一方で、進学先や習い事の選択、そしてそれに伴う莫大な教育費の負担を巡るトラブルが急増しています。
特に「私立学校への進学」や「中学受験のための高額な塾通い」は、子どもの将来を左右する重大な決定であると同時に、家計に大きな影響を与えます。本記事では、改正民法の枠組みを踏まえ、共同親権下における教育方針の合意形成と費用分担のルールについて、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が実務的な視点から解説します。
2026年改正民法における「共同親権」と教育に関する基本ルール
離婚後共同親権が導入された背景には、離婚後も両親が子どもの養育に関与し続けることが子の福祉にとって望ましいという理念があります。しかし、すべてにおいて父母の合意が必要になるわけではなく、法律上「日常の行為」と「重大な事項」に区別されます。
「日常の行為」と「重大な事項」の境界線
- 日常の行為(単独で行えるもの): 日常の食事、健康管理、学校の宿題の指導、短期間の旅行、一般的な習い事(月謝が比較的少額なもの)などは、同居している親(または監護者)が単独で決定できるとされています。
- 重大な事項(原則として双方の合意が必要なもの): 一方で、子どもの居住地の変更、医療行為の同意、そして「私立学校への進学」や「中学受験に向けた本格的な塾通い、高額な習い事」は、子どもの人格形成や将来に重大な影響を及ぼすため、原則として父母双方の合意が必要となります。
したがって、共同親権のもとでは、一方が勝手に私立中学校に出願手続きを進めたり、高額な教育ローンを組んで塾に入会させたりすることは法律上の問題に発展するリスクがあります。
私立校進学・塾・習い事における「同意」をめぐる実務上の問題
子どもの進学や習い事をめぐり、父母間で意見が対立することは少なくありません。「子どもに良い教育を受けさせたい」と願う気持ちは同じであっても、経済的な負担能力や教育方針の違いから、協議が難航するケースが多々見られます。
意見が対立した場合の解決手順
父母間で私立進学や塾通いについての合意が得られない場合、直ちに一方が独断で決定することは避けるべきです。法律上は以下のステップで解決を図ります。
- 話合い(協議)の継続: まずは冷静に、子どもの適性や将来の希望を共有し、第三者(弁護士や教育カウンセラーなど)を交えて話し合います。
- 家庭裁判所への調停・審判の申し立て: 話合いが平行線をたどる場合、家庭裁判所に対して「子の監護に関する処分についての調停(または審判)」を申し立てます。家庭裁判所は、子どもの年齢、これまでの成育環境、父母の経済状況、子自身の意思などを総合的に考慮し、どちらの進学・教育方針が「子の利益」にかなうかを判断します。
ここで重要なのは、裁判所は単に「親の希望」ではなく、あくまで「子どもの利益(子の福祉)」を最優先に判断するという点です。例えば、子ども自身が強く私立進学を希望しており、学力も十分に達しているにもかかわらず、一方の親が不合理な理由で反対している場合などは、裁判所が共同親権者の一方の意思を補完するような判断を下すこともあります。
教育費・学費の分担ルール:養育費との違い
教育方針の合意と並んで重要なのが、実際に発生する費用の分担です。多くの方が誤解しがちですが、毎月定額で支払われる通常の「養育費」には、公立学校に通うことを前提とした標準的な教育費(給食費や学用品代など)しか含まれていないのが一般的です。
私立学校の学費や塾・習い事費用は請求できるか
- 原則的な考え方: 私立学校の授業料、入学金、施設費、および中学受験のための高額な進学塾の費用は、通常の養育費の算定表の枠内には通常含まれません。
- 事前の合意の有無が決定打となる: したがって、これらの費用を負担してもらうためには、進学や入塾の「前」に、費用をどのように分担するのかについて書面で明確に取り決めておくことが不可欠です。「進学には賛成したが、学費は全額払ってくれると思っていた」「聞いていた以上に塾代が高額になった」というトラブルを防ぐため、詳細な覚書や合意書を作成する必要があります。
夕陽ヶ丘法律事務所では、離婚協議書や親権者間の取り決めにおいて、将来発生し得る私立進学費用、大学進学費用、留学費用、特殊な医療費や習い事の費用について、あらかじめ具体的な負担割合や支払時期を明記した条項を作成するサポートを行っております。
2026年改正民法下でトラブルを防ぐためのポイント
新しい共同親権制度の下で、子どもの教育に関する紛争を未然に防ぎ、円滑な子育てを実現するためには、以下のポイントを意識することが重要です。
1. 離婚時の「子の監護に関する取り決め」を具体的にする
離婚時に共同親権を選択する場合は、単に「共同親権とする」と定めるだけでなく、教育方針や費用負担に関するガイドラインをあらかじめ協議しておくことが理想です。どの程度の習い事までなら単独で決定してよいか、将来私立を受験する場合の費用分担はどうするかなどを明確にしておきます。
2. 書面化(公正証書の活用)
口約束では、将来状況が変わった際に「そんな約束はしていない」と言い逃れをされる原因になります。合意内容は必ず書面に残し、可能であれば強制執行認諾文言付公正証書にしておくことで、万が一の未払い時にも法的効力を確保できます。
3. 弁護士への早期相談
「元配偶者が子どもの塾通いに反対している」「私立学校の学費を分担してくれない」「共同親権における自分の権利と義務の範囲が知りたい」といったお悩みがある場合は、トラブルが深刻化する前に、離婚・親子法務に精通した弁護士にご相談ください。夕陽ヶ丘法律事務所では、プライバシーに配慮した落ち着いた相談ブースにて、ご相談者様のお話をじっくり伺い、子どもの利益を最優先にした最適な解決策をご提案いたします。
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